「基地は自ら差し出したものではない」 知事、沖縄の苦難の歩み切々と
スイス・ジュネーブの国連欧州本部の一角に、「艦砲ぬ喰(く)ぇー残(ぬく)さー」が響き、海上保安官による市民への暴力の映像が流れた。NGO主催の沖縄問題シンポジウムが21日開かれ、琉球処分以来の苦難の歴史、沖縄県名護市辺野古への新基地建設をめぐる現状が報告された。日米両政府による差別的扱いを世界に告発する声が続いた。
【動画あり】翁長知事が国連で声明、辺野古反対訴える
翁長雄志知事は人権理事会での声明発表に先立ち、シンポジウムに出席した。時間が2分に限られている声明と違って、15分をかけて琉球処分から説き起こした。
終始落ち着いた様子で、沖縄戦をめぐっては「県民は人間の醜さを体で感じた」と説明。「沖縄の基地は自ら差し出したものではない」という点には4度言及した。「自己決定権」も数え切れないほど繰り返した。
「基地問題の真犯人は誰なのか」。沖縄、日本、米国、そして「人類の英知」まで列挙して問い掛けた。「世界中で謎解きをしてもらって、関心を持ってほしい」と締めくくった。
シンポ主催団体の一つ、「沖縄『建白書』を実現し未来を拓(ひら)く島ぐるみ会議」は動画を用意した。キャンプ・シュワブゲート前での県警による市民の強制排除、海上保安官の暴力を示した。参加者は真剣な表情で見入った。
登壇者は「命どぅ宝」「肝ぐりさん」といったしまくとぅば、空手やエイサーなど独自の文化にも触れた。「反米でも反日でもない。基地をこれ以上造らないでほしい、というのは過大な要求ではない」と訴えた。
8月に沖縄を訪問した国連人権理事会特別報告者のビクトリア・タウリ・コープス氏もシンポに出席。「沖縄の人々には自己決定権がある。この不正義を正さないといけない」と、援護射撃した。
海外メディアもシンポを取材した。ジュネーブを拠点にするAP通信の記者は「人権理事会に何を期待するか」と質問、さらに知事の承認取り消しについても触れ、沖縄の正確な情報が伝わっていることをうかがわせた。
【ジュネーブ21日=阿部岳】
2015年9月22日 13:22 沖縄タイムス