毎日新聞 2014年01月16日 07時00分 

海自艦:左舷に死角か 釣り船との衝突場所 

http://img.mainichi.jp/mainichi.jp/select/images/20140116k0000m040132000p_size5.jpg
釣り船と衝突し、停泊する海上自衛隊輸送艦「おおすみ」=広島県大竹市の阿多田島沖で2014年1月15日午後3時12分、本社ヘリから金澤稔撮影
 広島県沖の瀬戸内海で起きた海上自衛隊の輸送艦「おおすみ」(全長178メートル)と釣り船「とびうお」(全長7.6メートル)の衝突事故で、衝突した場所が、おおすみ側から死角になっていた疑いがあることが広島海上保安部などへの取材で分かった。また、とびうおに乗っていて救助された男性が15日夜、毎日新聞などの取材に「おおすみがとびうおを追い越した際、とびうおの進路を横切る形で衝突したと証言した。重体だった船長の高森昶(きよし)さん(67)は同日夜に死亡した。広島海保は業務上過失往来危険の疑いで両船の乗組員から事情を聴いている。
 
 広島海保などによると、おおすみは15日午前6時半ごろ、海上自衛隊呉基地(広島県呉市)を出港。とびうおは午前7時10分ごろ、広島市を出港し、事故が起きた午前8時ごろに両船はほぼ同じルートを南下していた。おおすみの左舷中央後部には衝突した跡があり、とびうおの右舷側にも同様の痕跡が見つかった。
 
 呉基地によると、現場は島と島に挟まれた狭い航路が続く海域。通常、甲板の艦橋で左右1人ずつ、後部に1人の見張りを置くほか、艦内でも複数の乗員がレーダーを見張っている。しかし、おおすみは艦橋が右舷寄りにあるため、釣り船が左側に近づき過ぎた場合、見張りの乗組員から死角になっていた可能性があるという。おおすみは事故後に第6管区海上保安本部(広島市)に連絡した際、「釣り船を避けようとしたところ、釣り船が転覆した」と説明し、衝突を明確に認識していなかったとみられる。
 
 一方、とびうおに乗っていた寺岡章二さん(67)は「とびうおがいったんおおすみを追い越した後、おおすみが再びとびうおを追い越した際、右側から横切る形で衝突した」と証言。衝突直前、「おおすみの汽笛が4、5回鳴るのを聞き、直後に『ドドドーン』と衝撃が走った」と話した。海上衝突予防法によると、5回の汽笛は互いの船が接近し、相手の意図が分からない場合、衝突を避けるための警告。衝突から4、5秒すると、船の右側がせり上がり、水が入ってきたため、「転覆すると思い、海に飛び込んだ」という。とびうおに乗っていた4人は救命胴衣を着けていなかった。
 運輸安全委員会は調査官4人を広島市に派遣し、調査を始めた。
 
 
【吉村周平、黄在龍、高橋咲子、寺岡俊】