◆ 皆様に~立憲主義に基づく教育を大切にしていくため、都教委宛パブコメ第2弾の呼びかけ
   教育ジャーナリスト・永野厚男から


 東京都教育委員会(指導企画課・国際教育推進担当)は、11月9日の定例会で「東京オリンピック・パラリンピック競技大会が開催される2020年に向けて、グローバル人材育成の目標やその目標を達成するための手段を示すため」と称し、「東京グローバル人材育成計画'20(Tokyo Global STAGE '20)」策定の素案(以下、「素案」)を公表しました。
 そして都教委は11月9日、ホームページで、「12月11日までパブリックコメント(パブコメ)を募集する」、と言っています。
 都教委は「氏名や住所の記載は任意」、つまり匿名でも受け付けるとしているので、日本会議系、つまり育鵬社"教科書"採択運動の右翼らが大量のパブコメを寄せてくる危険性があります。


 立憲主義に基づく教育を大切にして下さる皆様、ご一緒にパブコメを寄せましょう。
 パブコメ募集要領と「素案」の全文は、都教委HPのトップページ→報道発表資料一覧→平成29年報道発表資料→11月9日のところをクリック――の順で見られます。
http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/press/2017/pr171109b.html
 ただ、私の周囲にも、「見るのに時間がかかるので面倒」という方がいらっしゃるので、まず後掲の「◇」印に、宛先を都教委HPからコピペした後、「1」~「3」の必須記入事項をお示しします。
 そして「3」の後の、最初と2つ目の「☆印」に、(やや長いですが)「パブコメの意見例」を3つご提示します。更に、その後の4つ目の「☆印」に、参考までに、この件での拙稿を情報提供します。

 ◇ 都教委指導企画課・国際教育推進担当の宛先
 電子メールの人は「global_ikusei@section.metro.tokyo.jp」に、
 FAXの人は(03)5388-1733に。
1 電子メールの人もFAXの人も、まず冒頭、件名を、「『東京グローバル人材育成計画 '20(Tokyo Global STAGE '20)』(素案)に対する意見」と明記して下さい。

2 次に、あなたについて、以下のいずれか、ご記入下さい(「以下のいずれか」は必須記入事項だが、氏名や住所の記載は任意なので、書いても書かなくても、どちらでもOK)。
ア 小学生  イ 中学生  ウ 高校生  エ 未就学児の保護者  オ 小学生の保護者 カ 中学生の保護者  キ 高校生の保護者  ク 学校関係者  ケ その他(個人・団体)

3 あなたの意見が、「東京グローバル人材育成計画 '20(Tokyo Global STAGE '20)」(素案)のどの部分に関するものかが分かるよう、関係する頁数を最初の方にご記入の上、意見をお書き下さい。(但し、「はじめに」は、都教委が頁数を書いていないので、頁数の代わりに「はじめに」と書く)→【はじめに】とか【  頁】と書く。
          ↓

 ☆ 1つ目の意見例

 都教委指導企画課・国際教育推進担当(グローバル人材育成)御中
global_ikusei@section.metro.tokyo.jp

 件名:『東京グローバル人材育成計画 '20(Tokyo Global STAGE '20)』(素案)に対する意見

 ○ 私について →「キ 高校生の保護者」です。

 ○ 意見対象箇所 → 【「はじめに」と6頁、7頁、9頁(体系図)、32頁】にある、政治色の濃い文言ついて

 以下、意見です。

 「東京グローバル人材育成計画 '20」の素案は、【「はじめに」と6頁、7頁、9頁(体系図)、32頁】の大きく5箇所にもわたり、何回も「日本人としての自覚と誇りの涵養」「日本人であることの自覚や、・・・国を愛し、誇りに思う心を育むことが重要である」「日本人としての自覚と誇りをもち」と、国家主義を押し付ける主張を満載しています。
 しかしこれらの文言に対し、嫌だと強く思ったり、反発を感じたりしている生徒も、多数在籍しています(もちろん保護者や現・元教職員、地域住民等の中にも)。
 具体的には、(1)在日外国籍の児童・生徒、(2)「神は1つである」という信仰を持つ児童・生徒、(3)憲法第19・20・21条の保障する「思想・良心・信教・表現の自由」を大切に考え、「国境なんていらないとか、自衛隊の軍拡(集団的自衛権行使)は米国の関わる戦争に日本が加担することになってしまうとか、「沖縄戦での降伏を自らの地位の保全のため遅らせてしまい、無辜なる民衆の犠牲者を増大させた天皇」には戦争責任がある」といった考え等の児童・生徒――たちの中には、都教委という権力機関が、「日本人としての自覚と誇り」「国を愛し、誇りに思う心」といった国家主義を教化(インドクトリネーション)してくるのに対し、心を傷付けられたり、虫唾(むしず)が走る思いをしたりする人が、私(たち)の周りにも少なからずいます。
 ですから都教委は、これら国家主義を押し付ける【「はじめに」と6頁、7頁、9頁(体系図)、32頁】の大きく5箇所にもわたる文言を、すべて削除すべきです。そして、「自分や他者の生命・人権を大切にする人間として」「国際社会に生きる人間として」「地球市民として」といった、グローバルというに相応しい表現に、必ず修正して下さい。

 ☆ 2つ目の意見例

 件名:『東京グローバル人材育成計画 '20(Tokyo Global STAGE '20)』(素案)に対する意見

 ○ 私について →「ク 学校関係者(私立大学准教授)」です。

 ○ 意見を述べる箇所 →【「はじめに」と6頁、7頁、9頁(体系図)、32頁】にある、国家主義色の濃い文言ついて

 「東京グローバル人材育成計画'20(Tokyo Global STAGE '20)」の素案は、【「はじめに」と6頁、7頁、9頁(体系図)、32頁】の計5箇所にもわたり、何度も「日本人としての自覚と誇りの涵養」「日本人であることの自覚や、・・・国を愛し、誇りに思う心を育むことが重要である」「日本人としての自覚と誇りをもち」という、国家主義を押し付ける主張を、これでもか、これでもかと執拗に押し付けてきます。
 しかし都教委は、2016年2月12日の定例会に出した、「『都立高校改革推進計画・新実施計画案』の骨子に対する意見募集の結果」と題する文書で、「都立学校には、日本国籍以外の生徒も多数在籍しているが、彼らは『グローバル人材の育成』の対象から外されているのだろうか。もし対象に含まれるのであれば、『日本人としての云々』という表現は、彼らへの配慮が足りない」という都民の意見を一応、紹介はしました。都教委はやましいところがあるのです。
 ところがこの時、都教委の官僚らは都民の意見を素直に受け入れず、一切修正しませんでした。
 都教委は、これら国家主義を押し付ける【「はじめに」と6頁、7頁、9頁(体系図)、32頁】の計5箇所にもわたる文言を、全部削除して下さい。
 そして、「自分の生命・人権も、他者の生命・人権も大切にすることができる人間として」「偏狭な国家主義に陥らず、世界の人々と仲良くなれる人間として」「国境のない地球市民として」というような、真にグローバルな表現に、是非修正して下さい。

 ☆ 3つ目の意見例

 件名:『東京グローバル人材育成計画 '20(Tokyo Global STAGE '20)』(素案)に対する意見

 ○ 私(たち)について →「ケ その他(団体)」です。

 ○ 意見を述べる箇所 →『素案』の【6頁】について~関連し、都庁記者クラブ配布資料についても

 『素案』の【6頁】は、「経済、学術、文化など、グローバル化・・・の流れは、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会・・・開催を契機に一層加速することは論を待たない」と明記。
 また東京都教育委員会は、本件「東京グローバル人材育成計画'20(Tokyo Global STAGE '20)」策定の素案(以下、『素案』)のパブコメ募集に関し、11月9日の報道発表資料(都庁記者クラブ記者に配布したA4判2枚の紙)で、「本計画は、東京オリンピック・パラリンピック競技大会が開催される2020年に向けて、グローバル人材育成の目標やその目標を達成するための手段を示すため」とも主張している。
 都教委が、グローバル人材育成をオリンピック・パラリンピック(以下、五輪)教育に結び付けたいのなら、『素案』の【6頁】と都庁記者クラブ配布資料との両方を、
――都教委作成の小中高校用『五輪学習読本』(16年4月から全校使用。映像教材等との合計決算で約1億7031万円)の、「表彰式では国旗・国歌を使う」という記述は、IOC(国際オリンピック委貝会)総会が1980年、国旗・国歌使用は五輪の理念に反するとし、「選手団の旗と歌(曲)を用いる」と改正した五輪憲章に違反しています。従って、グローバル人材育成に当たっては、『五輪学習読本』の誤った記述を「表彰式では国旗・国歌ではなく、選手団の旗と歌(曲)を用います」と改めなければいけません。――
と、修正・加筆するべきである。

 ☆ 以下、ご参考にして頂ければ幸いです。

 ◆ "日本人の自覚と誇り"と"愛国心"で、「グローバル人材育成」?
   ~傍聴者ら都教委宛パブコメを提起

教育ジャーナリスト・永野厚男

 東京都教育委員会は2017年11月9日の定例会で、「東京オリンピック・パラリンピック競技大会が開催される2020年に向けて、グローバル人材育成の目標やその目標を達成するための手段を示す」とし、『東京グローバル人材育成計画'20(Tokyo Global STAGE '20)』策定の素案を公表した。
 素案は、①使える英語力の育成、②豊かな国際感覚の醸成、③日本人としての自覚と誇りの涵養を、柱とする。

 素案は20年まで3年間、「ファーストステージ」の「育成すべき具体的な能力」に、③を明記
 そして「グローバル化が進む中……まず、子供たち自身が、日本や東京のよさを十分に理解する必要がある。そのためには……日本人であることの自覚や……国を愛し、誇りに思う心を育むことが重要」と謳(うた)う。
 素案の「体系図」は、本来は②がメインのはずの「『世界ともだちプロジェクト』による交流」等、6つもの事業で③を育成すると明示した。

 都教委は16年2月12日の定例会に出した、『都立高校改革推進計画・新実施計画案』の骨子に対する意見募集結果で、「都立学校には日本国籍以外の生徒も多数在籍。彼らは『グローバル人材の育成』の対象から外されているのか。もし含まれるのなら、『日本人云々』の表現は、彼らへの配慮が足りない」という趣旨の意見があったと報告。
 しかしこの時、都教委は「学習指導要領にもあるとおり、グローバル人材の育成に当たっては、我が国の生活様式や歴史、伝統文化などに関する認識を深め、これを尊重する態度を育成することも重要な要素の一つ」などと弁解し、「日本人云々」という表現を一切変更せず、『新実施計画』にそのまま明記してしまった。

 都教委は11月9日、ホームページでパブリックコメント募集を開始(締切は12月11日)。
 元教職員を含む傍聴者らは、「グローバルだからこそ国境をなくそうとか、天皇には戦争責任があると、主体的に考える児童・生徒も少なからずいる。憲法第19~21条の保障する、一人ひとりの思想・良心・信教・表現の自由を、教育行政の勝手な政策により侵害させないためにも、"日本人云々"や"愛国心"を削除するよう、皆でパブコメを寄せよう」と呼びかけている。

『週刊新社会』2017年12月5日号掲載記事に加筆したもの