【年明けにも再稼働の伊方原発、中央構造線走り、地震で暴走のリスク】


藤原節男へのインタビュー記事、週刊朝日20151113日号27ページ目、ワイド特集秋風のいじわる、記者:桐島瞬
 
(記事引用はじめ)
 四国電力伊方原発3号機の再稼働に中村時広愛媛県知事がついに同意し、川内原発に続く再稼働は年明け以降になる見込みだ。新規制基準に合格した原発は「安全のお墨付きをもらった」というのが政府の立場。
 しかし、本誌619日号でも指摘したように、伊方原発のわずか4㎞ほど北には日本最大の断層である中央構造線が走り、地震学者は「動かしてはいけない原発のひとつ」に挙げる。
 しかも、ひとたび大地震が起きれば、原発が暴走する恐れがあるとの指摘が専門家から出ている。
 原子炉を緊急停止するためには、制御棒を炉心に差し込んで原子炉の核反応を止めることが必要。
 伊方原発など三菱重工製の加圧水型原子炉では、上から制御棒が自重で落ちる自由落下方式を採用しているが、この方式では、大きな揺れが来ると、きちんと炉心内に入らない危険性が生じるという。
 三菱重工で原発の設計技術者として働き、その後、泊原発の検査データ改ざんを告発した「原子力ドンキホーテ」の著者、藤原節男氏(66)が言う。
 「大地震の際、墓の石柱が土台から突き上げられた勢いで飛ばされるのをイメージしてもらえればいい。つまり、直下型大地震が来ると、制御棒側と燃料集合体のある原子炉容器側に振動位相差が生じてしまうため、制御棒が収まらなくなるのです。たとえ直下型でなくても、大きな揺れで制御棒の案内管などに変形が生じる可能性だってある。いろんなリスクがあるのに、伊方3号機はこうしたことを考慮していません」
 藤原氏によれば2008年の岩手・宮城内陸地震の最大加速度は4022ガル。
 それなのに四国電力は基準地震動(伊方原発は650ガル)を大幅に上回るような実証試験をきちんと実施していないという。
 これこそが大きな問題で、制御棒の挿入が失敗すると原子炉の冷却ができなくなりメルトダウンするのは福島原発の事故で経験済みだ。
 だが、四国電力は取材に対し、国の基準に沿っているから危険性はないと主張する。
 「新規制基準では650ガルで制御棒が挿入できればよい決まりで、すでにこれは確認済みです。過去の加振試験で1560ガルまで正常に挿入できることも確かめています」(広報部)
 中央構造線がずれたら、数千ガル規模のとてつもない大地震が来ると言われ、伊方原発が大きなダメージを受けるにまちがいない。しかし、国や電力会社にその想定はない。
 万一の事故が起きた時には、福島原発事故で言い訳に使われた「想定外」が、また繰り返されるのだろうか。
(記事引用おわり)
 
藤原節男の追加コメント:
 原子力発電所の原子炉設計は、核反応を良くするための設計、中性子経済を良くするための設計を第一に考えている。耐震設計は二の次、三の次の設計条件である。このため、原子炉は、設計基準地震動ギリギリで耐えられる設計となっている。
 伊方3号機の場合は、原子炉内に全長4m、全重量約700㎏の燃料集合体が157体、約700㎏×157体=109900㎏、合計約110tonもの燃料が装荷されている。この耐震設計としては、上部炉心板と下部炉心板で燃料集合体を挟むだけであり、全長4mの中間にあるのは、燃料棒を束ねる支持格子(グリッド)だけ。大地震の時には、この合計約110tonの燃料が上下左右に揺れる。
 四国電力は、限界試験として1560ガル(1.5)まで正常に制御棒が挿入できることを確かめたと言っている。しかし、言い換えれば1560ガル(1.5)以上の大地震では燃料集合体、制御棒案内管などが変形して、正常に制御棒が挿入できないと言っているにすぎない。また、確かめたと言っている1560ガル(1.5)は水平震動であり、上下震動が加わると、1560ガル(1.5)以下でも、正常に制御棒が挿入できる保証はない。
 伊方裁判で提出した藤原意見書3(地震時の制御棒挿入時間遅れなど:甲108号証、甲228号証、甲265号証)と関連資料(被告の反論、四国電力側準備書面7および準備書面9)を、伊方弁護団の事務局、弁護士中川創太さんがドロップボックス(  https://goo.gl/iUX35x  )にまとめてくれました。ぜひ、ごらんください。


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