◆ 国家主義色・政治色の濃い「調査項目」を設定 (週刊新社会)
永野厚男・教育ジャーナリスト
今夏、全国の教育委員会が、初の文科省検定済の道徳教科書採択を行うのを前に、東京都教育委員会は、1995年度を最後に22年間、非公開にしていた教科用図書選定審議会(以下、選定審)を2017年4月17日、一部公開した。だが、社会科等で都教委が「調査」している国家主義色・政治色の濃い項目を、道徳でどう設定するかは全く明らかにされなかった。
都教委は「教科書の違いや特徴がより明確になると考えられる項目を選択し、その結果を記述」すると称し、『教科書調査研究資料』なる冊子(4年周期の採択年ごとに作成。現行は14年6月発行)に、以下のような国家主義色・政治色の濃い「調査項目」を設定。各社の小学校教科書の記述をコピペ掲載している。
①神話や伝承を知り、日本文化や伝統に関心を持たせる資料、
②北朝鮮による拉致問題の扱い(以上、国語・社会)、
③国旗・国歌の扱い(社会・音楽)、
④我が国の位置と領土をめぐる問題の扱い(社会)など。
②は「児童・生徒が人権尊重の理念を正しく理解できるようにするため」と謳うが、ヘイトスピーチ等の在日外国人差別や男女平等などの「調査項目」は設定なし。
そもそも拉致問題を扱った15年度~18年度使用の国語教科書はなく、この調査自体、政治的意図が垣間見られる。
因みに、「防災や自然災害時における関係機関の役割等」で、現行小学校学習指導要領にない「自衛隊の働き」を、新指導要領に先取りして設定してしまったのも、政治的だ。
文科省は3月24日、東京書籍・教科書に対し、全体として"愛国心"規定(15年、小学1年指導要領にも盛った)の記載が充足していない旨、検定意見を付け、同社が「パン屋」の文とイラストを「和菓子屋」に"自主"修正し、「・・・くにの、すきなところはどんなところですか」という問いを載せることで、合格させた等の、道徳教科書の検定結果を公表した。
改定教育基本法は"愛国心"を盛っているから、都教委が前記①を一層強化したり、③を"愛国心"と関連付けたりした道徳の「調査項目」を設定するのは必至(【注】参照)。だが、選定審ではこの議論は全くなかった。
文科省の中教審等は、部会長の選任以外は全部公開。
しかし都教委は、「4月17日の選定審は午後3時開始」と告知しながら、「委員や事務局の自己紹介」等の15分間を非公開に。このため傍聴者8人は、会長・副会長の氏名すら分からないままだった。また都教委職員は、傍聴者を受付番号順に座るよう強制。異常な管理体制だった。
次回の選定審は5月29日午前の予定だ(都教委HPを見て、事前登録が必要)。
【注】 3月24日の"報道解禁"以降も大手メディアが報じていなかった事案だが、『週刊金曜日』4月28日号の福島瑞穂参院議員(社民)への取材記事によると、教育出版の文科省検定済・道徳教科書は、写真付きで卒業式等の"君が代"起立・斉唱を強制する文言を載せている。
これにより、"君が代"起立・斉唱強制や"平和を願う歌"というウソの記述は、小学校ではこれまでの社会・音楽に続き、道徳教科書でも徹底して教え込むことになってしまう。
『週刊新社会』(2017年5月9日号)掲載記事に筆者が加筆したもの
永野厚男・教育ジャーナリスト
今夏、全国の教育委員会が、初の文科省検定済の道徳教科書採択を行うのを前に、東京都教育委員会は、1995年度を最後に22年間、非公開にしていた教科用図書選定審議会(以下、選定審)を2017年4月17日、一部公開した。だが、社会科等で都教委が「調査」している国家主義色・政治色の濃い項目を、道徳でどう設定するかは全く明らかにされなかった。
都教委は「教科書の違いや特徴がより明確になると考えられる項目を選択し、その結果を記述」すると称し、『教科書調査研究資料』なる冊子(4年周期の採択年ごとに作成。現行は14年6月発行)に、以下のような国家主義色・政治色の濃い「調査項目」を設定。各社の小学校教科書の記述をコピペ掲載している。
①神話や伝承を知り、日本文化や伝統に関心を持たせる資料、
②北朝鮮による拉致問題の扱い(以上、国語・社会)、
③国旗・国歌の扱い(社会・音楽)、
④我が国の位置と領土をめぐる問題の扱い(社会)など。
②は「児童・生徒が人権尊重の理念を正しく理解できるようにするため」と謳うが、ヘイトスピーチ等の在日外国人差別や男女平等などの「調査項目」は設定なし。
そもそも拉致問題を扱った15年度~18年度使用の国語教科書はなく、この調査自体、政治的意図が垣間見られる。
因みに、「防災や自然災害時における関係機関の役割等」で、現行小学校学習指導要領にない「自衛隊の働き」を、新指導要領に先取りして設定してしまったのも、政治的だ。
文科省は3月24日、東京書籍・教科書に対し、全体として"愛国心"規定(15年、小学1年指導要領にも盛った)の記載が充足していない旨、検定意見を付け、同社が「パン屋」の文とイラストを「和菓子屋」に"自主"修正し、「・・・くにの、すきなところはどんなところですか」という問いを載せることで、合格させた等の、道徳教科書の検定結果を公表した。
改定教育基本法は"愛国心"を盛っているから、都教委が前記①を一層強化したり、③を"愛国心"と関連付けたりした道徳の「調査項目」を設定するのは必至(【注】参照)。だが、選定審ではこの議論は全くなかった。
文科省の中教審等は、部会長の選任以外は全部公開。
しかし都教委は、「4月17日の選定審は午後3時開始」と告知しながら、「委員や事務局の自己紹介」等の15分間を非公開に。このため傍聴者8人は、会長・副会長の氏名すら分からないままだった。また都教委職員は、傍聴者を受付番号順に座るよう強制。異常な管理体制だった。
次回の選定審は5月29日午前の予定だ(都教委HPを見て、事前登録が必要)。
【注】 3月24日の"報道解禁"以降も大手メディアが報じていなかった事案だが、『週刊金曜日』4月28日号の福島瑞穂参院議員(社民)への取材記事によると、教育出版の文科省検定済・道徳教科書は、写真付きで卒業式等の"君が代"起立・斉唱を強制する文言を載せている。
これにより、"君が代"起立・斉唱強制や"平和を願う歌"というウソの記述は、小学校ではこれまでの社会・音楽に続き、道徳教科書でも徹底して教え込むことになってしまう。
『週刊新社会』(2017年5月9日号)掲載記事に筆者が加筆したもの
パワー・トゥ・ザ・ピープル!! パート2