2010年5月、子どもの権利委員会での子どもの権利条約第3回日本政府報告書審査において、同時に武力紛争に関する選択議定書と、児童ポルノ・児童売買に関する子どもの権利条約に関する選択議定書の第1回日本政府報告書審査も行われました。
この審査を傍聴して驚いたのは、自衛隊は army =軍隊として審査を受け、これに対する政府の反論はなく、自衛隊が憲法9条に明確に違反している軍隊であることを、日本政府は国連では認めていました。
この時に、こどもの権利委員会が『武力紛争に関する選択議定書』の審査の結果日本政府に対して勧告した内容の抜粋を掲載します。
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II. 実施に関する一般的措置
広報及び研修
6.人権法及び国際人道法の普及に関する事業が軍隊に対し実施されているとの締約国の情報に留意しつつ,委員会は,締約国が,通常の訓練の一環として,又は国際平和維持活動に参加する際の準備において,自衛隊に対し,選択議定書の原則及び規定に関する訓練を提供していないことに懸念をもって留意する。
委員会はまた,徴兵され,又は敵対行為において使用された可能性のある児童とともに活動する職業従事者のうち一部の職種に属する者が十分な研修を受けていないこと,及び,選択議定書に関する公衆一般の意識が低いことを懸念する。
7.委員会は,選択議定書第6条2に照らし,締約国に対し以下を勧告する;
(a) 議定書の原則及び規定が一般公衆及び政府職員に対して広く周知されることを確保すること,
(b) 全ての軍事要員が選択議定書の原則及び規定に関する訓練を受けることを確保すること,
(c) 徴兵され,又は敵対行為において使用された可能性のある児童とともに活動するすべての職業従事者,特に教師,医療従事者,ソーシャルワーカー,警察官,弁護士,裁判官及びジャーナリストを対象として,選択議定書の規定に関する体系的な意識啓発,教育及び研修を発展させること。
データ
8.委員会は,締約国が,同伴者の有無別の難民児童の人数,及び,締約国の管轄権内にいるこ
のような児童のうち徴兵され又は敵対行為において使用された者の人数に関するデータを収集
していないことを遺憾に思う。委員会はまた,自衛隊生徒の応募者の社会経済的背景に関する
情報が存在しないことにも留意する。
8.委員会は,締約国が,同伴者の有無別の難民児童の人数,及び,締約国の管轄権内にいるこ
のような児童のうち徴兵され又は敵対行為において使用された者の人数に関するデータを収集
していないことを遺憾に思う。委員会はまた,自衛隊生徒の応募者の社会経済的背景に関する
情報が存在しないことにも留意する。
9.委員会は,締約国に対し,根本的原因を特定し,かつ予防措置を整える目的で,締約国の管
轄権内にいる児童のうち徴兵され又は敵対行為において使用された者を特定し,かつ登録する
ための中央データシステムを整備するよう促す。
委員会はまた,締約国が,そのような慣習の被害を受けた難民児童及び庇護申請児童に関する,年齢,性別及び出身国ごとに分類されたデータが入手できるよう確保することを勧告する。委員会は,締約国に対し,条約に基づく次回の定期報告において,自衛隊生徒として採用された者の社会経済的背景に関する情報を提供するよう求める。
III.予防
人権教育及び平和教育
10.委員会は,平和教育との関連も含め,あらゆる段階のあらゆる学校のカリキュラムで締約国が提供している具体的な人権教育についての詳しい情報が存在しないことに,懸念をもって留意する。
11.委員会は,締約国が,すべての学校児童を対象とする人権教育,特に,平和教育の提供を確保するとともに,これらのテーマを児童の教育に含めることについて教職員を研修するよう勧告する。
IV. 禁止及び関連事項
立法措置
しかしながら,委員会は,軍隊もしくは武装集団への児童の徴兵又は敵対行為における児童の使用を明示的に犯罪化した法律が存在せず,かつ,敵対行為の直接参加の定義も存在しないことに対し,引き続き懸念する。
13. 児童の徴兵及び敵対行為における児童の使用を防止するための国際的な対策をさらに強化するため,委員会は,締約国に対し,以下の措置をとるよう促す;
(a) 刑法を改正し,選択議定書に違反して児童を軍隊又は武装集団に徴募すること,及び敵対行為において児童を使用することを明示的に犯罪化する規定を含めること,
(b) 軍(自衛隊)のすべての規則,教範その他の軍事的指示が選択議定書の規定に適合することを確保すること。
国家管轄権
15. 委員会は,選択議定書における犯罪を構成する行為についての国家管轄権の域外適用を認めるため,締約国が国内法を見直すよう勧告する。
V. 保護,回復及び統合
身体的・心理的回復に向けた支援
17. 委員会は,締約国が,特に,以下の措置を講じることにより,来日した庇護申請児童及び難民児童のうち,国外で徴兵され又は敵対行為において使用された可能性がある者に保護を提供するよう勧告する。
(a) 難民児童及び庇護申請児童のうち,徴兵され又は敵対行為において使用された可能性がある者を,可能な限り早期に特定すること。
(b) このような児童の状況について慎重に評価するとともに,選択議定書第6条3に従い,その身体的・心理的な回復及び社会統合のための,児童に配慮した分野横断的な支援を提供すること。
(c) 移民担当機関内に特別に訓練を受けた職員が配置されることを確保するとともに,児童の送還に関わる意思決定プロセスにおいて児童の最善の利益及びノン・ルフールマンの原則が主として考慮されることを確保すること。この関連で,委員会は,締約国が,出身国外にあって保護者が同伴していない児童及び養育者から分離された児童の取扱いに関する委員会の一般的意見No.6(2005年),特にパラ54~60に留意するよう勧告する。
VI. フォローアップ及び広報
19. 委員会は,選択議定書並びにその実施及び監視に関する認識を促進する目的で,締約国が提出した第1回報告書及び委員会が採択した最終見解を,公衆一般及び特に児童が広く入手できるようにするよう勧告する。
VII. 次回報告
20. 第8条2に基づき,委員会は,締約国に対し,選択議定書及びこの最終見解の実施に関する更なる情報を,条約第44条に従って,条約に基づく第4回・第5回をあわせた定期報告(提出期限は2016年5月21日)に記載するよう要請する。