労働情報【沖縄現地レポート】辺野古新基地建設を強行
 ◆ 24時間の住民監視職員の負荷も限界
米倉外昭(teamrodojoho)

 日本政府が新基地建設を強行している沖縄県名護市辺野古で、国家公務員たちの悲痛な叫びが上がつている。
 キャンプ・シュワブのゲート前での反対住民らの監視・抗議行動
は、深夜の資材搬入などに対処するため24時間態勢となった。
 これに対応するとして、沖縄総合事務局北部国道事務所職員は2月26日から24時間態勢の監視
を命じられた。
 総合事務局開発建設労働組合(開建労
)によると、午前9時、午後3時、午後9時交代の3交代制で、国道事務所に4~5人、現場に4~5人が常時張り付き、30分ごとに資料を作成し総合事務局経由で国土交通省に送らされているという。


 しかも、本省から災害時などに派遣されるリエゾン(情報連絡員)が現場、国道事務所、総合事務局に2人ずつ配置されている。現場は監視役と受け止めている。
 開建労が加盟する国家公務員労働組合沖縄県協議会(沖縄県国公)の東浜邦章事務局長には「現場に行きたくない」「参っている」
という声が届く。
 抗議の住民から「おまえら、手先か」などの声がぶつけられ、新聞などに顔が載った職員が子どもから「お父さんは県民の敵になったのか」
と言われてショックを受けた例もある。
 そのような精神的プレッシャーの中で現場に行かされてきた職員が、さらに長時間深夜労働を強いられている。

 24時間態勢の業務命令に対し、開建労は2月27日付で同局開発建設部の小平田浩司部長に「辺野古座り込み行動への過剰な体制解除について」と題する申し入れ文書を提出した。
 「大多数の県民の思いを踏みにじり、沖縄本島東海岸で最も自然豊かで美しい辺野古の自然環境を破壊する暴挙に沖縄県民として憤りと怒りを感じている」
 「『道路管理者』としての対応を超えた過剰な警戒対応へ開発建設部の多くの職員を動員し県民同土の対立をあおるような行為は、県民の安全・安心を守る役割を担う行政機関として異常な事態といえる」
 「私たち公務員は、国民全体の奉仕者であり、現場に派遣されている職員は、気持ちとは裏腹の罵声を浴びせられ県民同士の対立現場に体調や気持ちが落ち着かない状況で派遣されている」
 この申し入れが無視された形のまま、3月4日、人員増強のため沖縄本島内のすべての職場に北部国道事務所との併任が発令された。
 3月13日には2度目の申し入れを沖縄県国公として河合正保総合事務局長宛に行ったほか、基地建設に反対している沖縄関係国会議員に状況の説明と支援を求めた。

 東浜事務局長は「年度末で本来業務が忙しい時期なのに、通常の打ち合わせなどほとんどできず、職員は疲れ切っている。職場に笑顔の会話もない。残業が月100時間を超えている人もいると思う。1番大変なのは精神面だ」と話す。
 そして、「道路管理者として指導はやらないといけないが、通常は週1回とか月1回とかの穏やかな対応だ。ところが辺野古では、現場に張り付いてのぼり旗やテントの増減や位置確認だけでなく、集会で誰が何をしゃべったかや、のぼりの文言も写真付きで報告させている。まるで公安のようなことをさせている」と行きすぎを批判した。
 政府が工事を続ける限り、この状態は続くだろう。県国公として、人事院事務所に健康面での対応を求めることも検討中だ。
 「強制排除ということになると、けがの心配もある」と、東浜事務局長は表情を曇らせた。
 基地反対の思いは同じ地元住民に業務命令で対峙させて耐えがたい精神的苦痛を与える上に、監視役まで配置して過重労働を強いる。これが民主国家で行われていいことか。工事とともに、拷問のような業務もやめさせるべきだ。

『労働情報 908号』(2015/4/1)


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