冤罪訴え、失った20~30代 西山さん再審決定に涙 

12/20(水) 23:18配信 京都新聞


再審開始が決定し、記者会見で笑顔を見せる西山さん(20日午後5時22分、大津市・滋賀県教育会館)
 重い司法の扉が、ようやく開いた。滋賀県東近江市の湖東記念病院で男性患者を死亡させたとして殺人罪に問われ服役した西山美香さん(37)の再審請求審。大阪高裁は20日、裁判のやり直しを認めた。冤罪(えんざい)を訴え続けてきた西山さんは支援者たちと喜びをかみしめつつ、無罪を勝ち取る強い決意をにじませた。

 「原決定を取り消す。再審を開始する」。高裁で手渡された決定の主文に、西山さんは泣き崩れ、廊下にうずくまった。「再審開始決定が出ると思っていなかったので、びっくりした。裁判官に分かってもらえたのがうれしくて」

 主任弁護士の井戸謙一さん(63)や両親とともに大津市内で記者会見し、「一生懸命育ててくれた両親や支援者に感謝している。もうすぐ誕生日なので、最高のプレゼントになった」と笑顔を浮かべた。

 最初の再審請求は7年前、刑務所の中からだった。「再審請求をしたら刑務官の心証が悪くなって処遇が変わった」と振り返る。精神的に不安定になって荒れ、懲罰を受けることもあったという。

 そんな西山さんを変えたのが支援者の存在だ。2度目の再審請求の際、中学時代の恩師伊藤正一さん(69)らが中心となって支える会を立ち上げた。「西山さんは人懐っこく明るい生徒だった。他人に危害を加えるような子ではない」。伊藤さんらは再審開始を求める署名活動に奔走し、1万筆超を集めた。

 「弁護士以外にも信じて励ましてくれる人がいることを知り、自分が変わった」。西山さんは前向きに過ごすようになる。冤罪被害者の救済に取り組む日本国民救援会の支援をきっかけに、同じ刑務所に服役していた東住吉事件の青木恵子さん(53)とも知り合った。「一緒に頑張ろうな」と声を掛けてくれた青木さんが勝ち取った再審無罪も大きな励みになった。この日も高裁に駆け付けた青木さんは「一日も早く穏やかな生活を」と気遣った。

 20~30代の貴重な時間の多くを失った。大好きだった祖母も服役中に他界した。「両親は、普通の女性のように私が20代で恋をして結婚をして、子どもを産んでほしかっただろうし、孫の顔も見たかったと思う。それができなかった」。無念を晴らすためにも、「無罪判決をもらえるまで負けずに頑張りたい」と口元を引き締める。

 井戸弁護士は決定について「考え抜かれた立派な決定」と評した上で、「検察側は不服申し立てをせず、公判で正々堂々と対峙(たいじ)してほしい」と訴えた。