2017年10月6日
放送局報道担当各位には、国会解散から続く慌ただしい動きの中で、日夜多忙な業務に従事されていることと拝察します。
ところで、今回の総選挙では、新政党の誕生、予想外の野党再編といった事態が進行し、有権者が判断に戸惑う状況も生まれています。こうした時こそマスメディアで働くジャーナリストの皆さんの役割は大きく、視聴者の期待は強いものがあります。
当放送を語る会は、視聴者団体として総選挙、参院選挙の度にテレビニュースのモニター活動を行い、毎回報告書を公表してきました。今回の総選挙でもモニターを開始しています。
こうした活動の経験を踏まえ、今回の選挙に関する報道に対し、期待をこめて次のように要請します。
安倍首相は、解散の理由として消費税の使途の変更、北朝鮮への対応などを挙げました。しかし、総選挙の争点は、これに止まらず、安保法制、憲法改定、原発再稼働、経済政策、社会保障など多岐にわたります。また、森友・加計問題の解明をそのままにして解散した安倍政権の姿勢を問うことも重要な争点です。
報道機関としてこれらの争点を独自に設定し、多角的な視点から論点を明らかにする報道を要請します。
この点で、私たちは、一部の報道機関に、自公政権と希望の党との「政権選択選挙」だとする報道があることに疑念を抱いています。両者の政策はきわめて類似しており、これが真の対立軸であるかどうか、独自の取材と調査によって検証することも求めたいと考えます。
BPOは「選挙に関して事実の報道とこれを論議し、批判する評論が自由であれば、その性質上、ある候補者に有利、もしくは不利に影響することはありうるし、そのような結果は避け難い」と述べ、「これらは選挙に関する報道と評論の自由が保障されている以上は当然に生ずる結果である」とまで言い切っています。
各報道機関には、この主張を参考に「挑戦的な選挙報道」を実現されるよう要請します。
3)これまでの選挙報道では、政党の主張や動きの紹介に議席の多い少ないで放送時間が配分される「機械的公平性」の抜きがたい傾向がありました。
少なくとも公示から投票日までの期間、政党の政策・主張を紹介するにあたっては、現在の議席数の多少にしたがって放送時間量を配分するのではなく、争点の報道の中で少数政党の主張にも十分な時間を配分する配慮を求めます。
4)上記のように選挙報道を充実させるためには、現在の番組編成の延長線上では実現が困難です。選挙関連番組を、長時間、数多く放送できるよう、編成の姿勢を抜本的に見直し、選挙報道の量と質を拡充することを求めます。これは当放送を語る会が繰り返し要求してきたことです。
解散から投票日まではそれほど長い日数ではありません。この時期を番組編成の特別な期間と考え、選挙報道を抜本的に拡充すべきです。選挙期間に入っても、テレビは膨大な量のバラエティ番組、紀行、グルメ番組などで埋め尽くされています。ニュース番組の中の選挙報道時間を拡大するとともに、関連の特集番組を多く編成してください。
これまでの選挙報道への申し入れで、私たちが繰り返し指摘してきたように、放送法は、法の目的を、「放送に携わる者の職責を明らかにすることによって、放送が民主主義の健全な発達に資すること」(第1条3号)としています。
選挙報道は、放送が民主主義の発展に貢献するもっとも重要な機会です。テレビ局報道担当各位に、以上の要請をしっかりと受け止めていただくよう願うものです。
以上。