毎日新聞 2015年06月07日 13時48分(最終更新 06月08日 08時22分)

  ニホンライチョウ:人工繁殖目指し卵採取 乗鞍岳・長野

 国の特別天然記念物で絶滅が危ぶまれる「ニホンライチョウ」を人工繁殖させるため、環境省の調査隊は5日、生息地の北アルプス乗鞍岳(長野・岐阜県境)で卵を採取した。亜種の繁殖実績がある東京の上野動物園に送り、国内初となる野生の卵からの人工ふ化、繁殖に取り組む。

 同省によると、調査は1日に開始。雌のライチョウを観察し、これまでに山頂付近のハイマツの茂み6カ所の巣で、それぞれ卵2〜6個を確認した。5日はこのうち、産卵後間もない計5個の卵を採取した。15日まで滞在し、採卵した巣に影響がないか確認する。6月下旬には、ふ化させやすいとされる抱卵期の卵も採取の予定。

 ライチョウはキツネなど捕食者の生息域拡大やニホンジカによる高山植物の食害の影響で、1980年代の3000羽から2000羽以下にまで減少。12年版の同省レッドリストでは絶滅危惧1B類に指定された。人工繁殖は12年に策定された同省の保護計画の一環で、増やしたライチョウを将来的には野生に戻したい考えだ。

 調査隊の中村浩志・信州大名誉教授(鳥類生態学)は「(野生絶滅した)トキとコウノトリの教訓は(保護繁殖に)手を付けるのが遅すぎたこと。ライチョウはまだ野生に多く生息しており、今が保護に取り組むタイミングだ」と話した。【稲垣衆史】


ライチョウが卵を産んだ巣を調べる中村浩志・信州大名誉教授(中央)ら=乗鞍岳山頂付近で5日午後1時1分、代表撮影



  毎日新聞 2015年05月27日 東京朝刊

 ライチョウ:来月採卵 環境省、人工繁殖スタート

 絶滅の危機にある国の特別天然記念物「ニホンライチョウ」の人工飼育に向け、環境省は6月1日から生息地の乗鞍岳(長野、岐阜)で巣の調査や卵の採取を始める。近縁種の繁殖実績がある東京の上野動物園と富山市ファミリーパークで人工ふ化させ、繁殖に取り組む。将来的には、増やしたライチョウを野生に戻したい考えだ。

 ライチョウは北アルプスや南アルプスなどの高山帯に生息。ハイマツの根元などにくぼみを作り巣にする。6月に2日に1個のペースで平均計6個の卵を産み、すべての卵を産み終えてから抱卵を始めるという。計画によると、産卵期と抱卵期にそれぞれ5個ずつ採卵。ヒナが順調に成長すれば、来年度から繁殖に取り組む。

 ライチョウは1980年代に約3000羽いたが、2000羽以下にまで減少したと推定される。原因は捕食者のキツネやカラスの生息域拡大▽ニホンジカの侵入による餌の高山植物の食害−−などが挙げられる。同省野生生物課の安田直人・希少種保全推進室長は「トキと比べ、それなりに個体数がいる中で人工飼育を始める。野生復帰に向け、計画的に取り組みたい」と話す。

 ライチョウの飼育・繁殖は、長野県の大町山岳博物館で実績があるが、2004年に最後の1羽が死んだ。国主導の人工飼育・繁殖は初めて。

【伊藤奈々恵】


2015/2/21 11:39
 ライチョウを人工飼育 環境省、絶滅回避へ6月に卵採集     

  環境省は21日までに、国の特別天然記念物「ニホンライチョウ」の絶滅を回避するため、人工飼育を始める方針を明らかにした。日本動物園水族館協会と連携し、6月の繁殖期に生息地の乗鞍岳(長野、岐阜)でふ化前の卵10個を採集する。国がライチョウの飼育に取り組むのは初めて。

 専門家による検討会で環境省が計画を示し、了承された。6月上旬の産卵期と同月下旬の抱卵期にそれぞれ5個ずつ卵を採集、上野動物園(東京)と富山市ファミリーパークに運び、ふ化後は人工餌で飼育する。ひなが順調に育てば来年から繁殖に取り組み、将来的には野生復帰を目指す。

 ライチョウは南北アルプスなど本州中部の高山帯に生息する絶滅危惧種。環境省によると、つがいの雌は6月上旬に4~7個の卵を産み、約3週間でひなが誕生する。野生ではふ化後1カ月間の死亡率が高い。

 1980年代には約3千羽いたが、環境変化や外敵の増加で減少した。現在は推定で2千羽弱とされる。特に誕生直後、キツネなどによって捕食されることが問題になっていた。

 国内でニホンライチョウを飼育する施設はなく、長野市茶臼山動物園など6施設で近縁亜種を研究飼育している。過去には、長野県大町市の大町山岳博物館がニホンライチョウを飼育したことがある。

〔共同〕