政府は防衛省の外局「防衛装備庁」を、10月に新設する方針だ。
従来、陸海空各自衛隊で個別管理していた武器を一元管理し、調達コストを抑制するという。同省設置法改正案を国会に提出した。
装備庁には調達部門だけでなく、研究開発を担う技術戦略部や、他国との交渉窓口となる装備政策部も置かれる。
安倍晋三政権は武器輸出を原則禁じた「武器輸出三原則」を撤廃し、容認に転じた。装備庁設置により、官民一体となった武器の輸出や国際共同開発がなし崩しに拡大する恐れがある。
巨額の予算権限を握るため業者との癒着が生じやすく、談合など不正の温床にもなりかねない。
コスト抑制は必要だが、現行組織でも運用の改善などで対応できるはずだ。武器輸出窓口となる装備庁の設置は認められない。
装備庁は防衛省経理装備局の装備グループ、陸海空各自衛隊の調達部門、技術研究本部などを統合し、約1800人体制となる。
調達と研究を一元化した組織をつくり、武器輸出や他国との共同開発を進めることは自民党国防族や防衛産業にとって長年の悲願だったが、武器輸出三原則が壁になっていた。
安倍政権が同原則を撤廃して新たに定めた「防衛装備移転三原則」は輸出や共同開発に幅広く道を開く内容だ。紛争当事国への輸出は禁じているものの抜け道が多く、イスラエルへの輸出もできる。
装備庁が防衛産業による武器輸出や国際共同開発を後押しするようになれば、日本の武器や技術が国際紛争を助長する可能性は格段に高まる。
一方、装備庁が発足すると、年間約2兆円という巨額の予算権限を持つことになる。
武器調達をめぐっては、これまで汚職や談合が繰り返され、2006年には旧防衛施設庁で官製談合事件が起きた。これを受け07年に同庁が解体され、防衛省に統合された経緯がある。
防衛省は、装備庁の内部に25人規模の監察監査・評価組織を置き、既存の防衛省防衛監察本部と二重にチェックするという。逆に言えば、それだけ腐敗しやすい組織だということだ。
防衛省設置法改正案には、文民統制の一環として防衛官僚を自衛官より優位に置く「文官統制」規定の廃止も盛り込まれている。
装備庁新設と合わせ、あまりにも問題が多い法案だ。やはり廃案にするのが妥当である。