◆ 核武装の野望 (東京新聞【本音のコラム】)
   鎌田 慧(ルポライター)


 「ヒバクシャの受け入れ難い苦しみと損害に留意する」と前文で強調された「核兵器禁止条約」が、国連加盟国の三分の二に近い百二十二カ国の賛成を得て採択された。
 核兵器は、これまでにすでに禁止条約として発効している対人地雷クラスター弾よりも、さらに残虐かつ非人道的な兵器であることは、わたしたち日本人がもっともよく知るところである。
 ところが、日本政府が核保有国・米国などとともにこの条約に参加せず交渉の冒頭に会場から退席している。ヒロシマ、ナガサキニ十万人のヒバクシャの苦しみを足蹴にする政府とはなにか。


 「核兵器国と非核兵器国との橋渡しをしたい」というコウモリ的な言い訳は、非保有国の願いを裏切る行為である。
 その一方で北朝鮮の脅威をあおって、
米国の「悪魔的な」核兵器を支持する

 なぜか。
 一九五四年、米国視察から帰国した中曽根康弘議員などが、「原子兵器の理解とそれを使用する能力を持つために」原子力予算を可決させたのはよく知られている。
 平和利用をうたって成立させた原子力基本法に二〇一二年六月、「我が国の安全保障に資する」を挿入させた。
 自民党政権に核保有の野望があるからこそ、十四兆円もの赤字を無視して核再処理工場稼働にこだわり、核兵器禁止条約を拒否する。
 北朝鮮を批判できるのか

『東京新聞』(2017年7月11日【本音のコラム】)


パワー・トゥ・ザ・ピープル!! パート2