AFP=時事 12月27日(土)16時46分配信

ルーブル暴落、ロシア脱出計る外国人たち

【AFP=時事】ロシアの通貨ルーブル暴落の衝撃は、ロシア国民だけではなく、同国に暮らす外国人たちにも広がっている。黄金郷から金融ブラックホールへと化した首都モスクワ(Moscow)では、外国人労働者たちが国外への脱出時期を計りはじめている。

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 出国したがっている外国人の数は定かではないし、実際に外国人が大挙してロシアから脱出していることを示す具体的な事例もない。それでも先週、ルーブルが数日間で25%も急落したことを受けて、そろそろロシアを去る潮時と考え始めたと明かす外国人は少なくない。

 多少は持ち直したもののルーブルは今年に入って対ドル、対ユーロとも40%も下げており、多くの人々が財政的に不安定な状況に追い込まれている。

■半年余りで収入半減

 ジョイさん(28)は今年4月、子ども3人をフィリピン・マニラ(Manila)に残してロシアに出稼ぎに来た。モスクワの富裕層向けアパートで、清掃スタッフとして働く。賃金は4時間で1500ルーブル。

「こちらに来た当初は、換算すれば42ドル(約5000円)くらいになった。今は、同じ仕事なのにせいぜい20ドル(約2400円)程度にしかならない」とジョイさん。

 家族を支えるため、ジョイさんは収入の3分の2をフィリピンに仕送りしていた。長男の進学費用と、夫がバイクタクシーの仕事に就くためのオートバイ購入資金を貯めるのが、出稼ぎの目標だった。両親の家の屋根の修繕もしたいと考えていたが、もはや、かなわぬ夢だ。

「今では家族の生活費さえ、満足に仕送りできない。でも、両親は状況を理解してくれなくて、私が以前より真面目に働かなくなったと思っている。心苦しいです」

 とはいえ、賃金が支払われているだけジョイさんは幸運なほうかもしれない。多くの移民労働者たち、とりわけ旧ソビエト連邦圏出身の建設作業員らの間では、給料が全く支払われない例も増えている。

 だが、帰国しようにも航空運賃はドル建てだ。「航空券はどんどん高騰しているのに、私の稼ぎは減る一方。すぐにでも出国を決意しないと、モスクワに取り残されてしまう」とジョイさんは話した。


■「去るときが来た」

 一方、30代のフランス人トレーダー、オリビエさんは、9月末にモスクワにあるロシアの銀行に転職したことを後悔している。転職の条件として提示された給与と賞与の額面は、申し分ないものだった。

「こいつは良い機会だ、と自分に言い聞かせたんだ。4年間ずっと成長し続けている活気に満ちた市場で活躍できるぞ、停滞しきった欧州におさらばするのも悪くないってね」

 しかし、オリビエさんの着任後わずか2週間で、高額の給与も多額のボーナスも幻想となってしまった。ルーブル建ての給与の価値は、対ユーロで瞬く間に下がってしまったのだ。

 2桁インフレで定期昇給分が相殺される可能性は想定していたかもしれないオリビエさんも、「毎日がブラックマンデーなんて事態は全く予期していなかった」と悲鳴を上げる。

「ロシア人が手持ちのルーブルを丸ごと売却しているのは確かだ。その国の人たちが自国の通貨を見捨てたら、外国人にとっては去るときが来たということだ」。そう語るオリビエさんは既に、帰国便を手配する用意があるという。

「帰国するのは僕が最初だろう。僕は独身で、子どももいないから。でも、他の人たちが出国し始めるのも、そう遠い先の話ではないと思うよ」 【翻訳編集】 AFPBB News