<マンション傾斜>データ改ざんの「なぜ」 社長の説明は

◇記者会見でずさんなデータ管理の実態に質問相次ぐ

 日本有数の上場企業・旭化成の子会社、旭化成建材が起こしたマンションデータの改ざん。旭化成ブランドへの不信感は拡大しており、記者会見ではずさんなデータ管理の実態について質問が相次いだ。「今までの信頼に感謝し、今回のことを深く深く反省している」。旭化成の浅野敏雄社長は悔し涙を浮かべた。

【写真】ズレが…マンションの棟をつなぐ接続箇所

 なぜ、改ざんしたのか--。旭化成によると、くいの施工データを改ざんしたとされる旭化成建材の契約社員は、体調を崩し休んだ間に代役を務めた同僚からデータを引き継げなかったり、データの記録用紙の紙切れに気づかなかったりしたことなどで一部のデータが取得できなかったと説明。工期終盤で報告書をまとめて作成したため、一部のデータを転用してしまったとも話しているという。

 「支持層(強固な地盤)に届いていないという認識を持ってやった工事はない。不具合を隠すため転用したのではない」。社内調査で、契約社員は繰り返し、こう話しているという。

 しかし、旭化成の幹部は「実際には傾いている。何らかの欠陥、不具合があったのではないか」と話す。

 横浜市都筑区のマンションのくい打ち作業は2チームを投入。うち1チームについて、契約社員がリーダー役を務め、その下で旭化成建材の下請け企業の7人が作業に従事した。このチームが担当したくいに改ざんがあった。この点について、7人は契約社員と同様に、「支持層に当たった」と説明。ただ、旭化成の幹部は「その信ぴょう性を含め、まだまだわからない」と話し、調査が長期化する見通しを示唆した。

 マンションの西棟では、8本のくいが支持層に届かないなど不安定な状態だった。8本の打ち込み作業は、工期の終盤に集中していた。工期に問題はなかったのか。旭化成は「普通のくい打ち工事の工期だった」と答えた。

 旭化成はこの約10年にくい打ち作業を実施した約3000棟について、異常の有無を調査する方針だ。それ以前の分はどうなるのか。「既にデータが残っていない。同様の対応はできないが、不具合があれば対応したい」。幹部はそう釈明した。

 全国に広がる不信と不安。旭化成が問題視する契約社員が工事に関与したのは何棟なのか。調査はどれほど進捗(しんちょく)しているのか。幹部は「現在、調査中ですのでお答えは控えたい」と繰り返した。

【岸達也、福島梓】毎日新聞 10月20日(火)