<マンション傾斜>くい施工、確認作業もずさん?
横浜市都筑区のマンションが施工不良で傾いた問題は、建設業への信頼を揺るがせている。基礎のくい打ち工事を担当した旭化成建材によると、同社の現場責任者がくい70本の施工データを改ざんし、虚偽の施工報告書が十分にチェックされないまま元請けの三井住友建設に渡っていた。「当たり前の確認作業がなされていない」。同業他社からはそんな指摘が出ている。
【写真】2センチの段差ができた棟と棟の接続部分の廊下の手すり
◇元請け側の責任、指摘も
「データを紛失したり紙が雨にぬれて使えなくなったりして、自分のミスを隠すためにやった」。現場責任者は改ざんの動機をそう話しているという。
くい打ちには8人ずつの2チームが携わり、この現場責任者は一方のチームのリーダーだった。ドリルで地盤を掘削し、電気を流して強固な地盤(支持層)を確認する。支持層に届けば電流の波形データの振幅が大きくなる。データはプリンターから紙に印字されて出てくる。
現場責任者をした経験がある別の男性によると、データの紙が雨水でぐちゃぐちゃになることはあるという。くい工事の中堅業者も「紙詰まりや紙切れもよくある」と話す。
しかし、この中堅業者は「記録を取れなければ、現場にいるゼネコンの担当者を呼び、掘削機のモーター音を聞かせるなどして確認してきた」と説明する。ドリルが支持層に当たれば、モーターの音が明らかに変わるからだ。
一方、工期に追われる下請け業者の事情を指摘する関係者もいる。くい打ち工事が実施されたのは2005年12月~06年2月。不動産価格が上昇し「ミニバブル」とも言われた07年の少し前で、建設需要は高かった。ある建設関係者は「多くの下請け業者が感じている工期厳守のプレッシャーもあったのではないか」と話す。
地盤に詳しい高橋学・立命館大教授(災害リスクマネジメント)によると、マンション周辺は鶴見川の後背湿地。6000~7000年前の縄文時代の海底に堆積(たいせき)した軟らかく湿った地層の下に約2万年前にできた谷があり、複雑な構造で基礎工事は難しいという。
慎重さが求められる現場で、ずさんな施工管理が横行していた。高橋教授は「地下は平らでない。基礎工事はより丁寧な作業が必要だ」と警鐘を鳴らす。
【写真】2センチの段差ができた棟と棟の接続部分の廊下の手すり
◇元請け側の責任、指摘も
「データを紛失したり紙が雨にぬれて使えなくなったりして、自分のミスを隠すためにやった」。現場責任者は改ざんの動機をそう話しているという。
くい打ちには8人ずつの2チームが携わり、この現場責任者は一方のチームのリーダーだった。ドリルで地盤を掘削し、電気を流して強固な地盤(支持層)を確認する。支持層に届けば電流の波形データの振幅が大きくなる。データはプリンターから紙に印字されて出てくる。
現場責任者をした経験がある別の男性によると、データの紙が雨水でぐちゃぐちゃになることはあるという。くい工事の中堅業者も「紙詰まりや紙切れもよくある」と話す。
しかし、この中堅業者は「記録を取れなければ、現場にいるゼネコンの担当者を呼び、掘削機のモーター音を聞かせるなどして確認してきた」と説明する。ドリルが支持層に当たれば、モーターの音が明らかに変わるからだ。
一方、工期に追われる下請け業者の事情を指摘する関係者もいる。くい打ち工事が実施されたのは2005年12月~06年2月。不動産価格が上昇し「ミニバブル」とも言われた07年の少し前で、建設需要は高かった。ある建設関係者は「多くの下請け業者が感じている工期厳守のプレッシャーもあったのではないか」と話す。
地盤に詳しい高橋学・立命館大教授(災害リスクマネジメント)によると、マンション周辺は鶴見川の後背湿地。6000~7000年前の縄文時代の海底に堆積(たいせき)した軟らかく湿った地層の下に約2万年前にできた谷があり、複雑な構造で基礎工事は難しいという。
慎重さが求められる現場で、ずさんな施工管理が横行していた。高橋教授は「地下は平らでない。基礎工事はより丁寧な作業が必要だ」と警鐘を鳴らす。
【福島祥、岸達也】
毎日新聞 10月24日(土)