総会は、戦争犯罪及び人道に対する罪に対する時効の不適用に関する条約案を検討し、戦争犯罪及び人道に対する時効の不適用に関する条約を採択し、且つ署名、批准及び加入のために開放する。本条約の全文は本決議に付属する。
前文
本条約当事国は、戦争犯罪人の引渡し及び処罰に関する国際連合総会の1946年2月13日付決議3(I)及び1947年10月31日付決議170(II)、ニュールンベルグ国際軍事裁判所条約及び同裁判所判決により認められた国際法の諸原則を確認する1946年12月11日付決議95(I)、並びに一方では原住民の経済的及び政治的権利の侵害を、他方ではアパルトヘイト政策を人道に対する罪として明白に非難した総会の1966年12月12日付決議2184(XXI)及び1966年12月16日付決議2202(XXI)を想起し、戦争犯罪人及び人道に対する罪を犯した者の処罰に関する国際連合経済社会理事会の1965年7月28日付決議1074D(XXXIX)及び1966年8月5日付決議1158(XLI)を想起し、戦争犯罪及び人道に対する罪の訴追及び処罰に関するいかなる正式の宣言、文書又は条約も時効について規定していなかったことに注目し、戦争犯罪及び人道に対する罪が国際法における最も重大な犯罪に属することを考慮し、戦争犯罪及び人道に対する罪の効果的処罰がこれらの犯罪の防止、人権及び基本的自由の保護、諸人民間の信頼の奨励と協力の推進、並びに国際の平和と安全の促進における重要な要素であることを確信し、通常の犯罪の時効に関する国内法規則の戦争犯罪及び人道に対する罪への適用はこれらの犯罪に対し責任を負う者の訴追及び処罰を妨げるがゆえに、世界世論にとって重大な関心ごとであることに注目し、戦争犯罪及び人道に対する罪にとって時効は存在しないという原則を、本条約を通じて、国際法において確認し、並びにその普遍的適用を確保することが必要かつ時宣に適ったものであることを認め、次のとおり協定した。
第一条「戦争犯罪及び人道に対する罪の定義」
次の犯罪にはその犯行の時期に関係なく時効は適用されない。
(a)1945年8月8日のニュールンベルグ国際軍事裁判所条例において定義され、かつ国際連合総会の1946年2月13日付決議3(I)及び1946年12月11日付決議95(I)により確認された戦争犯罪、特に戦争犠牲者保護のための1949年ジュネーヴ諸条約に列挙された「重大な違反」。
(b)戦時に犯されたか平時に犯されたかを問わず人道に対する罪、それは、1945年8月8日のニュールンベルグ国際軍事裁判所条例において定義され、かつ国際連合総会の1946年2月13日付決議3(I)及び1946年12月11日付決議95(I)により確認された人道に関する罪、武力攻撃又は占領による追立て及びアパルトヘイト政策に基づく非人道的行為、並びに1948年の集団殺害罪の防止及び処罰に関する条約において定義された集団殺害罪。右の行為はその犯行の行われた国の国内法の違反を構成するか否かを問わない。
第2条「主犯者、共犯者」
第1条にあげられたいずれかの犯罪が犯される場合、本条約の規定は、完成の程度に拘わらず、主犯者又は共犯者として、これらのいずれかの犯罪の犯行に参加し又は他の者を直接教唆し、若しくはその犯罪を共謀する国家当局の代表及び私的個人に、そしてこれらの犯行を許容する国家当局の代表者に適用される。
第3条「引渡し」
本条約当事国は、本条約第2条にあげられた者の国際法に従った引渡しを可能ならしめるため、立法その他必要なすべての国内措置を執ることを約束する。
第4条「立法その他の措置」
本条約当事国は、時効又は他の制限が本条約第1条及び第2条にあげられた犯罪の訴追及び処罰に適用されないこと、及びそのような制度がもし存在すれば廃止されることを確保するために必要な立法または他の措置を、それぞれの憲法上の手続きに従って、執ることを約束する。
採択 1968年11月26日(国連総会決議2391(XXIII)
効力発生 1970年11月11日
(国連)
戦争及び人道に対する罪に対する時効不適用条約