=シリーズ「いま学校現場では」=
 ◆ 非正規職員が見た都立高校 (『いまこそ』)
戸山海太郎(こやま・うみたろう)

 5年前から「一般職非常勤・実習支援専門員」という職種で仕事をしています。教員免許のある人、ない人がいますが、どちらにしても授業はなく、理科やIT関係の授業で先生方のお手伝いをするのが仕事です。
 ずっと民間で仕事をしていたので、学校に来た当初は結構ギャップに戸惑いました。
 民間企業には見かけないことと言えば、たとえば、なぜかタイムカードがなくて何時まででも働ける。というか残業手当がつかない。
 しかし時間休をはじめ、休暇はじつに取りやすい。
 授業より部活に力を入れている先生が大勢いる。
 年に2回は会議室に集められて「包括的職務命令」という書類を受け取らされる。
 1年ごとの契約更新の時、毎度、日本国憲法の遵守を宣誓する(これはよいこと)。


 さてこの職種、学校の中でなじみがないためか、黙っていると仕事が回ってこないので、前の学校では図書館司書の先生と協力して書評新聞を作ったりしていた。
 原発や労働、安保法制や世界情勢など、ちょっと尖った本も紹介していて好評だった一方、数人の主幹教諭に目をつけられて、クラスに配る前に新聞が数百枚も捨てられているのを見つけたこともあった。
 一部にはそんな人々もいたが、学校は案外頭が柔らかいところもあり、生徒に知識を手渡すためなら、新しい取り組みを歓迎してくれることもわかった。

 残念ながらパワハラは横行していた。
 いちばんひどかったのは、飲み会の時に校長が女性の先生に触り、その先生が都庁のしかるべきところに通報しても何のお咎めもなかったばかりか、C評定をつけて報復してきた事件だった。
 そういう学校では古参の教員が若い教員をいじめていたり、生徒に執拗に怒鳴ったりしていて、職員室の雰囲気はとにかく暗かった

 「教員ではないから、生徒の指導はしません」とうそぶきながらも、美術部の顧問になって大勢の生徒と知り合った。
 息苦しい学校生活の中でも、絵画やデザインというフィールドで自分の何かを表現したいと切望している生徒たちと過ごした時間は、自分にも刺激になった。
 昔の都立高校はもっとよかった……という声はよく聞く。
 新参者には今と昔は比較できないが、もっと自由に物が言えて、人権の守られる環境にした方が、生徒も教員ものびのび出来て、未来も明るいのはまちがいない。
 それには、学校の重い「空気」に風穴を開けるような企てが必要なのかなーと思っています。

『いまこそ 13号』(2017/6/6)


パワー・トゥ・ザ・ピープル!! パート2