信濃毎日新聞11月26日(火)
猪瀬氏の説明 これでは疑念が拭えない
融資が必要になったら金融機関で審査を受けて借り、口座に振り込んでもらう。それが普通だ。初対面の人から5千万円が提供された。無利子、無担保、現金手渡しで。普通じゃない。
東京都の猪瀬直樹知事が1年前の知事選前に、医療法人の徳洲会グループから資金提供を受けていた。猪瀬氏の説明は不自然さに満ちている。
その第一は内容がくるくる変わることだ。
最初の報道機関の取材に「私は全く関知しない」。翌日になると報道陣に「個人として借用をお願いし、資金提供という形で応援してもらうことになった」と選挙費用に使う予定も認めた。その後の記者会見では「選挙に使うつもりは全くなかった」。
公選法は選挙運動に関する全ての寄付や収入、支出を出納責任者が収支報告書に記載するよう義務付けている。違反は3年以下の禁錮または50万円以下の罰金。猪瀬氏が都選管に提出した報告書には5千万円の記載がなかった。
説明の変遷は、資金提供を受けたことは否定できなくなり、違法にはならないよう“調整”を重ねた結果ではないのか。
不自然さの第二は徳洲会側の記録や関係者証言との食い違いだ。
現金を渡した徳田毅衆院議員が「選挙応援で猪瀬氏が1億円要求している」と話したとする文書記録がグループ内に残っていた。猪瀬氏は「金額を挙げたことはない」と否定。経緯について「(徳洲会側から)持ちかけてきたということでもなくて、こちらからお願いしたということでもない」と意味不明な答えをしている。
5千万円を受け取った際に書いたという「借用書」も、現金を返された徳田議員の母親は「知らない」と話しているという。
このほかにも、選挙に使うつもりがないのになぜ、選挙前に多額の「借金」をしたのか、返済がなぜ、徳洲会への強制捜査後になったのかなど不自然な点は多い。猪瀬氏は合理的な説明ができていない。少なくとも「借用書」の公開は必要だ。
知事には病院の開設や増床などの許可権限がある。仮に猪瀬氏の説明が全て正しいとしても、利害関係団体から多額の資金提供を受けたこと自体に問題がある。
猪瀬氏は長野市出身。長野高、信州大と進み、県内にも支援者がいる。道路公団民営化などで発揮した手腕を知事としても振るってほしいという期待も大きい。この説明のままでは失望に変わる。
東京都の猪瀬直樹知事が1年前の知事選前に、医療法人の徳洲会グループから資金提供を受けていた。猪瀬氏の説明は不自然さに満ちている。
その第一は内容がくるくる変わることだ。
最初の報道機関の取材に「私は全く関知しない」。翌日になると報道陣に「個人として借用をお願いし、資金提供という形で応援してもらうことになった」と選挙費用に使う予定も認めた。その後の記者会見では「選挙に使うつもりは全くなかった」。
公選法は選挙運動に関する全ての寄付や収入、支出を出納責任者が収支報告書に記載するよう義務付けている。違反は3年以下の禁錮または50万円以下の罰金。猪瀬氏が都選管に提出した報告書には5千万円の記載がなかった。
説明の変遷は、資金提供を受けたことは否定できなくなり、違法にはならないよう“調整”を重ねた結果ではないのか。
不自然さの第二は徳洲会側の記録や関係者証言との食い違いだ。
現金を渡した徳田毅衆院議員が「選挙応援で猪瀬氏が1億円要求している」と話したとする文書記録がグループ内に残っていた。猪瀬氏は「金額を挙げたことはない」と否定。経緯について「(徳洲会側から)持ちかけてきたということでもなくて、こちらからお願いしたということでもない」と意味不明な答えをしている。
5千万円を受け取った際に書いたという「借用書」も、現金を返された徳田議員の母親は「知らない」と話しているという。
このほかにも、選挙に使うつもりがないのになぜ、選挙前に多額の「借金」をしたのか、返済がなぜ、徳洲会への強制捜査後になったのかなど不自然な点は多い。猪瀬氏は合理的な説明ができていない。少なくとも「借用書」の公開は必要だ。
知事には病院の開設や増床などの許可権限がある。仮に猪瀬氏の説明が全て正しいとしても、利害関係団体から多額の資金提供を受けたこと自体に問題がある。
猪瀬氏は長野市出身。長野高、信州大と進み、県内にも支援者がいる。道路公団民営化などで発揮した手腕を知事としても振るってほしいという期待も大きい。この説明のままでは失望に変わる。