◆ "君が代"4次訴訟、東京高裁が都教委を断罪する判決
   ~4・5回目不起立の減給処分を取り消す
 (週刊新社会)
永野厚男・教育ジャーナリスト

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東京高裁前で報告(右から2人目が田中さん。左端が澤藤統一郎弁護士)撮影は筆者

 「都教委を断罪」。4月18日、大きな旗が東京高裁正門前に翻った。
 東京都教育委員会は卒業式等の"君が代"強制を強化する2003年の10・23通達発出後、不起立等の教職員に対し「1回目戒告、2・3回目減給、4回目以降停職」累積加重処分を強行。
 教職員の提訴した不当処分取消訴訟で、最高裁が12年1月、「減給以上は原則違法」と、教職員一部勝訴判決を出して以降、都教委「4回目以降は減給」という勝手な仕切りを設定。13年春時点で4・5回目の不起立の都立特別支援学校・田中聡史教諭に対し、「1か月間減給10分の1」の処分を2回、強行した。


 田中さんを含む14人が提訴した処分取消第4次訴訟で、東京地裁は17年9月15日、「社会通念上著しく妥当を欠き、懲戒権の範囲を逸脱・濫用。違法である」とし、田中さんを含む6人・7件の、減給・停職処分を取消すよう都側に命じる判決を出していた。
 都教委は高裁で、11年7月の北九州ココロ裁判最高裁判決、15年12月の"君が代"裁判大阪地裁判決を持ち出してきたが、杉原則彦裁判長は「事案を異にする」と一蹴し、地裁の判示を維持する判決を出した。
 しかし、教職員側の「君が代起立強制が思想・良心の自由を侵害する」という主張については、地裁の反動判決を踏襲。「間接的な制約となる面はある」としつつ「憲法19条に違反するとはいえない」と判じ、賠償請求も棄却した。

 司法記者クラブの会見で、田中さんは「起立の職務命令に従えないという私の信念は何回目の時も同じで、処分は過酷だが、累積加重処分取消の意義は大きい」と述べた。
 都立高校・大能清子教諭は、「04年3月の卒業式で、宗教上の理由等ある生徒が担任に『一緒に座って』とすがっている場面を見た。その担任は『生徒の不起立の自由』は伝えたものの、自らは起立したので、"君が代"時、始めは座っていた生徒もだんだんと立ち、最後は全員起立してしまった」という実話を紹介。「教員の起立は、立ちたくない生徒への圧力になる」と語った。

 ◆ 多忙化解消に逆行の"君が代"調査
 都教委が17年11月9日の定例会で公表した、公立小中高・特別支援学校教職員の「勤務実態調査集計」は、教諭(主幹教諭・指導教諭・主任教諭を含む)の平日の在校時間が小中とも約11時間30分、副校長は全校種12時間超と明記。
 教諭の平日業務で、「国・教委からの調査・統計への回答+校長・教委等への報告書作成等」の合計時間は「小学校22分、中学23分、高校23分、特支校30分」に上る。
 副校長の平日の「都教委・地教委からの問合せ対応+対外用の各種調査への回答、報告書作成業務」の合計も、最小の小学校で「1時間23分」、最大の高校は「1時間50分」に上るなど、膨大だ(土日も約30分あり)。
 文科省卒業式等の"君が代"実施調査を数年前やめたが、都教委都立学校(小中は管轄地教委)に対し、生徒の不起立まで詳細に報告させている
 児童生徒のためでない、政治色・国家主義イデオロギーの濃い調査等の撤廃を求めていく必要がある。

『週刊新社会』2018年5月1日号