スノーデンの警告 
      ここまできている日本の監視社会
  スパイ活動はこうした下請け企業を隠れみのにしている
    国際ケーブルなどの通信インフラに侵入して情報を盗み出す
   ツケを払わされるのは個人、私たち一人ひとりだ
 

○8月27日、渋谷区立勤労福祉会館で「『スノーデンの警告』―ここまできている日本の監視社会」が開かれた。これは、「秘密保護法」廃止へ!実行委員会、盗聴法廃止ネット、共通番号いらないネットの共催によるものだ。

 はじめに日本のジャーナリストで初めてスノーデン氏に単独インタビューしたジャーナリストの小笠原みどりさんが講演。アメリカ国家安全局(NSA)の契約職員だったエドワード・スノーデンは、アメリカ政府の監視システムを告発した。メール、チャット、ビデオ通話、ネット検索履歴、携帯電話での通話など、世界中のあらゆる通信経路を通過する情報のすべてをNSAが掌握しようとしているという事実が明らかにされた。NSAは米国防長官が直轄する信号諜報と防諜の機関だ。NSAはテロ対策を名目にブッシュ政権から秘密裏に権限を与えられ、大量監視システムを発達させていった。

スノーデンはNSAが自由と民主主義を蝕んでいることを指摘し、監視システムが人目の届かない場所でいかに乱用されているかを知らせた。亡命先のロシアからスノーデンは、5月に、私のインタビューに応じた。スノーデンは2009年にNSAの仕事を請け負うコンピュータ会社デルの社員として来日し、東京都福生市で2年間暮らしていた。勤務先は、近くの米空軍横田基地内にある日本のNSA本部だった。NSAは世界中の情報通信産業と密接な協力関係を築き、デルもその一つであり、米国のスパイ活動はこうした下請け企業を隠れみのにしている。

○2013年12月、秘密保護法が強行成立させられたが、スノーデンはアメリカからの圧力があったという。しかもNSAは表面上は日米の「友好関係」を強調しながら日本政府の各機関や企業からも情報を収集し、英語圏の国々(イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ)にも一部共有されていた。日本は協力国ではあるが、監視対象ともなる位置にある。

○日本の情報収集は「ターゲット・トーキョー」と呼ばれる。その盗聴経路はわかっていないが、NSAは国際海底ケーブルへの侵入、衛星通信の傍受、マイクロソフト、グーグル、フェイスブックなどインターネット各社への要請などをやっている。そのようにしてNSAは、世界中のコミュニケーションの「コレクト・イット・オール」(すべて収集する)を目指している。このうち国際ケーブルなどの通信インフラに侵入して情報を盗み出す「特殊情報源工作(SSO)」を、スノーデンは「今日のスパイ活動の大半であり、問題の核心」と呼んでいる。SSOは主に、国際海底ケーブルの米国上陸地点で、ケーブルを通過する大量の情報をNSAのデータベースへと転送する工作を施す。世界の通信の多くが米国内のインターネット、通信会社のサーバーを通過するから、日本国内で送受信されたメールであっても、米国内のケーブル上陸地点を通過すれば情報を盗むことができるのであり、「コレクト・イット・オール」は政府機関だけではなく、すべての人々の通信を対象にしているといえる。

○米国内では大手通信会社のベライゾンやAT&Tがデータ転送システムの構築に協力し、利用者データをNSAに渡してきている。この両社も参加した日米間海底ケーブルのひとつに「トランス・パシフィック・オーシャン」があるが、米側の上陸地点オレゴン州北部のネドンナ・ビーチの内陸、ヒルズボロに陸揚げ局がある。NSA文書に記載された国際海底ケーブル「トランス・パシフィック・エクスプレス」の日本の接続地点は千葉県の「新丸山」にある。日本からのデータがこの地点で吸い上げられている可能性は高い。
○インタビューの中でスノーデンは「僕が日本で得た印象は、米政府は日本政府にこうしたトレードに参加するよう圧力をかけていたし、日本の諜報機関も参加したがっていた。が、慎重だった。それは法律の縛りがあったからではないでしょうか。その後、日本の監視法制が拡大していることを、僕は本気で心配しています」と言っている。