<くい打ち不正>旭化成、問われる管理責任
旭化成建材による建物のくい打ち施工データ改ざん問題が、拡大の一途をたどっている。親会社の旭化成は2日の記者会見で、横浜市都筑区のマンション工事のデータ改ざんに関わった現場責任者以外の担当者がデータ転用などに関与したことも認めており、旭化成建材の社内で不正が常態化していた疑いが強まった格好だ。今後は問題の実態解明に加え、経営陣の管理責任も厳しく問われることになりそうだ。
【種市房子、山口知】
◇組織的か、明言避ける
「調査の過程なので、会社ぐるみ(の不正)という表現がふさわしいか、もう少し時間をいただきたい」
同日会見した旭化成の平居正仁副社長はこう語り、組織的な不正の有無について明言を避けた。ただ、くい打ち工事のデータ転用などは北海道や東京でも次々に判明。管理体制がずさんだったことは否定しがたく、建設業界でも「問題がどこまで拡大するか、先が見えなくなった」(大手ゼネコン)との懸念が広がっている。
今回の問題を巡っては、旭化成側の対応の鈍さも目立つ。同社は10月14日、横浜市のマンションでくい打ちデータに改ざんがあったと発表。その後、くい打ちを補強するセメント量のデータでも改ざんがあったことを認めたが、同社の浅野敏雄社長が初めて記者会見したのは20日になってから。調査の進捗(しんちょく)状況を公表するとしていた30日には、「問い合わせが殺到し、発表内容をまとめられなかった」として公表を断念する不手際もあった。
旭化成が実態調査と情報公開に手間取る中、関係自治体が次々にデータ転用があった建物を発表。2日には旭化成建材がかかわった全国のくい打ち工事3040件のうち、約1割で不正が行われていた疑いがあることも判明した。国土交通省幹部は「事実であれば、組織、監督の在り方が問われる事態であり、経営陣の責任は大きい」と批判。法令順守問題に詳しい山口利昭弁護士は「これだけデータ不正が横行していたのであれば、旭化成建材の幹部も認識していた可能性がある」と指摘する。
旭化成の平居副社長は2日の会見で「関係者に迷惑をかけた経営責任は強く感じている」と語り、実態解明と再発防止にめどがついた段階で関係者の処分を行う意向も表明した。不正がなぜ見逃され、対応のどこに問題があったのか。旭化成は重い説明責任を負うことになる。
◇組織的か、明言避ける
「調査の過程なので、会社ぐるみ(の不正)という表現がふさわしいか、もう少し時間をいただきたい」
同日会見した旭化成の平居正仁副社長はこう語り、組織的な不正の有無について明言を避けた。ただ、くい打ち工事のデータ転用などは北海道や東京でも次々に判明。管理体制がずさんだったことは否定しがたく、建設業界でも「問題がどこまで拡大するか、先が見えなくなった」(大手ゼネコン)との懸念が広がっている。
今回の問題を巡っては、旭化成側の対応の鈍さも目立つ。同社は10月14日、横浜市のマンションでくい打ちデータに改ざんがあったと発表。その後、くい打ちを補強するセメント量のデータでも改ざんがあったことを認めたが、同社の浅野敏雄社長が初めて記者会見したのは20日になってから。調査の進捗(しんちょく)状況を公表するとしていた30日には、「問い合わせが殺到し、発表内容をまとめられなかった」として公表を断念する不手際もあった。
旭化成が実態調査と情報公開に手間取る中、関係自治体が次々にデータ転用があった建物を発表。2日には旭化成建材がかかわった全国のくい打ち工事3040件のうち、約1割で不正が行われていた疑いがあることも判明した。国土交通省幹部は「事実であれば、組織、監督の在り方が問われる事態であり、経営陣の責任は大きい」と批判。法令順守問題に詳しい山口利昭弁護士は「これだけデータ不正が横行していたのであれば、旭化成建材の幹部も認識していた可能性がある」と指摘する。
旭化成の平居副社長は2日の会見で「関係者に迷惑をかけた経営責任は強く感じている」と語り、実態解明と再発防止にめどがついた段階で関係者の処分を行う意向も表明した。不正がなぜ見逃され、対応のどこに問題があったのか。旭化成は重い説明責任を負うことになる。
毎日新聞 11月2日
くい打ち不正:多重下請け、構造複雑
旭化成建材による建物の施工データ改ざんは、不正が建物の危険性に直結するわけではないものの、建設業への信頼を揺るがす事態になっている。ずさんな施工を許した同社とともに、元請けや1次下請け業者の責任を問う声も出ている。
建設業法は中間搾取や工事の質低下を防ぐため、請け負った工事を一括して他社に請け負わせる「丸投げ」を禁じている。技術者配置を含む現場管理など、実質的関与が認められない場合は丸投げとみなされる。
1棟が傾いた横浜市都筑区のマンション建設は三井住友建設が受注。くい工事などを日立ハイテクノロジーズが請け負い、更にその下請けとして旭化成建材が工事を担当した。
「丸投げではないのか」。10月26日、決算発表の記者会見をした1次下請けの日立ハイテクノロジーズには、そんな質問が飛んだ。同社は「そういう認識はない。契約にそった業務を遂行している」と強調したが、現場にスタッフを配置していたかどうかは「調査中」と明言を避けた。
多くの欠陥住宅を検査してきた日本建築検査研究所代表取締役、岩山健一さん(1級建築士)は「元請けには末端の作業員まで管理監督する責任がある。1次下請けは今回の工事にどのように関わったか説明すべきだ」と主張。下請け業者が複数入る「多重下請け」について「下請けが多重に入れば入るほど、元請けが現場の状況を把握しづらく、手抜きやデータ偽装も生まれやすくなる」と指摘した。
【山田奈緒】
毎日新聞 2015年11月02日 22時12分(最終更新 11月02日 22時28分)
旭化成建材(東京都千代田区)による杭打ちデータ流用問題で、国土交通省は2日午後5時すぎ、建設業法に基づき、旭化成建材に立ち入り検査を始めた。
国交省によると、旭化成建材の杭打ち工事では横浜のマンション工事の現場責任者のほか、複数の地域で異なる担当者の施工データの流用などが判明したため、杭工事の施工や社内の管理体制に問題がないか調べる。
読売新聞 2015年11月02日