◆ 大学生の貧困 (東京新聞【本音のコラム】)
今日から三月。卒業と旅立ちの季節である。でも、ご存じだろうか。
アルバイトをしながらやっと大学を出たのに、出たと同時に数百万円の借金を背負わされる。そんなマイナスからのスタートを強いられる若者たちが急増していることを。
Aさんは片道三時間以上かけて通学している。部屋を借りる経済的なゆとりがないためだ。サークルは断念したが、毎日バイトもしているので帰りは終電近くになる。
自宅外から国立大学に通うBさんは日本学生支援機構の奨学金を月に十二万円借りている。利子を加えると返済額は六百万円超。国立の学費が安かったのは過去の話で、それがなければ授業料も生活費も払えない。
Cさんは大学院への進学を希望していたが、月に五万円の奨学金を借りており、返済額は利子を含めて二百五十万円超。これ以上の奨学金の返済は不可能だと判断し、進学はあきらめた。
以上、大内裕和『奨学金が日本を滅ぼす』(朝日新書)に出ていた例の一部である。
いまや大学生の奨学金利用者は全体の50%を超え、使い道も授業料、教科書代、交通費といった基礎的な出費である。
ブラックバイトがはびこる理由もそれ。
高卒で働けばいい?いやいや、高卒の求人自体が激減しているのよ。
急激に進む大学生の貧困。だいたい奨学金に利子がつくっておかしいでしょ。
『東京新聞』(2017年3月1日【本音のコラム】)
斎藤美奈子(文芸評論家)
今日から三月。卒業と旅立ちの季節である。でも、ご存じだろうか。
アルバイトをしながらやっと大学を出たのに、出たと同時に数百万円の借金を背負わされる。そんなマイナスからのスタートを強いられる若者たちが急増していることを。
Aさんは片道三時間以上かけて通学している。部屋を借りる経済的なゆとりがないためだ。サークルは断念したが、毎日バイトもしているので帰りは終電近くになる。
自宅外から国立大学に通うBさんは日本学生支援機構の奨学金を月に十二万円借りている。利子を加えると返済額は六百万円超。国立の学費が安かったのは過去の話で、それがなければ授業料も生活費も払えない。
Cさんは大学院への進学を希望していたが、月に五万円の奨学金を借りており、返済額は利子を含めて二百五十万円超。これ以上の奨学金の返済は不可能だと判断し、進学はあきらめた。
以上、大内裕和『奨学金が日本を滅ぼす』(朝日新書)に出ていた例の一部である。
いまや大学生の奨学金利用者は全体の50%を超え、使い道も授業料、教科書代、交通費といった基礎的な出費である。
ブラックバイトがはびこる理由もそれ。
高卒で働けばいい?いやいや、高卒の求人自体が激減しているのよ。
急激に進む大学生の貧困。だいたい奨学金に利子がつくっておかしいでしょ。
『東京新聞』(2017年3月1日【本音のコラム】)