■毎日新聞 8月15日(土)23時24分配信

<中国>天津爆発の死者104人に 断続的に小規模爆発続く

【北京・工藤哲】中国天津市の経済技術開発区「浜海新区」で12日深夜に起きた爆発で、国営新華社通信は15日、死者が104人に増えたと報じた。爆発現場付近では有毒物質のシアン化ナトリウム700トンが確認され、その特殊処理作業などのため、現場から3キロ以内の住民らが退去を命じられたとも伝えられている。現在も付近では断続的に小規模の爆発が起きており、救助作業や原因調査は難航している模様だ。

 現場付近では15日、警官が「(現場付近から)3キロ以内に立ち入ったり、車を停車させたりしてはならない」と呼びかけ、迅速な退去を求めた。現地本部も3キロ以上離れた場所に移ったという。地元のボランティアらもマスクを着けて移動した。

 新華社によると、地元当局は15日の記者会見で、現場の倉庫付近のコンテナ集積地などにはシアン化ナトリウムなど15種類以上の化学物質があるが、未登記のコンテナもあるため、正確な量などの把握には時間がかかるとの見方を示した。

 爆発した倉庫の運営企業「瑞海公司」がここ1カ月間で輸出した物質の中には、シアン化ナトリウムが比較的多く含まれていた。当局は貨物の所有者と連絡を取り、事態の把握を急いでいる。現場では、シアン化ナトリウムが拡散する恐れがあるため、消火剤などで毒性を弱める作業を進めている。

 中国では大規模事故が発生すると、李克強首相が現地で指揮をとることが多いが、現時点では劉延東副首相(中国共産党政治局委員)がこの役を務めている。当局の当初見通しより被害が拡大している模様で、指導部に対する住民の反発が強まる可能性もある。




産経新聞 8月15日(土)20時36分配信

天津倉庫爆発 世界4位の貿易港が機能不全…中国経済にダメージ

【上海=河崎真澄】中国天津市で発生した大規模爆発で、市当局は15日、有害な化学物質が流出した恐れがあるとして、付近住民や消防や警察などの救援部隊に爆発現場の半径3キロ以内から緊急に退避するよう命じた。当局の発表によると、同日午後までに確認された死者は85人に上り、入院した721人のうち33人が重体。近接する天津港は世界4位の貨物取扱量を誇るが、爆発の影響で機能不全の状態に陥るなど、景気減速が続く中国経済にもマイナスの影響を与えかねない情勢となってきた。

 15日の中国国営新華社通信などによると、現場周辺では基準を大きく超える有害なシアン化合物などが検出された。避難所となっている現場付近の小学校からは同日、住民らがマスクを着用して避難を始めた。付近住民の間には二次災害への不安が広がっている。

 当局は14日の段階で火災はほぼ鎮火したと発表したが、15日も複数回の爆発音が聞こえ、黒煙が立ち上った。防護服にマスクを着用した軍の化学防護部隊が入り、現場に残留する有害物質を処理している。

 原因究明や事故責任の所在は不明確なままで、インターネット上では、爆発を起こした企業が中国共産党の元幹部や天津市当局と密接な関係にあったとの情報が流れた。当局が危険物の管理などを十分に監督しなかった恐れがある。また、新疆ウイグル自治区の独立派が爆破に関与したなどとする未確認情報まで飛び交っている。

 爆発の影響で、現場近くでは数千台の輸入車などが破損した。被害は数億元(数十億~百数十億円)に上るほか、1700以上の周辺企業に影響が出ている。税関業務も止まり、荷揚げが中断している。

 天津港は大連や上海、香港などと並ぶ中国有数の輸出入の拠点。天津は今年4月、上海に続いて「自由貿易試験区」の1つに指定されたばかりだった。「港湾機能の停止が長引けば、中国の輸出不振に追い打ちをかける懸念もある」(物流大手)といった警戒感が広がっている。