NHK10月7日
ことしのノーベル平和賞に核兵器の廃絶を目指す活動を続けている国際NGO、ICAN=「核兵器廃絶キャンペーン」が選ばれたことを受けて、その功績をたたえる声が世界に広がっています。
ICAN=「核兵器廃絶国際キャンペーン」がノーベル平和賞に選ばれたことについて、核兵器禁止条約の交渉を主導した核兵器を持たない国々の関係者からは、祝福する声が相次いでいます。
このうち、オーストリアのクルツ外相はツイッターで、「ノーベル平和賞の受賞おめでとう。オーストリアはこれからも核兵器のない世界に向けて努力していく」と書き込んでいます。
また、おととし核兵器の法的禁止への努力を誓う文書を各国に送り、ICANとともに核兵器禁止条約の議論を主導したオーストリア外務省のクメント元軍縮軍備管理局長は「あなたたちとともに核兵器の禁止に向けて活動できたことはすばらしいことだった。ノーベル平和賞の受賞にふさわしい活動だ」として条約の採択に向けた努力をたたえています。
このほか、ともに議論を主導してきたメキシコのロモナコ軍縮大使も、「核兵器を禁止するための努力に対してノーベル平和賞を贈られたICANに温かい祝意を贈る」として、ともに活動してきたICANの功績をたたえました。
コスタリカ軍縮大使 核軍縮の気運の高まりに期待
ことし7月に核兵器禁止条約を採択した交渉会議で議長を務めた、コスタリカのホワイト軍縮大使は6日、スイスのジュネーブでNHKのインタビューに応じました。
このなかで、ホワイト軍縮大使は「原爆の投下から72年がたった今、核兵器禁止条約の採択を後押ししたICANの取り組みは国際社会にとって重要であり、その活動を選んだ、ノーベル平和賞の選考委員会を高く評価する」と述べました。
そのうえで、北朝鮮が核・ミサイル開発を強化するなど核の脅威が増している現状に触れ、「ICANの受賞は、核兵器禁止条約の理念をさらに多くの国に広める絶好の機会だ。受賞のニュースを見た関係者は『やればできる』と感じたはずだ」と述べ、今回の受賞によって核軍縮の機運が高まることに期待をにじませました。
さらに、「この賞は、広島、長崎の被爆者に捧げられるべき賞だ」と述べたうえで、「核兵器禁止条約は、21世紀の新たな安全保障の枠組みでありすべての国が尊重すべきだ」と述べ、核兵器禁止条約に反対している日本も含むすべての国が条約に賛成すべきだという考えを改めて強調しました。
国連 グテーレス事務総長は
国連のグテーレス事務総長は自身のツイッターで、「ICAN、ノーベル平和賞おめでとう。これまで以上に、われわれには核兵器のない世界が必要になる」と述べて受賞を歓迎するとともに、国際社会が一致して核兵器廃絶に取り組むべきだという考えを示しました。
国連軍縮トップ「重要な意味」
国連で軍縮問題を担当する中満泉事務次長は、6日午前、ニューヨークの国連本部で記者会見を開き、冒頭、英語で声明を読み上げ、北朝鮮による核兵器の脅威が高まり、核のない世界の実現が差し迫った課題となる中で、「ICAN」がノーベル平和賞を受賞したことは、大変重要な意味があると述べました。
そのうえで、「目標を定めて市民が集まり、世論を形成し、その結果、国の政策、国際社会の規範ができてきた歴史がある。今回の受賞は、いろいろな立場の人、日本やアメリカ、そして、世界の人々が核問題をどう考えていくのか、どう世論形成していくのか、政府を動かしていくのかを考える重要な契機になればいい」と述べ、核軍縮の機運が国際社会で高まることに期待を示しました。
さらに、核軍縮を巡り核保有国と非保有国の間で分断が起きている現状について「分断の構図を変えて共通の考え方をしたいと思っている国がたくさんある。そうした国と連携して、何をすれば分断の構図を埋めていけるか考えることが重要だ」と述べ、核保有国と非保有国の架け橋役を担うことに意欲を見せました。
また、核兵器禁止条約の採択に被爆者が果たした役割について、中満事務次長は、「体験に基づいたメッセージによって世界中の人が核兵器に対する立場を自分のものとしてとらえることができた。経験を共有することはつらいことだったと思うが、それを発信してくれたことに感謝し、これからもご尽力してもらいたい」と述べました。