実感としてわかる秘密保護法案の怖さ (丹羽宇一郎氏の経営者ブログ)
日本経済新聞 2013/11/13
国の安全保障情報を漏らした公務員への罰則を強化する「特定秘密保護法案」が衆院本会議で審議入りしました。国の存亡にかかわる安保上の機密を守るという目的というが、民主主義に逆行する恐れのある、問題の多い法案と言わざるを得ない。
法案は防衛、外交、安全脅威活動、テロの4分野のうち、特に秘匿すべき情報を各省の大臣が「特定秘密」に指定するというもの。公務員が外部に漏らした場合、最高で懲役10年の刑罰が科されるという。民主主義国家では憲法によって国家権力を制限し、国民主権を守ろうとしている。しかし、秘密保護法案は国家が秘密を認定し、国民をそこに近づけないというもので、国民の権利の制限につながり、この点が民主主義に逆行しています。
何が秘密となるのか、規定もあいまい。恣意的に秘密の範囲が広げられるのではないかという懸念があります。もっというと、本来は秘密ではないようなことが秘密とされ、それを漏らした罪で捕まるということもありうる。冤罪の温床になりかねない。
何が秘密となるのか、規定もあいまい。恣意的に秘密の範囲が広げられるのではないかという懸念があります。もっというと、本来は秘密ではないようなことが秘密とされ、それを漏らした罪で捕まるということもありうる。冤罪の温床になりかねない。
中国大使をやっていた経験から、実感としてこの法案の怖さがわかる。様々な情報が入ってくるが、機密度はどの程度なのか、すべて正確に判断できるわけではない。担当者が「秘密」の判を押したものが機密扱いとなる。これと同じように、どんな情報が秘密なのか各省の大臣が正確に判断できるとは到底思えない。若い担当者と事務方トップが「これは秘密」と決めて、大臣が機械的に認定するということになりかねない。何が秘密かは、実質的に官僚の裁量にゆだねられることになる。しかも、政府がどんな情報を秘密にしているのか、国民は知らされない。……