主要活断層の評価結果




主な海溝型地震の評価結果






関口 威人 :ジャーナリスト
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関口 威人せきぐち たけと
ジャーナリスト
中日新聞記者を経て2008年からフリー。名古屋を拠点に地方の目線で環境、防災、科学技術などの諸問題を追い掛けるジャーナリスト。1973年横浜市生まれ、早稲田大学大学院理工学研究科修了。
2014年09月28日

不遇の山、御嶽山が突き付ける災害リスク

登山客は前兆なく遭難、重なる広島の悲劇

不遇の山――。北アルプスの火山を長年、研究してきた産業技術総合研究所の中野俊・上級主任研究員は岐阜・長野県境の御嶽山をこう呼び表してきた。
標高3000メートルを超え、日本では富士山に次ぐ高さの火山であるにもかかわらず、国立公園にも国定公園にも指定されていない。日本列島の真ん中に位置し、古代から信仰の対象にされてきた霊峰にしては寂しい扱いだという意味での「不遇」。ただし、それは「リゾート開発には都合がよい」と中野研究員は公言していた。長野県側にあった3つの村で戦後、競うようにスキー場開発が進められ、バブル期にはそれが岐阜県にも拡大。山肌のゲレンデやゴンドラで「御嶽山はいたるところ傷だらけになっている」と嘆いていたのだ。
35年ぶりの規模となった、今回の御嶽山の噴火。秋晴れの紅葉を楽しみに山頂を訪れていた200人余りの登山客にとっては、まさに不遇、不運の瞬間であったろう。

常時監視をしていたにもかかわらず・・・

気象庁は地震計や傾斜計、空振計、GPS、望遠カメラなどあらゆる機器を使って火山活動を監視していた。半月ほど前からは火山性地震の増加をとらえている。しかし、入山規制に至るまでの警戒を呼び掛けることはできなかった。
噴火の12分前には火山性微動を観測したというが、登山客は何の前触れもなく立ち上がった噴煙を見上げ、なすすべもなく黒い火山灰に巻き込まれるしかなかった。


2014年09月28日

30数人が心肺停止と発表されているこの事態は、50人、60人と行方不明者数が増えていった広島の土砂災害の衝撃と重なる。
いくら精密な観測網が整備されようとも、山頂からほぼリアルタイムで映像が送られる時代になっても、予測できない災害の危険地帯に人間が自ら踏み込む限り、リスクはなくならない。

開発の見直し必至、地震にも要警戒




九州の火山噴火リスクを軽視していると指摘されたまま再稼働に走る川内原発。2.5兆円もの経済被害が想定される富士山噴火…。
われわれが見直すべき 開発や災害リスクは山積している。御嶽山の半径50キロメートルにはリニア中央新幹線の計画路線がある。今回の降灰はすでにその距離を超えている。地下化やフードによってどこまで影響を防ぎきれるのかも、再検証が迫られるだろう。
気象庁などは今のところ、より大規模なマグマ性の噴火につながるとは見ていない。一方で1979年の水蒸気爆発の後、1984年に発生したマグニチュード6.8の「長野県西部地震」は御嶽山噴火の群発地震の発生域で起きており、名古屋大学減災連携研究センターの木股文昭特任教授らはこれらを連続的な現象として見ている。「御嶽崩れ」と称される大規模な斜面崩壊では、ふもとの住民ら29人が土石流に巻きこまれて犠牲になった。こうした過去を振り返って、今後も十分な警戒が必要だ。