<ウォッチ>国会チェックできず 日本版NSCに懸念

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 衆院国家安全保障特別委員会が三十一日行った参考人質疑では、政府が外交・安全保障の司令塔と位置づける日本版「国家安全保障会議(NSC)」創設関連法案の危うさが深まった。有識者からは、NSC法案と特定秘密保護法案がいずれも成立、NSCの閣僚会合の情報が秘密指定されれば、政府の安全保障に関する決定過程が公開されず、国会もチェックできないという指摘が出された。(金杉貴雄)
 
 この問題を取り上げたのは、柳沢協二元内閣官房副長官補。首相官邸で安全保障担当の副長官補として、第一次安倍政権では成立しなかったNSC法案を担当した。
 
 NSCでは首相、官房長官、外相、防衛相の四大臣会合が、安全保障政策の基本的な方向性を定める。柳沢氏はNSC法案と秘密保護法案が成立した場合について「閣僚会合には安全保障上秘匿(ひとく)すべき情報が含まれるとの理由で、重要な政策決定過程が国民に公表されなくなる恐れがある」と問題視した。
 
 NSCは政策に沿った情報提供を各省庁に求める点についても、「時の政権の意に反する情報は上げなくなる」と指摘。失敗例として、米国がイラクに大量破壊兵器があることを確認できなかったにもかかわらず、「存在する」との情報に引っ張られて開戦に踏み切り、小泉政権も支持したことを挙げた。
 柳沢氏は「権力の暴走を防ぐには国会のチェックが必要。定期的に情報が出る保証が必要だ」と、法案では国会が政府の歯止め役を果たせないとの見方を示した。
 
 この日の質疑では、外務省出身の宮家邦彦立命館大客員教授らが、各省からばらばらに報告が上がっていた情報が統合・集約されて首相に届けられるなどNSCのメリットを強調。「東アジア情勢などを考えれば絶対に必要だ」と主張した。