東京新聞 2017年9月13日


 松戸市大谷口の大勝院幼稚園(櫛田良豊園長)で、原子力災害による甲状腺被ばくを防ぐ安定ヨウ素剤が、希望する父母ら約百五十人に配られた。東日本大震災時の東京電力福島第一原発事故から六年半がたったのを機に、原発事故への備えと、子どもの命を守ることについて、あらためて考えようと園が企画した。 

 「放射能からこどもを守ろう関東ネット」と、同事故やチェルノブイリ原発事故の被災者支援に取り組む「DAYS救援アクション」の二つの市民グループとの共催。
 園の講堂で十日、医師三人が立ち会い、どんな場合に子どもに服用させるのか、適量や副作用などを一人一人に説明して、錠剤を渡していった。

 福島原発事故当時、放射性物質が飛散したことに伴い、東葛地域では、高い空間放射線量が計測される「ホットスポット」が見つかっている。

同園は、安全な飲料水の確保、園庭の除染や、園児の甲状腺エコー検査実施といった放射能対策を率先して進めてきた。保護者三百人の意向を聞いたところ、半数が安定ヨウ素剤を求めたという。

 今回の配布は「福島第一原発事故で何が起き、どんな改善策が講じられたのかを学び、また同じようなことが起きたら、どう対処するのか、考えるきっかけづくりが目的」。震災時、園に子どもを通わせていた母親の一人で、ネット共同代表の脇ゆうりかさん(51)は、こう話す。

 原子力災害に備え、国は原発から三十キロ圏内の住民に安定ヨウ素剤を配布している。
救援アクションの世話人で、フォトジャーナリストの広河隆一さん(74)は「チェルノブイリや福島の原発事故の取材体験から三十キロ圏外でも配布して、服用方法などを教えておくことが大切と実感している。
本来は国や自治体がやるべきことだが、まずは自分たちでリスク管理する輪を広げたい」と強調した。



写真 :希望する保護者1人1人に医師らが説明し、安定ヨウ素剤を配った=松戸市で