京大iPS細胞研究所で論文のねつ造や改ざん

NHKNEWS1月22日 17時45分

京都大学はiPS細胞研究所に所属する助教が中心となって去年発表した論文の11の図にねつ造などの不正があったと発表しました。大学は、不正はこの助教が行ったと認定し、論文が掲載された雑誌に撤回を申請するとともに、近く関係者を処分することにしています。

京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥所長らは記者会見を開き、所属する山水康平助教が中心となって、去年2月に発表した論文に不正があったと発表しました。

論文は、ヒトのiPS細胞から脳の血管にある「血液脳関門」という組織を作ることに成功したという内容で、主要な6つの図のすべてと補足データの5つの図の合わせて11の図にねつ造や改ざんが認められたということです。

改ざんやねつ造は、論文の結論に合わせて操作されていて、大学ではデータの解析や図の作成を行った山水助教が不正をしたと認定しました。

助教は「私がやりました。論文の見栄えをよくしたかった」と話しているということです。

京都大学は、去年7月、論文のデータに疑問があるという情報が寄せられたことから、外部の有識者を含む委員会を設置して調査を進めてきたということで、論文が掲載された雑誌に撤回を申請するとともに、近く関係者を処分することにしています。

山中伸弥所長は会見の中で「このような不正を防ぐことができなかったことを非常に反省している。日頃から応援してくれている皆さんに心よりおわび申し上げます。2度と同じようなことが起きないようこれまで以上に取り組んでいきたい」と謝罪しました。

専門家「社会が納得する詳細な調査を」
研究不正に詳しい大阪大学の中村征樹准教授は「調査では論文のデータの大部分にねつ造や改ざんが指摘されており、これまでiPS細胞研究所はデータの管理に厳しいという印象をもっていただけに驚いている」としたうえで、「iPS細胞の研究は、日本社会の期待が大きい分野だけに、信頼に応えるためにも不正がなぜ起きたのか、ほかにも不正はないのか、社会が納得するだけの詳細な調査を行う必要がある」と指摘しています。


京大iPS研助教の論文で捏造・改ざん 調査結果を発表 
1/22(月) 16:54配信 朝日新聞デジタル

 京都大iPS細胞研究所(山中伸弥所長)の特定拠点助教が発表した論文の図に、捏造(ねつぞう)や改ざんの研究不正があることが分かった。京都大は山中所長や副学長が22日会見し、調査結果を発表した。

 京大によると、不正があった論文は、同研究所所属の助教が筆頭著者で2017年2月、米科学誌ステム・セル・リポーツに発表した。論文では、iPS細胞から「血液脳関門」と同様の特徴を持つ脳の血管内皮細胞をつくったとしていた。血液脳関門は脳を守るために、脳に入る血液中の物質を制限する働きがある。

 その後、論文の信頼性について疑義があるとの情報が同研究所に寄せられ、実験の測定値のデータから論文の一部のグラフの再構成を試みたが再現できなかった。このため、京大が予備調査を経て、本格的な調査を進めていた。