毎日新聞 8月1日

<フェリー火災>「もくもくと煙、慌てて逃げた」乗客が証言

北海道の苫小牧港沖で「さんふらわあ だいせつ」

 「船内でもくもくと煙が上がり、慌てて逃げてきた」--。31日午後5時40分ごろ、北海道苫小牧市の苫小牧港沖約55キロの太平洋上を航行中のカーフェリー「さんふらわあ だいせつ」(1万1401トン、全長190メートル、旅客定員154人)で発生した火災。「さんふらわあ だいせつ」の乗客たちは、火災が発生した際の緊迫した状況について証言した。

 札幌市のトラック運転手、小川卓也さん(24)は「『みなさん集まってください』という船内アナウンスがあり、乗客が甲板に集まった。点呼を取った後、子供とお年寄りから先に救助船に乗り移った」と話した。同市の別のトラック運転手の男性(38)は「みんな慌てることなく、落ち着いて行動していた」と振り返った。

 火災があったのは商船三井フェリー(東京都港区)が定期運航するカーフェリー。
 同社によると、船は3層構造で、2層目のトラックなどの積載スペースから出火した。
 フェリーは航行を停止してスプリンクラーで消火しようとしたが消えなかったという。

 到着予定の苫小牧西港フェリーターミナルの商船三井フェリーの窓口では運航状況を問い合わせる乗客らの対応に追われた。千葉県の自宅に帰るため、折り返し大洗港に向かう便に乗る予定だった上野美津子さん(65)は、夫と1週間の北海道旅行を終え、港に向かう途中で火災を知った。「明日の便のチケットは取れたが、今夜は苫小牧市内でもう1泊することになった。まさかこんなことになるとは。3日から仕事があるので困っている」と困惑気味に話した。

 同ターミナルにある商船三井フェリー苫小牧支店では、報道陣の対応に当たった永宮達矢支店長は「情報が錯綜(さくそう)している」と硬い表情。会議室を報道陣に開放し、東京本社で行われている記者会見の模様をテレビ会議システムで中継した。

 「さんふらわあ だいせつ」は茨城県大洗町大洗港を7月31日午前1時45分に出港し、苫小牧市の苫小牧港には同日午後7時45分に到着予定だった。フェリーは乗用車62台、大型トラック160台を積載可能だった。