「日本の外交力」 ――普天間、尖閣と抑止力
著者:岸本正人
定価:本体2000円
発行:2013年2月25日
発行所:毎日新聞社
岸本正人(きしもと・まさと)
毎日新聞社外交・安全保障担当論説委員でした。
しかし、先月(2013年)9月10日心室細動のためお亡くなりになってしまいました。
1953年岡山県生まれ。
東京大学経済学部卒業後、毎日新聞社入社。
政治部、外信部、ワシントン支局、千葉支局長、政治部編集委員、世論調査室長などを経て、
2008年から2013年9月まで毎日新聞論説委員。
2006、07両年度に埼玉大学、2011年度から城西大学大学院で非常勤講師。
『日本の外交力』最終章の第6章では、「国際貢献と日本外交」と題し、第1節:「人間の安全保障」と国際貢献、第2節:PKOと「人間の安全保障」、第3節、ODAと「人間の安全保障」と題して、すべて「人間の安全保障」について述べています。
(P315)
「人間の安全保障」と国際貢献の項で岸本氏は、「多くの人々にとって安全とは、病気や基金、失業、犯罪、社会の軋轢、政治弾圧、環境災害などの脅威から守られることを意味し、「人間の安全保障とは、「武器の関心を向けることではなく、人間の生活や尊厳にかかわること」であり、その「重要な構成要素」は、「恐怖からの自由と、欠乏からの自由であり、紛争や抑圧がない状態のことを言い、経済社会面の困窮がない状態をさす。
(P316)
一般に安全保障と言えば、伝統的な「国歌の安全保障」を言うことが多く、その基本的な概念は、軍事力によって国家の領土や独立、安全を外部の脅威から守ることである。
これに対し、「人間の安全保障は、国際社会の最小構成単位である人間に注目し、様々な脅威から個人を守ることを目的とした包括的な概念であるとされる。
具体的な脅威として、紛争や暴力、テロなどの国家犯罪、貧困や飢餓、感染症、災害や環境破壊、薬物、人権侵害などが想定されている。
言い換えれば、人間の安全保障の場合、安全保障の対象は、国家や主権ではなく、人間の声明や生活、尊厳であり、それを実現する手段は軍事というより「持続可能な人間開発」のための非軍事を重視している。
「人間の安全保障」の取り組みが転機を迎えたのは2000年9月の国連総会(ミレニアム総会)で、これには日本も深くかかわった。
同総会で、コフィ・アナン(Kof A.Anan)国連事務総長が、「恐怖からの自由、欠乏からの自由(free of fear and want)をキーワードに、人間を襲う地球規模の様々な課題への対処について論じた。