千葉県がんセンター
診療報酬19億円返還へ
NHK6月14日
千葉県がんセンターで、腹くう鏡を使った手術での診療報酬の不正請求が発覚したことを受けて調査を行ったところ、おととしまでの5年間に、診療報酬の不正請求がおよそ1億8000万円、書類の不備などによる不適切な請求が17億円余り明らかになり、全額を返還することになりました。
千葉県がんセンターでは、腹くう鏡を使った手術を受けた患者が相次いで死亡したことをきっかけに、本来は健康保険が適用されない腹くう鏡の手術を、保険が適用されるものとして、診療報酬を不正に請求していたことが、去年、国の監査で明らかになりました。
これを受けて千葉県がんセンターが、おととしまでの5年間を対象に病院全体で調査を進めた結果、腹くう鏡の手術や手術時の麻酔などに関する診療報酬の不正請求が、合わせておよそ3万7000件1億8000万円、書類の不備などによる不適切な請求が、合わせておよそ18万8000件17億2000万円で明らかになったとしています。
このうち不正請求については、医師や職員の確認不足が主な原因で、水増し請求の意図はなかったとしています。
センターは、健康保険組合などに対し全額を自主的に返還することにしていて、病院の経営への影響はないとしています。
千葉県がんセンターの永田松夫病院長は記者会見で、「批判を真摯(しんし)に受け止めたい。改善を進め、信頼回復に努めたい」と述べました。
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千葉県がんセンター
■千葉県がんセンターは2015年4月、「都道府県がん診療連携拠点病院」および「日本肝胆膵外科学会高度技能専門医認定修練施設」認定を取り消されている。
永田松夫千葉県がんセンター病院長が同年4月、「第三者検証委員会の報告書(案)の提言等に基づき、医療安全管理体制の強化を図るなどガバナンスの確立に努め、患者さんやご家族の信頼を取り戻せるよう努めてまいります。」
■しかし、さらにガーゼ遺残事故
60歳代女性腎臓癌
2015年12月にガンセンター泌尿器科にて腎摘除術を行ない、経過は良好で術後6日で退院。
2016年2月に腹痛と嘔吐を訴えて臨時受診し、腸閉塞疑いで緊急入院。
腹部CTを撮影し、背部に異物が発見。
医療安全管理室へ報告後、臨時医療安全管理委員会開催。
異物は手術時に使用したガーゼであることが強く疑われ、患者と家族に事実を説明し謝罪。
入院7日目にガーゼ摘出術を行なうことを決定し患者と家族に説明、同意を得たうえで入院12日目に腸閉塞解除術に併せて異物除去術施行。
手術後13日目に退院。
▼原因と再発防止策▼
ガーゼ確認方法については手術室における看護手順書に決められており、手術後X線撮影による確認がなされることになっていました。しかし今回の事例は、これら手順には従っていたものの、手順書においては問題になったガーゼ確認についての詳細な取扱い方法が確定しておらず、ガーゼ確認が適切におこなわれていませんでした。
また術後X線写真を撮りながら異物を発見できずに見過ごすという問題点も挙げられました。
このような不備を改善するべく以下の再発防止策をとることといたしました。
- 1)医師は閉創を決める時点で手を止める。その際すべての種類のガーゼにつきガーゼカウントを医師と看護師によりダブルチェックで行なう。
- 閉創前のガーゼカウントの発声は執刀医または麻酔科医師が行ない確実に手を止めて実施する。
- 2)各種ガーゼはそれぞれカウント用紙を用いて使用済のガーゼを数える。
- 3)手術後のX線撮影は、全例において、全身麻酔終了直前の気管挿管チューブ抜管前にポータブルX線撮影を行なう。
- 読影は診療科医師または麻酔科医師など複数の医師で確認したうえで全身麻酔を終了する。
■千葉県がんセンター 1972年 国内3番目のがんセンターとして開設
千葉県がんセンター医療事故 腹腔鏡手術死亡問題
2008年から2014年2月までに腹腔鏡を使って肝臓やすい臓などの手術を受けた患者11人が相次いで死亡した問題を調査してきた第三者検証委員会が報告書を公表し、難しい手術を腹腔鏡を使って行ったことなど、11人のうち10人の手術で問題点が指摘された。
また、2015年5月1日、前述患者への施術も含む手術計9件について保険適用外でありながら、あたかも保険適用の手術を行ったと見せかけて診療報酬請求する事案が発覚し、厚生労働省関東信越厚生局から戒告処分を受けた。
■千葉県がんセンターを内部告発したわけ
告発医師語る、「医療の良心を守る市民の会」シンポ
2014年7月13日 m3.com
「医療の良心を守る市民の会」の7月12日のシンポジウムで、前千葉県がんセンター麻酔科医の志村福子氏は、同センターに在籍していた2011年に、医療事故と歯科医師の医科麻酔科研修について、厚生労働省への内部告発に至った経緯を「それ以外に言うところがなかった」と説明、それでも厚労省は対応せず、「内部告発しても、どこも対応できない構図」と語り、内部告発の苦労と限界、さらには医療機関が自浄作用を失った場合の対応の難しさを吐露した。