河北新聞 2013年11月16日土曜日

福島第1原発1号機 燃料震災前破損70体 全体の4分の1

 福島第1原発1号機の使用済み燃料プール内にある燃料棒70体が東日本大震災前から損傷していたことが15日、分かった。プール内に保管されている使用済み燃料292体の4分の1に相当する。損傷した燃料棒を取り出す技術は確立しておらず、2017年にも始まる1号機の燃料取り出し計画や廃炉作業への影響が懸念される。

 東京電力は、15日まで事実関係を公表してこなかった同社は「国への報告は随時してきた」と説明している。

 東電によると70体の燃料棒は、小さな穴が空いて放射性物質が漏れ出すなどトラブルが相次いだため、原子炉から取り出してプール内に別に保管していたという。
 18日に燃料取り出しが始まる4号機プール内にも損傷した燃料棒が3体あり、東電は通常の取り出しが困難なため、対応を後回しにしている
 損傷した燃料棒は1、4号機プールのほかにも2号機プールに3体3号機プールに4体の計80体ある。東電は専用の輸送容器を新たに製造するなど対応策を検討する。
 
 損傷燃料が1号機に集中している理由について、東電は「1号機は当社で最も古い原発で、燃料棒の製造時、品質管理に問題があり粗悪品が多かったと聞いている。2号機以降は燃料棒の改良が進み、品質は改善した」と説明した。
 1号機は東電初の原発で、1971年3月に商業運転を開始した。

 
 
【福島第1原発】4号機 燃料取り出し開始 廃炉「第2期」に
 
 東京電力は11月18日、福島第1原発4号機の燃料貯蔵プールに保管されている燃料の取り出しを始めた。廃炉が決まった1~4号機のプールからの本格的な取り出しは2011年3月の事故後初めて。政府と東電の廃炉工程では冷却維持と燃料取り出し準備を「第1期」としており、これで廃炉工程は「第2期」に移行。30~40年かかるとされる廃炉作業は最初の節目を迎えた。
 18日は、午前に「キャスク」と呼ばれる燃料輸送容器(長さ約5.6メートル、直径約2.1メートル、重さ約91トン)をプール内に搬入。午後3時18分に燃料を引き上げる装置が稼働し、3時25分には1体目の燃料の引き上げが始まった。燃料の長さは約4.5メートル。燃料を破損させないよう、1秒間に1センチ程度の速度で引き抜き、キャスクに収容した。
 1つのキャスクには22体の燃料が収容可能で、18日は4体を装填(そうてん)、19日に残る18体を収容する。その後、キャスクを4号機から約100メートル離れた共用プールにトレーラーで移送する。
 燃料貯蔵プールには、未使用燃料202体、使用済み燃料1331体が保管されており、今回は比較的扱いやすい未使用燃料を取り出す。次回以降は使用済み燃料の取り出しにも着手する。プールには破損して取り出しが困難な燃料が3体あり、東電は専用キャスクの製造を検討している。
 
 4号機の燃料1533体の取り出しは来年末に完了予定。4号機は事故時は定期検査中で、原子炉の燃料はプールに移されていた。
 ≪困難な作業 事故に備え多重防護≫
 11月18日から始まった燃料貯蔵プールからの燃料取り出しは、1年かかる移送で、燃料損傷により取り出せなかったり、運搬中に落下する懸念が残る。大破した建屋での作業は世界的にも前例がなく、東電は事故防護策を何重にも施し作業に当たる。
 「(燃料を)押しても、引いても出てこないという状態が一番懸念される」。原子力規制委員会の更田(ふけた)豊志委員は、取り出し作業に立ちはだかる最大の障害として、プール内の燃料貯蔵ラックが傷ついて湾曲し、燃料が引っかかって取り出せない「かじり」と呼ばれる現象を挙げた。
 通常の取り出し作業では、燃料をクレーンで350キロほどの荷重で引っ張るところを、今回はかじり対策として約3倍の1トンの力を加え引き抜く。燃料は1トンの荷重をかけても破損しないことが事前に確認されている。
 
 東電は、燃料を高さ最大17メートルから落下した場合の分析を行い、燃料がクレーンから落ちて燃料を覆う「被覆(ひふく)管」が損傷しても、外部へ出る放射線の影響は約0.78マイクロシーベルトで微量だとする検証結果を報告。更田委員も「被覆管に軽微な損傷を生じた程度では、周辺に与える影響はそれほど大きくない」との見解を示した。
 一方、水素爆発で損傷した4号機原子炉建屋は、東京タワーに使用されている鋼材と同じ約4200トンの鉄骨で増強された。東電は「東日本大震災と同規模の揺れに耐えられる」と説明、取り出し作業中に大地震が発生しても安全性は担保されるとしている。耐震設計が施されたクレーンのワイヤは二重化、一本が切れても燃料を取り落とさない仕組みになっている。
 トラブルに備えた防災対策も準備された。福島第1原発の周辺は帰還困難区域に指定されており、来年末まで続く取り出し作業中にも一時立ち入りしている住民らがいる。作業期間中は、立ち入る住民らにトランシーバーを貸し出し、トラブル発生時に、現場から福島市にある緊急事態応急対策拠点施設(オフサイトセンター)を通じ、住民らへ避難を指示できるようにしている。
 規制委は使用前検査などで安全性を確認してきたが、作業開始に伴い現場に駐在する保安検査官を増員。当面はテレビ会議を開くなどして、東電側と議論しながら監視を強化する。
 
 
 
 
毎日新聞 2013年11月07日 東京朝刊

青森・六ケ所村の核燃再処理工場:燃料貯蔵プールの適用を5年間猶予

 原子力規制委員会は6日、日本原燃の使用済み核燃料再処理工場(青森県六ケ所村)のうち、燃料貯蔵プール(容量3000トン)については、新しい規制基準(12月18日までに施行)の適用を今後5年間猶予することを決めた。規制基準は、核燃料サイクル施設に初めて過酷事故対策などを法的に義務付けている。規制委は、再処理工場貯蔵プールや、ウラン燃料加工施設の一部作業については「5年猶予しても安全上問題ない」と判断。核燃料のせん断・溶解作業などリスクを伴う工程については基準を即適用する。新基準の適用が猶予されたことで、今年度中に四国電力伊方原発(愛媛県)の使用済み核燃料を14体(重量6トン)受け入れる計画は施行後も予定通り実施される見通し。