「スーパー耐性菌」

リオの海に「スーパー耐性菌」、五輪会場付近や観光ビーチでも

リオデジャネイロ(CNN) ブラジルの研究者が5日、抗生剤に強い耐性をもつ「スーパー耐性菌」がリオデジャネイロの海岸で検出されていたことを明らかにした。オリンピックの開幕を1カ月後に控え、選手なども不安を募らせている。

研究チームを率いるレナータ・ピカオ氏によると、2013~14年の1年間に5カ所のビーチで採取した海水から、耐性菌の「カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)」が検出された。「濃度はまちまちだが、汚染と強く関連している」という。耐性菌は周辺の病院の下水から湾に流れ込み、市内の河川などに流入したと思われる。

未処理の下水が河川などに流れ込む状況は現在も続いているため、耐性菌の値に変化はないとピカオ氏は推定。次の段階として、こうした海で泳いだりした場合に耐性菌が及ぼす影響を調べる予定だという。

スーパー耐性菌は、セーリング競技の舞台となるグアナバラ湾に面したフラメンゴとボタフォゴのビーチでも検出された。

リオデジャネイロを訪れたドイツのパラリンピックのセーリング選手は、「セーリングにはいい場所だけれど、顔に水がかかるたびに未知の敵が顔に入り込むような気がする」と話し、「鼻と口をずっとふさいでいる」と打ち明ける。チームメートの1人が練習中に重度の皮膚感染症を起こしたのは、耐性菌が原因だったかもしれないとも語った。

ピカオ氏は耐性菌の存在について、市内の衛生設備が整っていないことに原因があると指摘し、「病院の下水が市の下水と混じってグアナバラ湾や河川に流れ込み、ビーチに到達した」と解説する。

これに対して市の下水道公社は、世界保健機関(WHO)が定めた基準は守っていると述べ、「市の下水の51%は処理されている」と強調した。下水処理は7年前は11%にとどまっていたという。5月には市西部に新しい下水処理工場が完成しており、約43万人をカバーする予定。

リオデジャネイロは2009年にオリンピック開催地として名乗りを上げた時点で、汚染された河川を浄化し、全世帯の80%に下水処理システムを行き渡らせると約束していた。

耐性菌の不安はあるものの、ピカオ氏も組織委員会も、危険性がはっきりしないとしてセーリング会場の変更は勧告していない。「もし選手が感染すれば、多耐性菌の可能性があり、医師もそのことを知っておく必要がある」とピカオ氏は言う。

スーパー耐性菌は、観光客にも地元の人にも人気があるレブロンやイパネマのビーチでも陽性反応が出たといい、「自分の子どもは連れて行かない」とピカオ氏。「海水を通じて接触した場合、人の健康にどのようなリスクがあるのか、研究を進める必要がある」と話している。

CNN.co.jp 7月6日(水)


全既存薬が効かない「悪夢」のスーパー耐性菌、米国で初確

2016年【5月27日 AFP】
全ての既存薬に耐性を持つスーパー耐性菌への感染が米国内で初めて確認されたと、米疾病対策センター(CDC)が26日、発表した。抗菌薬が効かない「ポスト抗生物質時代」の到来に警鐘を鳴らしている。
 感染が確認されたのは、米ペンシルベニア(Pennsylvania)州在住の女性(49)。尿路感染症の検査で、感染症治療における最終選択薬とされている抗生物質「コリスチン」への耐性を持つ大腸菌株の陽性反応が出た。
 トマス・フリーデン(Thomas Frieden)CDC所長によると、コリスチンは「悪夢の細菌」の異名で知られるカルバペネム耐性腸内細菌(CRE)に対して唯一有効な抗菌薬だという。
 見つかったスーパー耐性菌が保有する遺伝子「MCR-1」は、中国や欧州でも確認されている。米国微生物学会(American Society for Microbiology)の専門誌「抗菌薬と化学療法(Antimicrobial Agents and Chemotherapy)」に掲載されたCDCの報告書は、米国での「MCR-1」初確認について「まさに全既存薬を無効にする耐性菌の出現を告げるもの」だとしている。

 ペンシルベニア州の女性患者の容体に関する詳細は報告書に記載されていない。スーパー耐性菌の中には致死性の高いものもあるが、全ての患者が死に至るわけではない。

 この女性には海外渡航歴がないため、米国外で耐性菌に感染した可能性はないとフリーデン所長は指摘。「われわれは、ポスト抗生物質時代にいる危険を冒している」と述べた。

 コリスチンは1959年からある抗菌薬で、大腸菌やサルモネラ菌、アシネトバクター属菌などによる重い感染症の治療に用いられた。腎毒性が高いことから1980年代に人体への使用が中止され、中国を中心に家畜に使われるのみとなっていたが、近年、耐性菌の出現により他の抗菌薬が効かない場合の最終選択薬として医療機関で再び使用されるようになっていた。

(c)AFP05月27日