蔵王山で火山性微動と地殻変動 噴火警戒レベル2に
1月30日 NHK19時04分

宮城県と山形県にまたがる蔵王山で、28日から30日にかけて火山性微動が相次いで観測されたほか、山頂の南側が隆起する地殻変動も観測されました。気象庁は今後、小規模な噴火が起きるおそれがあるとして、30日午後、火口周辺警報を発表し、噴火警戒レベルを1から2に引き上げ、馬の背カルデラの想定火口域からおおむね1.2キロの範囲では、噴火に伴う大きな噴石に警戒するよう呼びかけています。

気象庁の観測によりますと、蔵王山では地下の熱水や火山ガスの動きを示すと考えられる火山性微動が28日1回観測されたほか、30日も、未明と午後2時すぎの合わせて2回観測されました。このうち午後に発生した微動はおよそ13分間続き、振幅は8年前の平成22年に観測を始めてから最も大きいということです。

火山性地震も28日から30日午後4時までに4回観測され、地震と微動は、いずれも蔵王山にある火口湖の「御釜」付近の地下で起きたと見られるということです。

また、御釜の南西およそ5キロにある坊平観測点では山頂の南側が隆起する地殻変動が継続して観測されています。

雲がかかっているため、監視カメラから御釜周辺の噴気の状況などは確認できていません。

気象庁は、蔵王山では今後、小規模な噴火が発生するおそれがあるとして、午後2時半すぎに火口周辺警報を発表し噴火警戒レベルを1から2の「火口周辺規制」に引き上げました。

御釜の周辺にある馬の背カルデラの想定火口域からおおむね1.2キロの範囲では、噴火に伴う大きな噴石に警戒するよう呼びかけていて、地元の自治体はこの範囲の立ち入りを規制しています。

周辺の3町 立ち入り規制呼びかけ
蔵王山の噴火警戒レベルが2に引き上げられたことを受け、周辺の宮城県の3つの町は、住民などに、想定火口域からおおむね1.2キロの範囲に立ち入らないよう呼びかけています。

宮城県の蔵王町と川崎町、それに七ヶ宿町は、町の一部が、想定火口域からおおむね1.2キロの範囲内にあります。それぞれの町は、気象庁が火口周辺警報を発表したあと、住民などの携帯電話やスマートフォンに緊急速報メールを送りました。メールの中で、馬の背カルデラの想定火口域からおおむね1.2キロの範囲に立ち入らないよう呼びかけています。

専門家「噴火による泥流にも注意」

火山噴火予知連絡会の会長で、京都大学の石原和弘名誉教授は「蔵王山はこの数年、火山性地震が増加するなど火山活動が高まっていた。今回は火山性微動の振幅が、観測された中で最大だということなので、今後、さらに地震などが増加すると、いつ噴火が発生してもおかしくない」と分析しています。
そのうえで「大きな噴石に警戒し、自治体が規制した範囲には絶対に近づかないでほしい。また、仮に、火口湖の『御釜(おかま)』で噴火すると、たまった水によって『泥流』が発生し、流れ下るおそれもある。川沿いを中心に泥流にも注意してほしい」と話していました。
平成25年以降 火山活動が活発化の傾向
蔵王山は宮城県と山形県にまたがる複数の山からなる活火山で、最も高い熊野岳は標高が1841メートルあります。

蔵王山では平成25年以降、火山性地震の増加や地下のマグマや火山ガスなどの動きを示すとされる火山性微動が観測されるなど、火山活動が活発化する傾向が見られていました。
山がわずかに膨張する地殻変動も観測され、気象庁は平成27年4月に火口周辺警報を発表しましたが、その後、火山性地震が減ったことなどからおよそ2か月後に解除しました。

一方で気象庁は、蔵王山では長期的に火山活動がやや高まった状態にあるとして、「御釜」周辺の馬の背カルデラの想定火口域では突発的な火山ガスの噴出などに注意を呼びかけていました。

過去の噴火
蔵王山の北側には火口湖の御釜があり、120年以上前の明治28年には、御釜で小規模な水蒸気噴火が相次ぎ、山の雪がとけて川が増水したほかふもとに火山灰が降りました。

その後、80年近く前の昭和15年に御釜の北東で小規模な噴火が確認されたあと、噴火は確認されていません。

御釜には常に水がたまっているほか、冬になると雪に覆われるため、噴火に伴って泥流が発生するおそれがあり、ふもとの地域では注意が必要です。

周辺の道路は冬季閉鎖中
馬の背カルデラの想定火口域からおおむね1.2キロの範囲では宮城県と山形県をつなぐ「蔵王エコーライン」が通っていますが、宮城県によりますと現在は冬期閉鎖中だということです。
樹氷ツアーのコースを変更
蔵王山の噴火警戒レベルが2に引き上げられたことを受けて、火口からおよそ4キロ離れた宮城県蔵王町のスキー場「すみかわスノーパーク」では、観光客向けに行っている樹氷を見るツアーのコースを変更する措置をとりました。

樹氷ツアーは通常、雪上車でスキー場のゲレンデから、山頂のほうに向かいますが、噴火警戒レベルが引き上げられたことを受けて、山の中腹辺りで折り返すことにしたということです。

一方、スキー場自体は、火口から離れていることから、通常どおりの営業を続けているということです。

野上官房副長官「大きな噴石に注意を」
野上官房副長官は午後の記者会見で、「今後、小規模な噴火が発生する可能性があることから、想定火口域から1.2キロメートルの範囲では、弾道を描いて飛散する大きな噴石に注意していただきたい。政府としては情報収集体制を強化し、状況を注視するとともに、政府一体となって対応に万全を期していく。国民の皆様には今後、地元自治体や気象庁などから発表される情報に注意していただきたい」と述べました。
スキー場に注意看板
蔵王山の噴火警戒レベルが2に引き上げられたことを受けて、地元の山形市内にある「蔵王温泉スキー場」には火口周辺に立ち入らないよう呼びかける看板が設置されました。

噴火警戒レベルの引き上げを受けて、山形市の防災対策課の担当者が火口周辺に立ち入らないことや異変を感じたらすぐに避難することなどが書かれた看板を車に積み込み、市内にある蔵王温泉スキー場に向かいました。そして、ふもとと山頂付近を結ぶロープウエーの運営会社の事務所を訪れ、ロープウエーの乗り場などに看板を設置するよう要請していました。

市によりますと、看板はロープウエーやリフト乗り場など合わせて16か所に設置されるということです。

山形市防災対策課の布施英二係長は「突然の発表でしたが、立ち入り禁止の区域に人が入らないよう看板の設置を急いで進めたい」と話していました。

兵庫県から訪れていたスキー客は、「群馬での噴火もあったのでびっくりしました。最新の情報に気をつけて何かあったらすぐ避難しようと思います」と話していました。
遠刈田温泉 冷静に対応の声
蔵王山の噴火警戒レベルが引き上げられたことについて、宮城県蔵王町の遠刈田温泉では冷静に対応したいという声が聞かれました。

仙台市から観光で訪れた30代の男性は「噴火レベルが上がって危ないとは思いますが、冷静に情報を確認して注意しながら楽しむしかないですね」と話していました。

また、遠刈田温泉に住む60代の男性は「前にも大変な思いをしたが自然現象なのでしかたありません。町を訪れた土地勘のない観光客にも情報共有しながらみんなで身を守っていきたい」と話していました。