<「首都」撤回決議採択>米トランプ政権の恫喝、世界を分断

エルサレム「首都」撤回要求決議への立場

12/22(金)毎日新聞

 【ニューヨーク國枝すみれ】国連総会(加盟193カ国)は21日の緊急特別会合で、「エルサレムはイスラエルの首都」というトランプ米政権による認定の撤回を求める決議案を日本を含む128カ国の賛成多数で採択した。反対は米国やイスラエルなど9カ国にとどまったが、棄権が35カ国、欠席も21カ国に上った。事前に、賛成すれば経済支援を打ち切ると示唆していたトランプ政権の「恫愒(どうかつ)外交」が国際社会の分断を招いたともいえ、大きな禍根を残すのは必至だ。

【写真特集】エルサレムの街並みやキリスト教徒の聖地

 「国連や米国を尊重しない国に対する米国の見る目が変わる」。ヘイリー米国連大使は21日の採決に先立つ演説で改めてけん制し、決議案に賛成しないよう求めた。結果を見越していたのか、ヘイリー氏は会合の途中で退席。一方、採択後にはツイッターで、賛成しなかった60カ国以上の国名を列挙し「無責任な行動を取らなかった国に感謝する」と投稿した。米メディアによると、ヘイリー氏は来月3日、これらの国々を招いて「米国への友情に感謝する」レセプション(宴会)を開催するという。

 エジプトやサウジアラビア、ヨルダンなど親米アラブ諸国や同盟国も賛成に回った。トルコのエルドアン大統領は「トルコの民主的で自由な意思はカネでは買えない」と米国を非難。デラトル仏国連大使も「エルサレムの立場を規定する国際法を確認するものだ」と決議の正当性を強調した。

 「米国の味方か敵か」で区別するようなトランプ政権の対応について、AP通信は、ベテラン国連外交官たちにイラク戦争(2003年開戦)に突き進んだブッシュ米政権を想起させていると報じた。01年米同時多発テロ後、ブッシュ政権は世界に「米国の側かテロリストの側か」と踏み絵を突きつけ、単独行動主義の傾向を強めた。国際社会の反対を振り切り、大量破壊兵器を保有しているとして、イラクに対する先制攻撃に踏み切った。

 ただ、実際に米国が経済支援の打ち切りを行うかは見通せない。米国際開発庁(USAID)によると16~17年、114カ国に非軍事支援だけで計190億ドル(約2兆1500億円)を拠出。テロ対策で連携し、イスラエルとも国交があるエジプトには約180億円を支援しているが、これを打ち切り、エジプトが不安定化するような事態は避ける必要があるためだ。

 一方、「米国第一主義」を掲げるトランプ氏は20日に支援打ち切りを示唆した際に「米国が他国に利用されるのはうんざりだ」と発言しており、今回の決議を支援打ち切りの口実とする可能性も排除できない。