転載記事
 
 浅草 寿2丁目東陽寺遺跡を保存する会が6月5日、台東区教育委員会樋口清秀 委員長に、「浅草・寿2丁目東陽寺跡の遺跡の全体調査と保存を求める要望書」を提出し、遺跡の全体調査と保存及び地震と地盤に関する科学的・学際的調査等要望しました。
東陽寺を開いた僧侶の寛永年間の墓石(頭が丸い:中央、子どもを供養した地蔵:右側)
台東区教育委員会に届けず遺跡調査もさせず、破壊・投棄した疑いのある大量の墓石等
右側の写真:2013年12月11日の現場/5月1日の工事現場の写真:左上
 
 三井不動産レジデンシャル株式会社が台東区寿2丁目に計画し強行している本件高層マンション建設計画は、そもそも三井不動産が(株)グローブマネージメントをダミーとして住民説明会を開かせ、昨年9月12日の第1回住民説明会で、住民が「事業主であるグローブマネージメントと地主との関係が知りたい」という質問に対して、グローブマネージメントの職員は「本計画では弊社にて借地権を購入し、借地権を基にマンションを建設いたします」と嘘をつきました。

 他の住民も「土地の権利関係が知りたい、名義が三井不動産になっているとの情報があるが」と質問すると、グローブマネージメントの職員は、「現地主さまよりグローブマネージメントが借地権を取得しました」、「本計画はグローブマネージメントが建築主です」と重大な虚偽の説明をして住民をだましたのです。

 地盤が大変ゆるく、不安が強い住民の要望を一切聞き入れず、計画を変更しないため、住民が強く説明会の継続を求めました。しかし、3回住民説明会を開催したとして、台東区役所都市づくり部の伊東住宅課長もそれを了承したため、グローブマネージメントは11月初めに工事の確認申請を民間に提出してしまいました。2週間ほどでその許可が下りたことをテコにして、住民説明会開催の住民要求には背を向けつづけ、昨年12月4日に工事を強行着工し、約1週間でかなりの遺跡を破壊していたのです。

 12月9日に共産党のあきま洋区議会議員が、土地の登記簿を調べて住民に情報を提供してくれたため、議長や議員にも知れ渡り、三井が住民をだましていたことがばれて工事はいったん止まりました。
 しかし、住宅課は、グローブマネージメントの建築主としての辞退届の提出を求めず、三井には建築主変更届で済ませ、住民騙しを容認しました。

 三井は、さらに住民無視を繰り返し工事を強行し、甚大な遺跡破壊を凶行しました。
 現時点でも、誰一人本件マンション建設の工事協定書を三井と結んでいません。



  浅草・寿2丁目東陽寺跡の遺跡の全体調査と保存を求める要望書
台東区教育委員会 
樋口清秀 委員長

                                 
  2014年6月5日
                                   浅草 寿2丁目東陽寺遺跡を保存する会



 
台東区寿2丁目3番の東陽寺跡約1ヘクタールの土地に昨年来、三井不動産レジデンシャル株式会社が高層マンション建設計画を進めています。

 ダミー会社を使って住民に虚偽の説明を行って工事の確認申請を提出し、許可が下りたことをテコにして住民説明会開催の住民要求にも背を向け、2013年12月4日から建設工事を強行し、遺跡も破壊していたことが明らかになりました。

 4月28日にも寛永年間の墓石が出土していたにもかかわらず、教育委員会に通報しないまま山留工事を強行し、遺跡を破壊しました
 5月7日に住民らが文化庁と台東区教育委員会に通報し、区の職員が現地調査した結果、ようやく三井不動産レジデンシャル(株)は遺跡の発見届を区に提出し、試掘調査が実現したものの、住民が試掘調査について住民説明会を求めても開かず、全体調査を行うことについて結果が出ていないにもかかわらず6月4日工事を再強行しています。

 三井不動産レジデンシャル株式会社は、浅草地域の本件建築計画で、文化財保護法に基づいた埋蔵文化財に関する照会すら行っていなかったことが私たちの調査で分かりました。その上、埋蔵文化財を発見しても通報もせず貴重な遺跡を破壊したのです。

 62年間の定期借地権契約で三井不動産レジデンシャルに土地を貸したこの土地の地主の東陽寺は、勅特賜大峯仏雄禅師南翁玄舜和尚(寛永元年1624年寂)が開山し、慶長16年(1611年)八丁堀に創建、寛永12年(1635年)浅草八軒寺町へ移転したそうです。関東大震災(大正12年)で被災し、昭和3年に足立区に移転したとのことです。

 今回の開発に伴う遺跡の破壊行為と報告をしていなかった事実は、明らかに文化財保護法違反であると考えます。

 当会は、社会権規約第第15条と国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)憲章とに基づいて、別紙6項目を要望します。


   要望事項

1、直ちに三井不動産レジデンシャル株式会社が住民に説明せず強行している遺跡を破壊する工事を中止するよう命じ、文化財保護法違反に係る法的措置をとってください。

2、三井不動産レジデンシャル株式会社による寿2丁目高層マンション計画・建設予定地は全面東陽寺の跡であり、沼を埋め立て居住が可能になった土地です。江戸時代初期から明治大正時代の文化財の包蔵地です。貴重な江戸の文化が眠っています。本件開発に係る土地全体の遺跡調査をしてください。

3、昨年12月以来出土している古いものは、埋め立てて間もない江戸時代初期:寛永年間(1624年―1645年)に浅草寿町に東陽寺を移築した遺跡とのことです。これは地主や開発業者にとって周知の事実だったのではないでしょうか?出土した遺跡は東陽寺を開いた僧侶の墓石やこどもを祭った地蔵とのことです。これらは重要文化財に値するのではないでしょうか?
重要文化財として指定し保存するよう要望します。

4、この地域に隣接している浅草菊谷橋遺跡は埋め戻されてしまっているため、住民や多くの人々の目に触れることはありません。国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)憲章に基づいて、本件東陽寺の江戸時代から大正・昭和時代までの遺跡を保存し、人々の文化・歴史及び科学の知見を深めるために保存し、地元住民とともに国内および国際的にも子どもたちの意見を十分に反映させて普及してください。

5、旧東陽寺は、関東大震災で壊滅的な被害を受ける以前、1703年元禄地震(M7.9~8・2)とその4年後、1707年宝永地震(M8・4~8・74)でも被災しています。異なる時代の度重なる大震災による被災に関する科学的な調査は、台東区のみならず首都東京都地震国日本国における震災対策にとって不可欠だと考えます。

台東区と首都東京の安全なまちづくりに資するために、土地所有者らの協力を求め、住宅密集地でありながら、1ヘクタールもの土地が更地となっている現状を活用し、本件土地において、地震に関する学際的な調査を行うよう要望します。

6、地震国日本における首都直下型地震に備えるべく、過去の地震と地盤に関する科学的調査を実施し、それらの結果を秘匿することなく、全て住民に開示・提供し、良好なまちづくりに資するよう要望します。
以上


資料;国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)憲章

 この憲章の当事国政府は、その国民に代って次のとおり宣言する。
 戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない。
 相互の風習と生活を知らないことは、人類の歴史を通じて世界の諸人民の間に疑惑と不信をおこした共通の原因であり、この疑惑と不信のために、諸人民の不一致があまりにもしばしば戦争となった。

 ここに終りを告げた恐るべき大戦争は、人間の尊厳・平等・相互の尊重という民主主義の原理を否認し、これらの原理の代わりに、無知と偏見を通じて人間と人種の不平等という教義をひろめることによって可能にされた戦争であった。

文化の広い普及と正義・自由・平和のための人類の教育とは、人間の尊厳に欠くことのできないものであり、且つすべての国民が相互の援助および相互の関心の精神をもって果さなければならない神聖な義務である。

 政府の政治的および経済的取り決めのみに基く平和は、世界の諸人民の、一致した、しかも永続する誠実な支持を確保できる平和ではない。よって平和は、失われないためには、人類の知的および精神的連帯の上に築かなければならない。

 これらの理由によって、この憲章の当事国は、すべての人に教育の充分で平等な機会が与えられ、客観的真理が拘束を受けずに探究され、且つ、思想と知識が自由に交換されるべきことを信じて、その国民の間における伝達の方法を発展させおよび増加させること並びに相互に理解しおよび相互の生活を一層真実に一層完全に知るためにこの伝達の方法を用いることに一致しおよび決意している。

 その結果、当事国は、世界の諸人民の教育、科学および文化上の関係を通じて、国際連合の設立の目的であり、且つその憲章が宣言している国際平和と人類の共通の福祉という目的を促進するために、ここに国際連合教育科学文化機関を創設する。”