自然・歴史・文化・暮らしの破壊が危惧される 「哲学堂公園再生整備基本計画(案)」および 「哲学堂公園再生整備基本設計(案)」の見直しを求めます

●哲学堂公園は、こんな公園です
 哲学堂公園は東洋大学を創設した哲学者、井上円了が哲学思想普及のために設けたもので、園内を散策しながら哲学を体験できる場となるよう工夫されたユニークな公園です。随所に哲学にちなんだ建物や石造物などがあります。のちに東京都へ寄贈され、そののち中野区の管轄になり、平成21年から都の名勝に指定されています。園内には雑木林と庭園、池があり、南側を妙正寺川が流れます。創設者の遺族から東京都に寄贈される際、覚書に設置を明記された児童遊園があり、さらに野球場、テニスコートなどの運動施設もあります。
 
●貴重で豊かな自然があります
 公園や緑地が少ない中野区では、とても貴重な自然環境が残された場所です。ヒマラヤスギ、クスノキ、コナラ、エノキ、イイギリなどの見事な大木があり、美しい雑木林があります。カイノキのように哲学にまつわる珍しい樹木も植えられています。これまでに50種以上の野鳥が確認され、一年中見られるシジュウカラ、メジロ、コゲラ、エナガ、カワセミなどの留鳥のほか、キビタキなどの夏鳥が渡りの途中で羽を休め、ジョウビタキなどの冬鳥が冬越しします。またタカ類の一種で絶滅危惧種のツミの繁殖が過去に3シーズン記録されています。キノコの種類も多く、野生ランの一種で絶滅危惧種であるキンランも観察されていることも、貴重な生態系がかろうじて残されていることを示しています。東京都区部で絶滅危惧種のシュレーゲルアオガエルの産卵も観察されており、詳しい調査が必要です。
 
●中野区の計画による、公園内の樹木の「整理」「伐採」
昨年10月に中野区が発表した「哲学堂公園再生整備基本計画(案)」は公園を「都市観光の拠点」とするというものですが、
自然環境の維持という点で多くの問題があると考えられます。その後に発表された「哲学堂公園再生整備基本設計(案)」によると
「常緑樹の整理」
「見通しをさえぎる樹木は整理」
「園路に影響を与える樹木は伐採」
「景観の回復のため樹木を除去」
「明るさ確保のため樹木整理」
など、さまざまな理由で樹木を「整理」「伐採」「除去」すると書かれており、自然環境の大規模な破壊が懸念されます。
(中野区内では現在「平和の森公園」で「オリンピックに向けた整備」のため高木・中低木あわせて1万7000本以上という樹木の大量伐採が進行中で、公園の価値を低下させるものとして住民による訴訟も行われています)
 
●樹木が失われることで懸念されること
・植物、鳥類などをはじめ、絶滅危惧種をふくむ貴重な生態系が失われること
・夏の暑さ、冬の寒さ、道路からの騒音などにさらされること
・長年維持されてきた、静かで哲学的な環境が破壊されること
・常緑樹が失われることで、防災公園としての機能が低下すること
・樹木の根が死ぬことで、傾斜地での地盤の安定が失われること
・自然が破壊されれば100年を超える公園の歴史も失われること
 
●その他にも多くの問題点があります
・中野区が区議会での説明とは異なり、東洋大学の正式な了解なく計画を進めてきたこと
・東京都名勝に平成21年に指定されており、その状態をみだりに改変すべきでないこと
・創設者の遺族と東京都の覚書に明記された500坪の児童遊園は、子供たちをはじめ近隣住民の憩いの場となっているが、この計画により「学習展示施設」が建設されれば、その面積はほぼ半分となり、7本のヒマラヤスギ、2本のケヤキをはじめとする児童遊園および周囲の樹木も大量に失われ、価値が大幅に低下すること
・計画によれば、工事は2018年7月に開始され、2019年度末に完了とされているが、住民に対してその内容が十分に周知されているとは言えないこと
・住民から「児童遊園および周辺樹木の現況の確保」を求める要望書・陳情書なども提出されているが、中野区は住民との十分な合意形成のないまま計画を進めており、区と住民が一体となってみどりの育成と保護を行うべきとする中野区の「みどりの育成と保護に関する条例」に反している可能性が大きいこと
 
★以上ような、さまざまな問題点を抱えた計画の見直しを求めます
「哲学堂公園再生整備基本計画(案)」と「哲学堂公園再生整備基本設計(案)」を今のまま性急に進めるべきではありません。計画をいったん止め、住民をはじめ幅広い意見をふまえて、自然・歴史・文化・暮らしに十分配慮した計画に修正するよう、計画の見直しを求めます。