大気汚染物質  出産にリスク、「胎盤早期剥離」と関連  

毎日新聞2016年12月10日

  大気汚染物質の一つ、二酸化窒素(NO2)濃度が大幅に上昇すると、出産前に妊婦の胎盤がはがれてしまう「常位胎盤早期剥離」のリスクが高まるとの疫学調査結果を、国立環境研究所(茨城県つくば市)と九州大の研究チームが9日発表した。国際環境疫学会誌に掲載された。

早期剥離は妊婦の0.6%程度に起こるとされる。最悪の場合、死産とともに母体の生命にもかかわる。チームは、日本産科婦人科学会が匿名で収集している約5万人の妊婦や胎児のデータを利用。2005~10年に九州・沖縄地方の28病院で出産した妊婦のうち、早期剥離と診断された821人を対象に、病院に最も近い測定地点での大気汚染物質濃度との関連を調べた。
 大気汚染物質と心筋梗塞(こうそく)との関連を調べた海外の研究などを踏まえ、汚染物質によって胎盤に影響が出るまでの時間を約1日、発症から出産まで約1日と仮定。出産2日前の日の平均濃度との関係を分析したところ、早期剥離のリスクは、NO2が10ppb(ppbは10億分の1)上昇するごとに1.4倍になるとの結果になった。他の汚染物質では明確な関連はみられなかった。
 実際に妊婦がいた場所と測定地点の濃度に差があるなど、分析の精度には限界もあるという。【大場あい】