東京新聞 2016年12月2日
 
川が新たなセシウム運ぶ 東京湾河口部汚染
 
 東京湾に注ぐ主要河川の河口部で、本紙が独自に堆積物を採取し放射性セシウム濃度を調べたところ、東京電力福島第一原発事故から五年半がたっても、川で運ばれてきたセシウムが新たに蓄積され、濃度はあまり低下していないことが分かった。調査は三回目。海水魚はセシウムを取り込んでも排出するため、影響は限られるとみられるが、継続的な監視は必要だ。 (原発取材班)
 採取は9月16と17の両日、関東学院大の鎌田素之(もとゆき)准教授(環境工学)や学生二人の協力を得て実施。鶴見川、多摩川、隅田川、荒川、旧江戸川、花見川の六河川の河口で、二種類の採泥器を使い、海底の表層のほか、海底下四十センチまでの堆積物も採取した。
 最も高い濃度を検出したのは、印旛沼(千葉県)につながる花見川(同)。一キログラム当たり452~789ベクレルと、他の河口より突出して高かった。基準値はないものの、原発で使ったコンクリートや金属を再利用できる基準は同100ベクレル。この値に比べ、大幅に高い。河口から7百メートルほど離れると76ベクレルに急減していた。
 海底にステンレス管でできた採泥器を打ち込んで柱状に堆積物を採取。5センチごとに濃度も調べた。表層から深さ20センチまでは742~757ベクレルと高く、印旛沼から流れてきたセシウムが継続的に蓄積しているとみられる。その下はやや下がり、30センチを超えると45ベクレルまで下がった。
 荒川(東京都)河口は二年前に比べると低めだが、昨年とほぼ同水準の120~282ベクレル。底から40センチまでの層の濃度分布は、表層5センチが最も高い373ベクレル。30センチまでは200ベクレル前後で、その下は60ベクレル前後だった。
 東京と千葉の境を流れる旧江戸川河口は200ベクレルほど。多摩川河口(東京と神奈川の都県境)は100ベクレル強で、過去二回の調査と同水準だった。隅田川(東京都)河口は200ベクレル弱で、大きな変化はなかった。
 魚介類への影響がポイントになるが、水産庁が、各地の検査機関による水産物の放射能調査をまとめたデータによると、2016年度は東京湾で81件の魚などが調べられた。うち六件でセシウムが検出されたものの、魚種はいずれもスズキで、一ベクレル未満と検出できるぎりぎりの値だった。食品基準(100ベクレル)の百分の一未満の低い水準で、食べても何ら問題のないレベルといえる。
◆水環境に流れ込む
<鎌田准教授の話> 首都圏の河川の河口では、いまだにセシウムが継続的に供給され、蓄積し続けていることが確認できた。森林域では放射性物質は土壌にとどまり、水環境には流出しにくいが、都市部では河川など水環境に流れ込みやすいことが指摘されている。
<本紙の東京湾放射能調査> 2014年から毎年9月に実施。結果は、14年は10月13日、15年は11月13日付朝刊で掲載した。海底の堆積物は乾燥後、4~8時間かけて放射性セシウム濃度を測定した。
 
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2016120290065925.html