パナマまではなくケイマン諸島に63兆円

参院決算委 大門氏、消費税10%中止迫る

しんぶん赤旗2016年5月24日(火)

 「大金持ち・大企業の課税逃れを放置したまま、庶民に消費税増税など許されない」―。日本共産党の大門みきし議員は23日の参院決算委員会で、タックスヘイブン(租税回避地)を利用した課税逃れの実態を告発し、応能負担の原則に立った税制へと方向転換するよう求めました。
 急速に進む貧困と格差解消のために、課税逃れを繰り返す大企業や大金持ちを放置しておくわけにはいきません。大門氏は、世界のタックスヘイブンを使った課税逃れの金額は法人税だけでも20兆円とも30兆円ともいわれているとして、「その分、社会保障や貧困対策にまわすべき財源が失われていることになる」とただしました。安倍晋三首相は「課税の公平性を損ない、納税者の信頼を揺るがす大きな問題だ」と答弁しました。
 大門氏は、ファーストリテイリング(ユニクロ)会長兼社長の柳井正氏が、保有する株式をオランダの資産管理会社に譲渡することで7億円を超える税負担を回避していることを指摘しました。また、英領ケイマン諸島を通じた日本企業の課税逃れについてただすと、麻生太郎財務相は「(投資収益の)全てが課税されているわけではないのは事実だ」と認めました。

 そこで大門氏は、英領ケイマン諸島でもっとも多く使われている課税逃れの仕組みを告発。「信託」形式を悪用した「慈善信託(チャリタブル・トラスト)」と呼ばれる手口を詳しく解説しました。

 麻生財務相は「分析は正しい」と答弁。安倍首相は「合法であれば企業は節税行動に走る。国際的に協調して(取り締まりの)ルールをつくることが大切だ」と述べました。

 大門氏は、日本企業の課税逃れをただせば、来年4月の消費税10%への引き上げ分に匹敵する税収が見込まれるとして、「負担能力のある大企業や大金持ちに課税し、消費税10%への増税は中止すべきだ」と強調しました。


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融庁に提出された「大量保有報告書」に記載された株式売却情報をもとに大門事務所が作成



論戦ハイライト

幽霊会社で税逃れる大企業
課税すれば消費税増税必要なし

大門議員告発


 23日の参院決算委員会で、日本共産党の大門みきし議員は、子どもの貧困など貧富の格差が重大問題になっている一方、大企業などがタックスヘイブン(租税回避地)に実体のない幽霊会社(ペーパーカンパニー)をつくって課税を逃れ、社会保障などに回す財源が失われている実態を突きつけました。

 どんな方法で課税逃れをしているのか。大門氏は、ユニクロの柳井正ファーストリテイリング会長兼社長が、同社の株式531万株をオランダにつくった資産管理会社に移動し、7億円を超える課税逃れを行っていた事例を取り上げました。
 さらに大門氏は、タックスヘイブンにペーパーカンパニーをつくる理由は課税逃れとともに海外の高リスクな金融商品への証券投資を自由に行うことだと指摘しました。
 大門 日本からケイマン諸島への証券投資額は約63兆円、ペーパーカンパニーは掌握されているだけで524社だ。日本政府が、この収益すべてに課税しているのか。
 麻生太郎財務相 すべて課税されているわけではない。
 大門氏は、ケイマン諸島で最も使われている手口として、大企業が株式の「信託」という形を利用して課税を逃れる「慈善信託(チャリタブル・トラスト)」と呼ばれる仕掛けを暴露しました。
 まず、日本にある親会社がケイマン諸島につくった幽霊会社の株式を信託会社に信託します。この信託会社が名目だけ「慈善団体」への信託を宣言すれば、形式上、株式の「受益者」は「慈善団体」となります。しかし子会社は利益を「慈善団体」に渡さず、新たな投資に回します。
 大門 「信託」という形を悪用し、親会社と子会社の資本関係を切り離して課税を逃れる仕掛けだ。
 財務相 共産党にものすごくわかりやすく説明していただいた。おっしゃる通り、今の分析が正しい。
 大門 企業が稼いだ国で税金を納め、社会貢献するのが原則だ。
 安倍晋三首相 正直者がばかを見ない社会で、初めてみんなが一生懸命仕事をしようとなる。国際的なルールをつくることが大切だ。
 大門 ペーパーカンパニーにしっかり課税すれば、消費税を増税する必要がなくなるのではないか。
 首相 税の公平性が担保されて初めて一般のみなさまも自分で税金を払おうという気持ちになる。それをしっかり確保していくことが大切だ。消費税については従前から申し上げているとおりだ。
 最後に大門氏は「消費税による税収は、法人税の減税分と課税逃れによる減収の穴埋めに回っている。課税逃れを許さないのは当然で、大企業や大金持ちに税金を負担してもらうことが必要だ」と求めました。
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