言論・表現の自由を守る会は、第4次男女共同参画基本計画(素案)に対するパブリックコメント(下記)を提出しました。

JRFS 第4次男女共同参画基本計画(素案)」パブコメ


団体名:国連経済社会理事会特別協議資格NGO 言論・表現の自由を守る会 


意見:


1979年に自由権規約及び社会権規約を批准した日本において、女性の人権侵害と差別および貧困化が極めて深刻な事態となっており、その被害は子どもの貧困に顕著に表れています。


国際連合は、「われらの一生のうちに2度まで言語に絶する悲哀を人類に与えた戦争の惨害から将来ので差異を救い、基本的人権と人間の尊厳及び価値と男女及び大小各国の同権とに関する信念」(国際連合憲章前文)に基づいて1945年に設立されました。


この国際連合の基本法とも言うべき国際連合憲章(以下「国連憲章」と略称)は、第13で、「人権及び基本的自由を尊重するように助長奨励することについて、国際協力を達成すること」を目的のひとつとして掲げるとともに、第55条及び第56条で「人権及び基本的自由の普遍的な尊重および遵守」のためにすべての加盟国が「共同及び個別の行動をとることを誓約する」旨規定しています。


国連の主要機関の一つである経済社会理事会は、この「人権及び基本的自由の尊重および遵守を助長するため」の機関として1946年に人権委員会(Commission on Human Rights)(市民的政治的権利に関する国際規約によって設置された人権委員会と区別するため、以下「国連人権委員会」と略称)を設置し、同委員会に対し、国際権利章典(International Bill of Right)について提案を行うよう指示しました。


1947年の第4回経済社会理事会は、国連人権委員会委員長の要請に基づき、国際人権章典起草のための委員会を設け、委員国(9か国)を選出しました。この起草委員会は、事務局作成の章典概要、英国の提出した章典案、米国の提出した章典条項案、フランスの提出した宣言条項案を基礎に審議した結果、法的拘束力はないが人権保証の目標ないし基準を宣言する人権宣言と法的な拘束力を持つ人権規約の双方が必要であるとして、その草案を国連人権委員会に提出し、同宣言案は19481210日に第3回国連総会において「世界人権宣言」」(Universal Declaration ofHuman Rights)として採択されました。同宣言は、人権及び自由を尊重し確保するために、全ての人民と全ての国とが達成すべき共通の基準を定めたものです。1950年の第5回国連総会において、毎年1210日を「人権デー」(Human Rights Day)として、世界中で記念行事を行うことが決議されました。


世界人権宣言の作業を終えた国連人権委員会は次いで、人権規約の作業に取り掛かることとなり、1950年の第5回国連総会においては、世界人権宣言が理想とする「自由な人間」であるためには市民的及び政治的権利が保障されるだけでなく、欠乏からの自由、つまり経済的、社会的及び文化的権利の確保が必要であるとの観点から、規約草案にこれらのいわゆる社会権と男女平等の規定を含めることが決定されました。


1954年、国連人権委員会は、それぞれ実施措置を盛り込んだ2つの国際人権規約、すなわち「市民的及び政治的権利に関する国際規約」(以下「自由権規約」と略称)および「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」(以下「社会権規約」と略称)の草案を作成し、規約草案は、第9回総会から第21回総会において逐条ごとに審議され、19661216日、総会において全会一致で採択されました。また、これらの両規約の他に、自由権規約の実施に関して同規約に掲げる権利の侵害について締約国の個人が行ったつうほうをこの規約によってもうけられた人権委員会が審議する制度について規定した「市民的及び政治的権利に関する選択議定書」(以下「選択議定書」と略称)※を採択しました。


197613日に社会権規約が、同年323日に自由権規約及び選択議定書が効力を生じています。



第一次に次ぎ第二次世界大戦においてもアジアの侵略国である日本は、19561218日、国際連合への加盟が承認されました。日本国憲法前文で「政府の行為によって再び戦争の参加がおこることのないようにすることを決意しここに主権が国民に存することを宣言しこの憲法を確定する」、憲法第9条で戦争放棄、戦力および交戦権の否認」、憲法第98条第2項「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする」と規定し、国連創設後11年目にようやく認められたのです。


しかし、「男女共同参画社会基本法」は、法的規範性を持つ市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約、B規約)第2条及び第3条に基づいていません。


女性の人権を保障し、女性差別をなくすためには、憲法前文および憲法第13条「個人の尊重・幸福追求権」及び97条「基本的人権の本質」を踏まえ、憲法第98条第2項「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする」としている日本が批准済の国際人権条約(自由権規約・社会権規約・拷問等禁止条約・子どもの権利条約・女性差別撤廃条約等)で保障している国際人権の水準の法律の見直しとそれに基づく計画立案が不可欠であり大変急がれています。


その実現のためには、江戸時代から続く日本の人権鎖国政策を解き、法の支配を実現し、三権分立を実現することが不可欠です。それを実現するためには、日本が批准済みの国際人権条約に備わっている個人通報制度の批准について、ただちに閣議決定し、批准手続きを行い人類普遍の人権の鎖国を解くことが不可欠です。


さらに、憲法前文冒頭の「日本国民は正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し」と謳っている『正当な選挙』を実現すべく、まず日本の市民の参政権を確立することが不可欠です。 


法律を決めることができるのは国会議員です。

しかし、戦後日本国憲法制定後においても、戦前からの弾圧規定である公職選挙法の文書配布と戸別訪問禁止規定と、1478年に米国の弾圧法であるハッチ法を手本にした国家公務員法第102条(人事院規則14-7、国家公務員法110条)および公職選挙法の下で定めた選挙における多額の供託金制度によって、日本市民の参政権は未だ確立していません。弾圧規定と貧困な市民を候補者から排除する差別規定の法律を破棄して市民の参政権を確立させ、法律を決める国会議員を正当な選挙で選ぶことを保障することは極めて重要であり速やかに実現することは可能です。



個人通報制度(Individual communication procedures)


自由権規約などの人権条約に反する人権侵害を受けた人が、国際機関へ直接救済を申し立てる制度です。


選択議定書は、自由権規約とセットになった条約で、自由権規約で保障された権利を侵害された人が、国内で裁判などの手を尽くしても権利が回復されない場合に、国連の自由権規約委員会等へ直接救済の申立てができる手続(=個人通報制度)を定めています。


 日本は、自由権規約や女性差別撤廃条約及び子どもの権利条約、拷問等禁止条約等多くの人権条約を批准しましたが、選択議定書はまだ批准していないので、日本における人権侵害の被害者には、この個人通報が認められていません。


主要な人権諸条約(human rights treaties)の多くには個人通報制度(individualcommunication procedures)が設けられています。個人通報制度により、条約上規定された人権が侵害され、国内で救済されなかった場合に、条約上の人権を侵害された個人が、国連の人権条約機関(human rights treaty bodies)に対して申立をして救済を求めることができます。
 この個人通報制度は人権条約を批准すれば自動的に利用できるものではなく、締約国が個人通報制度を受け入れる受諾宣言(declarations:閣議決定すればその日のうちに批准手続きが完了する)や選択議定書(optional protocols)の批准(ratification:国会での手続きが必要))をすることが条件となっていますが、日本政府は未だどの人権条約についても個人通報制度を受け入れていません。


1979昭和54年)12月18には「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」(以下「女性差別撤廃条約」と略称)を国際連合34回総会で採択し、1981に発効しています。


前文および30か条から成り、政治的・経済的・社会的・文化的・市民的その他のあらゆる分野における男女同権を達成するために教育の分野も含めて、いずれかの性別の優位や性役割に由来するステレオタイプの撤廃など必要な措置を定めています。この条約の特徴は、法令上だけでなく、事実上、慣行上の差別も、条約の定める差別に含まれると規定しています。 


「女性差別撤廃条約」においても、「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」の締約国の管轄下にある個人または集団が、国による条約違反によって被害を受けた場合、国際連合の女子差別撤廃委員会にたいして通報できる個人通報制度すなわち、


女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の選択議定書Optional Protocol to the Convention on the Elimination of All Formsof Discrimination against Women。略称: 女子差別撤廃条約選択議定書)も定めています。


言論・表現の自由を守る会も日本政府に対し、人権諸条約上の個人通報制度を速やかに受け入れるよう求め20104月、外務省人権人道課に条約履行室の設置を実現し、即時批准めざし活動を強めています。


当会のこの提案を、すみやかに安倍晋三総理大臣に届けてください。