東京新聞 2014年6月19日 朝刊
イラク情勢悪化 影響続々 ガソリン高騰
資源エネルギー庁が十八日発表したレギュラーガソリンの一リットル当たり店頭価格(十六日時点)は、前週比〇・四円高い一六七・〇円と五年九カ月ぶりの高値を付けた。値上がりは八週連続で、三月末からの上げ幅は約八円となった。
消費税など増税分の価格転嫁に加え、ウクライナ情勢不安などで原油価格の上昇傾向が続いてきたことが響いた。今後も店頭価格の上昇が見込まれ、夏休みの行楽シーズンの家計を直撃しそうだ。
都道府県別では三十九都道府県で上昇した。上げ幅は滋賀(二・七円)が最も大きく、神奈川(一・七円)、山形(一・五円)が続いた。
ガソリン価格は消費税増税が実施された四月一日の調査で、前週に比べ一気に一リットル当たり約五円上昇した。その後も国際情勢不安を受けた原油価格の高騰の影響を受け、上昇傾向が継続。最近では産油国イラクで、武装集団の攻撃で製油所を含む複合石油施設が閉鎖されるなど治安が急速に悪化している。
価格調査を担当する石油情報センターは、「国際情勢に新たな不安要素が加わり、ガソリンの店頭価格は当面、高止まりする」と予測。夏休みの帰省や行楽に車を使う人には、痛い負担増が続きそうだ。
◆事業急ブレーキ 邦人社員出国相次ぐ
イラク情勢の急速な悪化で、日本企業の現地のビジネス展開に急ブレーキがかかっている。北部モスルを過激派が制圧する事態に、各社は十日以降相次ぎ日本人社員を出国させている。治安の厳しさが浮き彫りになり、各社は戦略の見直しを迫られそうだ。
イラクは世界五位の原油埋蔵量を誇る。二〇〇三年に始まったイラク戦争の混乱が徐々に沈静化する中、日本の政府や企業は「豊富な石油マネーを背景にインフラ需要の拡大が見込める」との思惑から、同国への展開を拡大してきた。一九七〇~八〇年代に日本の商社やゼネコンが現地で実績を積んだことも受注獲得を後押しした。
石油資源開発は〇九年に南部ガラフ油田の権益を獲得。医療コンサルティングのアイテック(東京)は一〇年に首都バグダッドに事務所を設置し、病院設計に取り組んできた。プラント建設の千代田化工建設、東洋エンジニアリングも石油関連事業に乗り出していた。
しかし今回の情勢悪化に伴う日本人社員の出国により各社のプロジェクトで、監督業務や現地スタッフとの打ち合わせなどに支障が生じる可能性がある。混乱が長引けば、豊田通商が進める変電所新設や三菱商事が参加する南部バスラでの天然ガス事業にも影響が出かねない。
経済産業省幹部は「過激派の勢力拡大は予想外。これまでのように企業参入を進めるのは難しい」と悔しそうに話す。バグダッドでは十月、各国企業が参加して「バグダッド国際見本市」が開かれる。日本企業も合同展示場を設ける方針だが、予定通り進むか、にわかに不透明になってきた。