毎日新聞 2013年12月03日 11時34分(最終更新 12月03日 13時14分)
徳洲会:元事務総長を逮捕 関連会社から横領容疑 警視庁
医療法人「徳洲会」グループの関連会社から現金を着服したとして、警視庁捜査2課は3日、グループの元事務総長、能宗(のうそう)克行容疑者(57)=東京都世田谷区用賀2=を業務上横領容疑で逮捕し、自宅などを家宅捜索した。能宗容疑者はグループ創設者で元衆院議員の徳田虎雄前理事長(75)の側近だったが、グループ運営を巡って徳田家と対立し、今年2月に解雇されていた。
逮捕容疑は2007年9月〜08年1月、社長を務めていた医療機器販売会社「インターナショナル・ホスピタル・サービス」(IHS、大阪市)の預金口座から計3000万円を2回に分けて引き出し、自身の証券口座に入金し横領したとしている。同課は「捜査に支障がある」として認否を明らかにしていない。
能宗容疑者は33年間徳洲会に勤務し、グループの資金管理を取り仕切ってきた。前理事長が05年に難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)で政界を引退してからは、前理事長の指示を実行に移す役割を担ってきたとされる。IHSの社長は11年2月まで約14年間務めていた。
グループを解雇された後は、解雇無効を求めて東京地裁に民事訴訟を起こす一方、徳洲会グループの公職選挙法違反事件で東京地検特捜部の任意の事情聴取に応じるなど捜査に協力していたとされる。これに対し徳洲会側は、グループ企業から3億円近くを着服したとして能宗容疑者を警視庁に告訴。10月には捜査2課が業務上横領容疑で能宗容疑者の自宅などを家宅捜索していた。【浅野翔太郎、福島祥】
毎日新聞 2013年12月03日 13時12分(最終更新 12月03日 14時44分)
徳洲会:逮捕の金庫番 確執で解雇、地検に情報提供
医療法人「徳洲会」グループの関連会社から現金を着服したとして、警視庁捜査2課は3日、グループの元事務総長、能宗(のうそう)克行容疑者(57)=東京都世田谷区用賀2=を業務上横領容疑で逮捕し、自宅などを家宅捜索した。
能宗克行容疑者は徳洲会グループの「金庫番」とされ、病院経営だけでなく、徳田虎雄前理事長や後継の徳田毅(たけし)衆院議員(42)の選挙運動も取り仕切っていた。逮捕前の毎日新聞の取材に「口座を調べてもらえれば、すぐに分かるはず。何のいわれもない」と容疑を否定し、「表に出せない金はグループのために使っていた」と主張していた。
能宗容疑者は前理事長が率いた政党・自由連合時代から資金管理も担い、グループ職員を動員する選挙運動の中心人物だった。しかし近年は徳田家との確執を深め、今年2月に解雇されると、選挙違反の実態を東京地検特捜部に詳述し、親族逮捕のきっかけを作ったとされる。
横領の舞台となったグループ会社の医療機器販売会社「インターナショナル・ホスピタル・サービス」の社長には1997年に就任。2009年の衆院選では同社から多額の裏金が捻出されて徳田議員陣営に提供されたことが判明している。11年に前理事長の次女スターン美千代容疑者(46)=公選法違反容疑で逮捕=が社長に就任し、昨年12月の衆院選でも同社から裏金が引き出されていた。
特捜部に情報提供したことについて能宗容疑者は「前理事長は病気になって別人になってしまい、ファミリーを守ろうとしている。元気な頃の前理事長の姿が鮮明に残る。原点に返りましょうという思いだった」と振り返った。
一族の支配:徳洲会事件/下 崩壊招いた私物化 高級マンション転売差額、次女に「寄付」
毎日新聞 2013年11月15日 東京朝刊
「ご迷惑をかけている責任を取り、一日も早い徳洲会グループの信頼回復を願って、理事長職を退任する」
10月7日夕、神奈川県鎌倉市の湘南鎌倉総合病院15階の徳田虎雄前理事長(75)専用室。集まった理事ら10人の前で、秘書が退任表明の文書を読み上げた。筋萎縮性側索硬化症(ALS)で全身の筋肉が衰弱し、車椅子に座る前理事長の表情は変わらない。「結論を出したら振り返らない人」。理事の一人は、慰留は無意味だと察した。
9月に公職選挙法違反容疑で東京地検特捜部の捜索を受けても、執行部は事件への説明を避けた。だが、選挙のたびに動員させられる病院職員らの不満を抑え続けることはできず系列病院長らが理事長退陣を迫っていた。
翌8日、徳洲会は記者会見を開き、退任を発表した。
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「子孫に美田を残さない」と公言していた前理事長。だが病状悪化に乗じて、親族によるグループ私物化が目立ち出した。
長女の越沢徳美(なるみ)容疑者(50)=公選法違反容疑で逮捕=が社長を務める株式会社「徳洲会」が2010年4月、東京・元麻布のマンション1室を2億円で購入した。翌5月、次女のスターン美千代容疑者(46)=同=が代表の経営コンサルタント会社は本社をこの部屋に移し、8月に1億4000万円で取得した。
監査法人は「実質的には購入間もなく低額で売却されたとみなされ、差額の6000万円は寄付とみなされるリスクがある」と税務上の問題を警告した。
美千代容疑者は11年2月、元徳洲会事務総長(57)を降ろしグループの医療機器リース会社社長に就任。元事務総長は前理事長時代から選挙を取り仕切った側近中の側近だが、この頃から親族と対立を深めた。今年2月に解雇され特捜部に組織ぐるみ選挙の実態を詳細に供述したとされる。
「徳田虎雄」という強烈なリーダーシップの下で一枚岩だった組織はほころび、中枢部に捜査のメスが入った。前理事長に近い関係者は「グループを家族で固めようとした結果、徳洲会は崩壊に向かって走り出した」と嘆いた。
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山田奈緒、島田信幸、山下俊輔、吉住遊、近松仁太郎、石川淳一が担当しました。
毎日新聞 2013年11月13日
医療法人「徳洲会」グループを創設した徳田虎雄前理事長(75)の長女、越沢徳美(なるみ)容疑者(50)=公職選挙法違反容疑で逮捕=が社長を務めていたグループ企業が、他の親族に不透明な報酬を支払っていたとして監査法人から改善を求められていたことが分かった。高い公益性が求められる医療グループ内で、徳田ファミリーに不自然な利益移転が行われていた疑惑が浮上した。
問題となったのは、全国の系列病院に医薬品や医療機器を納入している株式会社「徳洲会」(通称カブトク、東京都千代田区)。毎日新聞が入手した2011年7月12日付の監査報告書によると、カブトクは情報収集やアドバイスなどの業務を委託したとして、虎雄前理事長の親族と顧問契約を締結。毎月の報酬として、徳洲会副理事長の妻(75)に400万円▽カブトク取締役の三女(44)に50万円▽同取締役の五女(41)に150万円▽次男毅(たけし)衆院議員(42)の妻(38)に50万円−−を支払っていた(肩書はいずれも当時)。
また、次女のスターン美千代容疑者(46)=公選法違反容疑で逮捕=が代表を務める経営コンサルタント会社とも同様の契約を結び、会社に200万円を支払っていた。
ところが、委託された業務に関する報告書などを親族側が提出した形跡がなかったことから、監査法人はカブトクに対し、「内部統制上の問題点」として「契約内容を裏付ける報告書等の入手が必要」と指摘。関係者によると、指摘を受けてカブトクは顧問契約を解除した。
信用調査会社などによると、13年3月期のカブトクの売上高は約859億円。資本金は1億円で虎雄前理事長が全額を出資している。1999年12月の設立当初から徳美容疑者が社長を務めていたが、グループが東京地検特捜部の強制捜査を受けたことに伴い、虎雄前理事長がグループ企業の役員から親族を退任させる考えを示し、長女は10月末でカブトク社長を退いた。【近松仁太郎】
徳洲会事件:医療相談所が活動拠点 「裏」選挙事務所か
毎日新聞 2013年11月14日 15時00分
http://img.mainichi.jp/mainichi.jp/select/images/20131114k0000e040220000p_size5.jpg
「谷山校区サテライト一覧」と題された徳洲会グループの内部文書。所在地、責任者の名前や連絡先などが記されている(一部画像処理しています)
医療法人「徳洲会」グループの公職選挙法違反事件で、徳田毅(たけし)衆院議員(42)=鹿児島2区=の陣営が昨年12月の衆院選期間中、選挙区内に複数の「医療相談所」を開設し、選挙活動の拠点にしていた疑いがあることが分かった。東京地検特捜部は、全国から動員された病院職員が集まる「裏」の選挙事務所だった可能性があるとみて活動実態の解明を進めるとみられる。【山田奈緒、吉住遊】
医療相談所は陣営内で「サテライト」(衛星)と呼ばれていた。毎日新聞が入手したグループの内部文書などによると、鹿児島市南部の谷山地区では、小学校区を基に11のサテライトが設けられ、ベテランのグループ職員らが責任者として配置された。中には徳田議員の「秘書」の名刺を持つ人もいた。
サテライトには「医療相談所」と書かれた看板が掲げられ、看護師や栄養士らが地域住民の健康相談に乗るとともに、徳田議員への支持を呼び掛けたという。一方、事務系の職員はサテライトを活動拠点にレンタカーなどで地域を回り、投票を依頼したとされる。
谷山地区は東京西徳洲会病院事務局長の石川一郎容疑者(58)=公選法違反容疑で逮捕=が仕切り役で、各サテライトの責任者を取りまとめていたという。選挙期間中、朝晩開かれた選挙対策会議にはサテライトの責任者も出席し、徳田議員の長姉の越沢徳美(なるみ)(50)、次姉のスターン美千代(46)両容疑者=同=らに活動結果を報告していたとされる。
◇投票翌日に撤収
昨年11月下旬から約3週間、10万円で事務所を貸した男性は「壁に住宅地図が張り出され、選挙運動に使われていると思った。多い時は20人くらい病院職員がいて徳田議員も何回か来た。投票の翌日には撤収していた」と証言。別の事務所を貸した男性は「マイクロバスで地域の高齢者を連れてくる時もあった」と話した。