くいデータ偽装 都51件「これほどとは」 自治体「情報足りない」
  

くい打ちデータ偽装問題で会見に臨む(右から)旭化成建材の前田富弘社長、旭化成の平居正仁副社長ら=13日、東京都中央区(大西正純撮影)(写真:産経新聞)

 横浜市のマンションに端を発したくい打ちデータ偽装問題は13日、旭化成建材の施工分だけで、50人以上の現場管理者が不正に関わり、少なくとも266件で偽装が行われていたことが判明した。すでに各地の自治体では旭化成側の公表前に独自調査を実施。いずれも安全性に問題ないとしているが、確認するデータ自体が偽装されているだけに、「暫定的な判断だ」との指摘も。自治体からは「詳細な情報が足りない」と不満の声が上がった。

 データ偽装が全国最多の51件に及んだ東京都。旭化成建材が都内で手がけた354件のうち、今回判明した分だけでも約15%の物件で偽装が行われたことになる。都の担当者は「かなりの数は出るだろうと覚悟はしていたが、これほどとは」と驚きを隠さない。その一方で、これまでの都の独自調査で偽装が確認された都立学校や都営住宅など都有7施設では、建物の傾きなど不具合は見つかっていないことから、「提出書類に手を加えただけで、工事自体には手抜きのないケースも十分あり得る」との見方も示す。

 都では、民間の物件で偽装が見つかった場合は元請け業者と連絡を取り合いながら安全性の確認を進める手順となっているが、「現時点では物件名や元請け業者が分からない以上、対応のしようがない」(担当者)。国土交通省が物件リストをまとめるのを待って対応する方針だ。

 26件の偽装が判明した北海道は担当者が急遽(きゅうきょ)、記者会見を開き「これまで道が確認した結果とかけ離れている」と不満を漏らした。

 道によると、この日の旭化成建材の発表直後、担当者にリストがメールで送られてきた。これまでの道の独自調査に対して同社側は道発注の工事で7件の偽装があったことを認めていたが、今回のリストにはそのうちの2件しか含まれていなかった。同社札幌支店は道の問い合わせに「本社に(7件全てについて)報告していた」と説明し、同社のコンピューター上のトラブルで集計漏れになった可能性を示したという。

 30件の偽装が確認された神奈川県建築安全課の担当者は「医療・福祉施設もあるので早く詳細が知りたい」と訴えた。一方、都道府県別の件数発表だったため、市町村は自分の自治体で何件の偽装があったかを把握できない状況になった。発端となったマンションがある横浜市の担当者も発表直後、「何の情報もない。詳しい情報がどこから来るかも分からないので待機しているしかない」とお手上げ状態だった。

 2日の会見で偽装が確認されたと発表された19件のうち、14件を占めていた愛知県では、今回7件が上積みされて計21件に。担当者は「前回多かったので、ある程度は覚悟していた」と冷
静に受け止めたが、旭化成建材の調査が終わっていないことについては「遅すぎる」と批判した。

産経新聞 11月14日(土)7時55分配信