☆ 河原井・根津09年処分取消訴訟 次回9月14日(木)11:30 東京地裁527
お忙しい中、ありがとうございます。
今日の法廷では準備書面を2本提出しています。1本は12年最高裁判決が言う「不利益の内容との権衡」について、もう1本は損害賠償請求についてです。
2008年事件地裁判決が影響して、2008年停職6月処分が適法ならば、2009年事件は加重ではなく横滑りの停職6月処分ならばいいではないかとされることが危惧されます。
そこで、不起立案件は「戒告」が基本であることを確認し、停職6月処分はあってはならない処分であることを主張します。法廷では、岩井弁護士が10分ほど口頭で述べます。
1.12年最高裁判決が言う「不利益の内容と権衡について」
・12年最判は不起立行為に対する処分は「戒告」を相当としている。また、懲戒権者が定めた処分基準は、通常予想される加重理由を考慮して、予め幅を持って定められていることが多い。したがって、職務命令違反において加重処分があるとしてもせいぜい、「減給」の範囲での加重しか想定されていないというべき(上田賀代判例タイムス)。
・12年最判は比例原則に即し、「不利益の内容との権衡」「具体的な事情」を要求している。「過去の処分歴」を考慮するとしても、二重処罰の禁止になることは許されない。
・戒告が相当とされる不起立行為に対して、停職6月処分を選択する「具体的事情」はない。
・原告らは「教育をつかさどる」主体としての教諭であり、都教委は教員が職務上独立の権限を有することを考慮しなければならないのにそれをせず、世論を二分する問題に懲戒処分によって介入した。教育の自由にかかわる性質を有するにも拘らず、都教委は一切考慮しなかった。
・また、15年高裁判決は、「思想及び良心の自由に対する実質的な侵害につながる」と説示したが、都教委はこの点にも考慮しなかった。考慮すべきことを考慮していない。これらの点について憲法判断をすべき。
・意見の割れる教育に関する事案を、一方的場懲戒処分によって決着を図ろうとすることは、教員の身分保障が目的とする自主的・自発的な教育活動とは本質的に矛盾し、裁量権行使の枠を超えることは明らか。
・停職6月処分は、次は免職という過酷な処分であり、免職を避けるためには教育実践と思想・信条の核心部分に反する行動を採ることを余儀なくさせられる。「処分歴」等から「学校の規律や秩序の保持等の必要性」を考慮しても、停職6月処分を選択することの相当性を基礎づける具体的事情にはならない。
2.損害賠賞請求について
・都教委は懲戒処分をする際に「通常尽くすべき注意義務」(平等取扱原則、公正原則、比例原則等)を怠り、標準処分量定を大幅に超える停職6月処分をした。
福岡高裁判例「可能な限り減給処分の範囲内での処分にとどめ、停職処分を選択するのはあくまで例外的な場合に限られるものというべき」
大阪高裁判例「教員に対する停職処分において、停職期間が3か月以上に及んだ事例の処分事由は、複数の生徒に対し繰り返し体罰を行ったり、あわせて虚偽の報告及び説明を行ったり、生徒に対するセクシャルハラスメント行為を行ったり、虚偽の調査書を作成したり、窃盗などの刑事処分を受けたりするなど、教員としての業務に直接関係するか否かを問わず、教員以外の労働者であっても懲戒解雇も選択肢に入り得るような程度の重大な非違行為であったことが認められる」
・都教委は「非違行為があるから処分した」のではなく、「処分するために非違行為にした」のだ。
「本件通達の意図は、前記歴史観等を有する教職員を念頭に置き、その歴史観等に対する強い否定的評価を背景に、不利益処分をもってその歴史観等に反する行為を強制することにある」(宮川光治最高裁裁判官)
「入学式や卒業式などを適正に実施することは、単に儀式的行事の問題にとどまらず、学校運営に対して校長の経営方針が明確に反映され」(横山教育長)
・職務命令、処分、再発防止研修、累積加重処分は、思想・良心の変更強要に向けた、「制度・装置」として機能する。
・同時期に都教委が発令した停職6月処分の事案は、
①「呼吸器に障害があり注入式で食事を摂取する必要のある生徒の唇に…ワインを…塗り」「一人の生徒にクリスマスプレゼントとして黒い縁の写真立てを贈り、同生徒の家族に恐怖心を抱かせた」事案、
②「合計58日5時間の私事欠勤を行った」事案、
③「同僚の女性教諭に対し、ストーカー行為を繰り返し、その結果、同女性教諭が3か月間の病気休暇を取らざるを得なくなった」事案等々。
また、他県の不起立処分と比べ、東京の処分が突出しているのは、公正原則・比例原則違反である。
また、二重処罰の禁止の原則について、刑事罰の累犯加重は「5年以内にさらに罪を犯した場合」に限定して認められている。
ところが、根津の場合は、2009年処分時から15年も前の処分を取り上げて、累積処分を基礎づける事情とする。これは二重処分というほかない。
・処分の取り消しがされればいいというものではなく、免職の恐れとの心理的葛藤による精神的苦痛が認定され、慰謝されるべき。(文責根津)
※次回裁判は9月14日(木)11:30です。
2017年7月20日
◆ 傍聴に駆けつけてくださった皆さまお忙しい中、ありがとうございます。
今日の法廷では準備書面を2本提出しています。1本は12年最高裁判決が言う「不利益の内容との権衡」について、もう1本は損害賠償請求についてです。
2008年事件地裁判決が影響して、2008年停職6月処分が適法ならば、2009年事件は加重ではなく横滑りの停職6月処分ならばいいではないかとされることが危惧されます。
そこで、不起立案件は「戒告」が基本であることを確認し、停職6月処分はあってはならない処分であることを主張します。法廷では、岩井弁護士が10分ほど口頭で述べます。
1.12年最高裁判決が言う「不利益の内容と権衡について」
・12年最判は不起立行為に対する処分は「戒告」を相当としている。また、懲戒権者が定めた処分基準は、通常予想される加重理由を考慮して、予め幅を持って定められていることが多い。したがって、職務命令違反において加重処分があるとしてもせいぜい、「減給」の範囲での加重しか想定されていないというべき(上田賀代判例タイムス)。
・12年最判は比例原則に即し、「不利益の内容との権衡」「具体的な事情」を要求している。「過去の処分歴」を考慮するとしても、二重処罰の禁止になることは許されない。
・戒告が相当とされる不起立行為に対して、停職6月処分を選択する「具体的事情」はない。
・原告らは「教育をつかさどる」主体としての教諭であり、都教委は教員が職務上独立の権限を有することを考慮しなければならないのにそれをせず、世論を二分する問題に懲戒処分によって介入した。教育の自由にかかわる性質を有するにも拘らず、都教委は一切考慮しなかった。
・また、15年高裁判決は、「思想及び良心の自由に対する実質的な侵害につながる」と説示したが、都教委はこの点にも考慮しなかった。考慮すべきことを考慮していない。これらの点について憲法判断をすべき。
・意見の割れる教育に関する事案を、一方的場懲戒処分によって決着を図ろうとすることは、教員の身分保障が目的とする自主的・自発的な教育活動とは本質的に矛盾し、裁量権行使の枠を超えることは明らか。
・停職6月処分は、次は免職という過酷な処分であり、免職を避けるためには教育実践と思想・信条の核心部分に反する行動を採ることを余儀なくさせられる。「処分歴」等から「学校の規律や秩序の保持等の必要性」を考慮しても、停職6月処分を選択することの相当性を基礎づける具体的事情にはならない。
2.損害賠賞請求について
・都教委は懲戒処分をする際に「通常尽くすべき注意義務」(平等取扱原則、公正原則、比例原則等)を怠り、標準処分量定を大幅に超える停職6月処分をした。
福岡高裁判例「可能な限り減給処分の範囲内での処分にとどめ、停職処分を選択するのはあくまで例外的な場合に限られるものというべき」
大阪高裁判例「教員に対する停職処分において、停職期間が3か月以上に及んだ事例の処分事由は、複数の生徒に対し繰り返し体罰を行ったり、あわせて虚偽の報告及び説明を行ったり、生徒に対するセクシャルハラスメント行為を行ったり、虚偽の調査書を作成したり、窃盗などの刑事処分を受けたりするなど、教員としての業務に直接関係するか否かを問わず、教員以外の労働者であっても懲戒解雇も選択肢に入り得るような程度の重大な非違行為であったことが認められる」
・都教委は「非違行為があるから処分した」のではなく、「処分するために非違行為にした」のだ。
「本件通達の意図は、前記歴史観等を有する教職員を念頭に置き、その歴史観等に対する強い否定的評価を背景に、不利益処分をもってその歴史観等に反する行為を強制することにある」(宮川光治最高裁裁判官)
「入学式や卒業式などを適正に実施することは、単に儀式的行事の問題にとどまらず、学校運営に対して校長の経営方針が明確に反映され」(横山教育長)
・職務命令、処分、再発防止研修、累積加重処分は、思想・良心の変更強要に向けた、「制度・装置」として機能する。
・同時期に都教委が発令した停職6月処分の事案は、
①「呼吸器に障害があり注入式で食事を摂取する必要のある生徒の唇に…ワインを…塗り」「一人の生徒にクリスマスプレゼントとして黒い縁の写真立てを贈り、同生徒の家族に恐怖心を抱かせた」事案、
②「合計58日5時間の私事欠勤を行った」事案、
③「同僚の女性教諭に対し、ストーカー行為を繰り返し、その結果、同女性教諭が3か月間の病気休暇を取らざるを得なくなった」事案等々。
また、他県の不起立処分と比べ、東京の処分が突出しているのは、公正原則・比例原則違反である。
また、二重処罰の禁止の原則について、刑事罰の累犯加重は「5年以内にさらに罪を犯した場合」に限定して認められている。
ところが、根津の場合は、2009年処分時から15年も前の処分を取り上げて、累積処分を基礎づける事情とする。これは二重処分というほかない。
・処分の取り消しがされればいいというものではなく、免職の恐れとの心理的葛藤による精神的苦痛が認定され、慰謝されるべき。(文責根津)
※次回裁判は9月14日(木)11:30です。