22万人もの自治体非常勤から
 ◆ 労働基本権を奪う
   地公法改定を許さない!

なくそう!ワーキングプア集会実行委員会

 地方公務員法及び地方自治法を「改正」する法律案が、今国会で審議されています。非常勤職員に期末手当(ボーナス)などの支給が可能になるとはいえ、現場で働く当事者の非常勤、そして雇用の安定と常勤との均等待遇を求めて闘ってきた労働組合からみれば、以下のような大きな問題点があります。法案の見直しを共に訴えてくださるようお願いします。

 ◆ 代償措置もなく、労働基本権を一方的に剥奪
 自治体における64万人の全臨時・非常勤の3分の1は特別職の非常勤です。常勤の一般職と違い、民間労働者と全く同じ労働基本権があります。
 この特別職非常勤22万人が「会計年度任用職員」に移行させられることにより、これまでの労働基本権が一方的に奪われることになるのです。


 70年前に官公労からスト権を一方的に奪った政令201号以来の暴挙です。
 雇止めや更新限度などの自治体の横暴に抗して、労組を結成したり合同労組に加入して闘ってきた仲間がいます。
 これまでの団交でかちとった労働協約は無効になり、労働委員会やストで闘うことはできなくなり、労働組合は解散を余儀なくされ、制限の多い職員団体に鞍替えを強いられます

 これまでも労使交渉でボーナスを支給してきた自治体は数多くありました。
 法改定でボーナスが支給できるようになったといっても、「支給が可能となる根拠ができた」というだけです。実際の支給決定や額の決定は各自治体にゆだねられます。
 自治体のなかには財政力に課題があるところが多いにもかかわらず、財政措置は未だ確保されていません。
 また、一般職の常勤職員が労働基本権を制限されていることの代償措置である人事委員会勧告も、非常勤は事実上適用を受けません
 そもそも人事委を設置している自治体は1165自治体中、68自治体であり5.8%にすぎませんし、人事委員会のあるところでも勧告対象にするかしないかは各人事委の判断にゆだねられます。
 今ですら一般職非常勤では法律上は勧告制度の対象ですが、勧告実績のある自治体は皆無です。労基法全面適用から制限適用となり、労使対等原則は崩されます。
 監督機関が労基署から人事委員会・首長へと変わり、外部監督から事実上の内部監査への転落、自治体の条例・規則への従属が強いられます。
 こうした状況では、もはや、失うもののほうが大きいといえます。私たちは労働基本権を一方的にはく奪し労働法制の活用を取り上げる、今回の法改定を認めることはできません。

 ◆ 更新への期待権を奪う! 1年任用の強要
 現行の一般職非常勤職員の任期は、法律上「任期が定められていない」ことから、自治体の個別状況や労使交渉で決定しているのが実態です。実際に2年や3年任期の自治体があります。
 これらが1年任期への変更を強要されます。法律で任用期間が1年と限定されるようでは、現行よりも不安定な雇用となるのは必定です。
 法改定では更新という概念はなく(毎年、退職~採用を繰り返すことが原則)、当事者の非常勤へ大きな心理的負担をもたらします。
 国にならい、1年任期にくわえ3年ごとの公募採用を標準とするよう自治体を指導することも予測されます。半数を超える雇用年限がない自治体にも、3年ごとに採用しなおすよう強いることになります。これまで労働組合のカで雇用年限を廃止させてきた成果が、無に帰すことにもなりかねません。

 ◆ 民間ではあり得ない! 毎年の使用期間
 さらなる問題は、毎年毎年「1ヶ月の条件付き採用期間」が繰り返されることです。1ヶ月の条件付き採用期間を経て「正式採用」となったものに、また次の年には1ヶ月の試用期間を付けるというのです。
 働く側や現場から見て、あまりにも無意味なうえ、これでは働くものの尊厳を傷つけます。多くの自治体では「毎年の『人事評価』により、公募によらず更新する」実態があり、これとも矛盾します。

 ◆ フルタイムより1分短いだけの「疑似パート」で、退職手当はなし
 法案では、同じ「会計年度任用職員」でありながら、フルタイムには「給料と諸手当」、パートタイムには「報酬と期末手当のみ」とすることになっています。これは明らかに「不合理な差別」です。
 法案に先立つ研究会報告では「常勤職員と同様に給料及び手当の支給対象とするよう給付体系を見直すことについて、立法的な対応を検討すべき」と記され、この報告を受けてつくられた原案でも「会計年度任用職員など労働者性が高い一般職の非常勤職員について、常勤職員と同じく給料・手当の支給対象とする」としていました。
 しかし提出された法案は上記の通りで、現在、国がすすめる「同一労働同一賃金」とも真逆の動きです。疑似パート化で退職金逃れを誘発することになります。

 ◆ 民間よりもひどい!労働契約法も労働法も適用なし! 雇用安定と均等待遇を!
 政府は、非正規労働者の待遇改善を目指す「同一労働同一賃金」の実現に向け、正規と非正規の労働者間に待遇差を設ける場合、企業の説明義務を法律で明記する方針です。
 非正規公務員は、労働契約法やパート労働法など、非正規民間労働者の処遇改善法制から排除されています。したがって、事業主たる地方自治体は、非常勤を何年使用しようが無期雇用に転換することを義務付けられていません。
 パート労働法が適用されないために絶望的な格差を埋める義務も免れてきました。
 さらに、民間では事業主に今後課される待遇差の説明義務さえ免れ、非常勤をワーキングプア水準の賃金で働かせることが、許されてしまうのです。

 民間労働者の正規・非正規間格差は、賃金水準では正規の6割程度と言われています。
 これに対し、地方公務員の正規・非正規間格差は、事務職員の場合、常勤の年収が630万円程度に対し、非常勤は170万円程度と試算され、正規の4分の1の水準に過ぎません。このような絶望的な格差は、期末手当の支給をというだけでは到底是正できないものです。
 地公法改定に異議あり!私たちとともに声をあげてください!

なくそう!官製ワーキングプア集会実行委員会(2017年5月)
〈違絡先〉連帯労働者組合・杉並、自治労連・東京公務公共般労働組合


パワー・トゥ・ザ・ピープル!! パート2