◆ 規律や秩序の保持の観点から問題あるものは排除して当然!?
「君が代」不起立解雇撤回訴訟原告団(山田肇・菅平和・野村尚

 3月28日の大阪高裁判決は、控訴審での稲葉裁判長の強圧的な訴訟指揮に相応しい、決めつけと開き直りによる不当極まりないもので、その悪質さは地裁内藤判決をはるかに凌駕するものでした。

 第1に、個々の事実関係は、一審の間違いや歪曲を修正するも、事実判断では全く無視。各個人の事実による判断ではなく、控訴人ら(私たち3人のこと)は、「自らの主義主張を優先することに重きを置き、上司の指導、命令等に従う姿勢に乏しく、法令等および上司の職務命令を遵守することが期待できず、学校の規律や秩序の保持の観点から問題がある」という評価をすべての判断基準としていること。


 第2に、起立斉唱の実施、大阪府国旗国歌条例・職員基本条例について「起立斉唱は、教職員にその遵守が求められている上、(中略)、他の非違行為とは異なり、その反復、継続が予想されうるものであり、(中略)、非違行為としては軽視できない」として、起立斉唱の職務命令は、「特別な職務命令」と位置付けています。

 また起立斉唱の「慣習的儀礼的所作」については、大阪府では、起立斉唱の実施率が低かったことが認められるが、「全国の公立学校における卒業式等の学校行事において、国歌としての君が代斉唱は広く行われており、慣例上の儀礼的所作が都道府県をまたげば各別というべき理由はな」いとしています。
 職員基本条例は、分限処分を行う際の標準的な処分量定を定めたものにすぎないので違法ではないし、控訴人はそれに該当していない。また「国旗国歌条例が、『我が国と郷土を愛する意識の高揚』をも目的とし」ていることは、教育基本法に矛盾抵触するものではないので違法性はないとしています。

 第3に、再任用合格取り消しについて、起立斉唱は、「毎年複数回行われるから、かかる職務命令違反は、他の非違行為とは異なり、その反復、継続が予想され得るものであり、非違行為として軽視することはできない」し、しかも「今後職務命令に違反するおそれがあるかどうかは、本人の意向次第であ」るので、「府教委として、勤務成績を判断する上でこれを重視せざるを得ない性質のもの」であり、95%以上の再任用採用選考合格率が95%以上なので、「勤務成績のうちの良好な部分よりも問題のある部分に重きを置く判断」をしても、「採用における裁量権の範囲内」である。

 また体罰飲酒運転で停職処分など戒告処分よりも重い処分歴の者等が採用されているが、「職員である時の非違行為に対する処分の軽重と、採用にあたっての過去の非違行為に対する評価とはそれぞれの目的に応じた異なる基準となることは何ら不当なことではない」ので、平等原則違反に当たらない。

 第4に、意向確認は、「府教委が確認したい事項が端的に表現」されているもので、何ら違法はない。
 「今後、入学式や卒業式等における国歌斉唱時の起立斉唱を含む」との記載は、府教委として確認したい具体的遵守事項が端的に記載されているものであり、これが他の戒告処分等と比べて、恣意的な扱いであるとか、平等を害するものとはいえない。」

 第5に、期待権については、一般的には認めるが…。再任用の期待権は、一般的に存在するが、控訴人らに対する府教委の裁量権の逸脱濫用はないので該当しない
 以上が、稲葉判決の主要な内容です。

 この判決は、第1の不起立する教員は、「学校の規律や秩序の保持の観点から問題がある」から、勤務成績が良好でないと判断し、排除しても当然で、他の処分者と同一に扱う必要がないとしています。
 また平等原則や比例原則違反を免れるため、再任用選考で、不起立理由による処分者は、体罰や飲酒運転などでの理由による処分者と別異に扱うことを容認し、意向確認についても府教委が一番聞きたいことを具体的に聞いただけと、開き直った差別判決といえるものです。

 私たちは、このような判決を到底容認できませんし、上告して更に闘いを継続していく所存です。
 今後とも、みなさんのご支援をお願いいたします。
2018年3月29日「君が代」不起立解雇撤回訴訟原告団(山田肇、菅平和、野村尚)

(「君が代」不起立解雇撤回訴訟 続)