■二重債務・・・肩にずしり 
 大水害の後遺症 「救済ぜひ」訴え悲痛 茨城県常総市の農家


 関東・東北豪雨で農業被害に遭った茨城県常総市の生産者から「二重債務」への救済を訴える声が上がり始めた。田畑や農機が濁流にのみ込まれ、生活再建・営農再開に向けて資金を借り入れる農家も多い。ただ、これまでの借入金に上積みとなるため、先が見通せない。東日本大震災で特例措置を講じただけに、関東・東北豪雨にも二重債務の軽減策を政府に強く求めている。

 「地域のことを考えると農業をやめるわけにいかないが、農機のローンも残っている。この先どうすればいいのか」

 常総市小保川で米20ヘクタールを栽培する浅野久雄さん(67)は、頭を痛める。水田だけでなく、トラクターやコンバイン、乾燥機が水没し、収穫して自宅倉庫に保管していた米25トンも水に漬かった。その米は捨てざるを得なかったが、農業共済制度の補償対象にならない。

 2014年産米は価格が安く、今年産にかけていただけに悔しさがこみ上げる。地域の担い手が復旧を急ぐためにも浅野さんは、収穫後の米を共済対象にし、二重債務への救済措置を講じるよう強く求めている。

 JA常総ひかり石下地区センターの広瀬昭一センター長は「過剰な借金を背負ってしまうと、農業をやる人がいなくなる」と懸念する。

 同市三坂町で稲45ヘクタール、麦、大豆をそれぞれ30ヘクタール栽培する飯田光良さん(59)も、豪雨で家屋や水田、乾燥機、もみすり機、色彩選別機などが漬かった。農機はローンが残っているだけに「倒産寸前だ。二重債務になれば生活基盤を失う。今後の営農に希望が持てない」と嘆く。

 東日本大震災では、二重債務対策の新法を施行。政府が出資した機構を新設し、震災前の農業経営者らの債務を買い上げるなどの措置を講じた。ただ、関東・東北豪雨には適用されない見通しだ。復興庁は「東日本大震災で過大な債務を負った事業者を支援する法律で、集中豪雨だけの被害に、この仕組みを使って支援するのは難しい」と説明する。

 神戸大学大学院の内田浩史教授は「甚大な被害が出た災害には、過剰な債務を抱えてしまった二重債権者への救済措置を講じる必要がある」と指摘する。(尾原浩子)       

  日本農業新聞 9月28日(月)