2016年11月28日

 大手ゼネコン、大林組の子会社が米サンフランシスコに施工した地上58階建ての超高層ビルが、毎年5センチ近く沈下していることが欧州の人工衛星の観測で判明した。同ビルのマンションの住民は、デベロッパーに対して補償を求める訴訟を起こしたという。
 
 地盤沈下が確認されたのは、2009年にサンフランシスコ市の中心部に完成した地上58階、地下5階建ての高層マンション「ミレニアム・タワー」。大林組の米国法人ウェブコーが施工し、土地開発はミレニアム・パートナーズが担当した。
 
 欧州宇宙機関(ESA)によると、地球観測衛星「センチネル-1」のレーダー画像をノルウェーの地質調査チームが解析した結果、ミレニアム・タワーが2015年2月から2016年9月までの19カ月間で4センチ近く地盤沈下し、傾斜している事実を突き止めた現在も年間5センチほどのペースで沈降しているという
 
 原因は不明だが、米国の一部メディアでは、「地下の岩盤に基礎杭が完全に埋設されていないおそれがある」と指摘し、竣工時からこれまでに基礎部分が約40センチ北西方向に5センチほど傾斜していると報じている。
 
 研究チームがサンフランシスコ湾岸エリアまで観測対象を広げた結果、北部のサンラファエル湾の埋め立て地でも液状化が発生していることが判明した。また、地震の多発地帯であるサンアンドレアス断層系周辺の建物でも沈下が起こっているという
 
 ミレニアム・タワーの沈下が今年8月に発覚した際、同マンションの一部の所有者は、現在大林組とウェブコーが付近で建設作業中の複合商業施設が原因だとして、工事の発注者に対して補償を求めて提訴している。
 
 大林組はこれを受けて「ミレニアム・タワーと商業施設の工事の契約には、設計業務は含まれておらず、第三者機関による検査を経て適切に施工していることが確認されている」とコメントしている。
http://sp.hazardlab.jp/contents/post_info/1/8/0/18034/San.jpg
地球観測衛星がとらえたサンフランシスコの湾岸エリア。緑は変化のない場所、黄色や赤でポイントされた部分では沈下が認められた(提供:Copernicus Sentinel data (2015–16) / ESA SEOM INSARAP study / PPO.labs / Norut / NGU)